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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


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第273射:魔族とは?

魔族とは?



Side:アキラ・ユウキ



「まさか。魔族ってのは人じゃないよ。本当に化け物なんだ」


ゼランさんのその言葉に俺たちは安堵した。

だって、本当にこれでノールタル姉さんたちみたいな魔族がいたってわけじゃないんだ。

だけど、その事実を聞いて田中さんの顔は全然すぐれなかった。

なんでだろうと思っていると、ゼランさんが魔族の説明を始める。


「まず、人のような腕が5本あって、人のような足が7本ある」

「「「……」」」


その説明に全員が固まる。

何を言ってるんだってレベルだ。


「それで人の顔をした感じではあるんだがどう見ても化け物だ。それが襲い掛かってくる。手数が文字通り違うから兵士たちがあっという間にやられていく」


どこのB級パニックホラーだよ。

俺はそんなことを考えていたが、田中さんは興味があったようで。


「まて、状況はいい。やられたのはわかってるからな。魔族っていうのはそういう人を組み合わせたようなものが一種類か?」

「え? いや、そいつは2体だったかな? ほかには動物が合体したような魔族もいた」

「詳しく説明できるか?」

「そうだな……」


ゼランさんが説明してくれた魔族は、どう見てもほかの動物を掛け合わせたような怪物でどうにも魔族というより、なんか人工的に作り出したって感じがする。

あれだ、キメラっていうんだったかな?


「……なるほどな。結局逃げて回るところを全部つぶされていて、外洋に出たわけだ」

「ああ、幸い。船乗りはそろっていたし、物資もある程度は持っていた。何とか行けると踏んだんだ。ああ、もちろん下船を求める連中もいたから静かなところで下ろしたりもした」

「いけると踏んだ理由はなんだ? 外海で陸地にたどり着けるのはかなり分の悪い賭けだと思うが?」


うん。田中さんの言う通り中世の船の冒険って死と隣り合わせのはずだ。

いつ陸地が見えるかもわかっていない、そんな旅だから物資がいつ尽きるとかそういう心配をしなくちゃいけない。そして今回のような病気も。

船で冒険するってかなりリスクの高いことのはずだ。


「そうでもないんだよ。この大陸のことはもともと私たちの商会が見つけていたんだ。いつ、渡りをつけるかってことで悩んではいたんだけどね」

「ああ、もうこっちの大陸は発見していたのか」

「そうさ。だからこっちにたどり着けるとは踏んでいた。でも、意外と時間がかかったし、初めて訪れる場所をどう選定するかってのも悩んだ。下手な場所に行くと接収されるからね」

「なるほどな」


下地はあったわけだ。

その航路を見つけた人は命がけだったんだろうな。

さらに、交渉を持ち掛ける土地がまともに対応してくれるとも思えない。

ただの交易船ならともかく、避難船だし。

そこはここの領主と町に救われたんだな。

こんな異世界でもちゃんと人を思いやる気持ちはあるんだ。


「幸い。この町の領主様や領民には受け入れてもらえたが、こちらの数も多いし、一応交易品は積んでいたが元々の物資の数も限界があった。まあ、交換レートもちょっとね……」


緊急事態ではあるし、外洋からの交易品の交換レートなんてこのノルマンディーに存在していないので足元を見られたんだろうな。

でも、急なことだったみたいだし、本人たちは最大限の努力はしていたんだというのは俺もわかる。

だって、食料が尽きるってところまで避難民を支援しようとは思わないだろう。

で、それはゼランさんもわかっているようで苦笑いしながら話を続ける。


「ああ、緊急事態だったってのはわかるさ。とはいえ、これから何をするにも元手になるモノは必要さ。帰るにもね」

「え!? 帰るの!?」


その発言に驚いたのは光だ。


「今すぐってわけじゃないさ。でも、故郷がどうなっているか確認したい連中も山ほどいる。わけのわからないうちに故郷を捨てる羽目になったんだからね」


言っていることはわかる。

故郷を簡単に捨てられる人はいない。

どんな戦地でもその土地で生きる人たちはいるのは俺でも知っている。

それにまだ向こうでは戦っている人がいるかもしれない。

話を聞けば急所だけを狙っているような状態だから、軍はどうかわからないが、町まで制圧されているのかというと疑問だ。希望的観測もあるかもしれないけど、そういうわずかな希望にすがりたいよな。

俺たちだって帰る方法を探すためにこうして色々動いているんだし。


「話をちょっと戻して悪いが、その魔族っていうのは海を越えてやってこないって認識でいいのか?」


そんなことを考えていると、田中さんが魔族のことに話をもどす。

確かにちゃんとそこは聞いておかないといけない。

王都じゃなかったとはいえ、にぎわっている港町に兵士がいないなんてことはないだろう。

それがあっという間にやられたんだから、その強さは並じゃない。

その怪物が海を越えてやってくる可能性だってあるんだ。


「……今のところは私たちに追っ手はかかってないね」

「今のところはか」

「私たちを追うことに意味を見出してないって所だね。さっきも言ったように魔族の連中は敵対する兵士たちを優先的に倒しているようだったしね。そうでもないと、私たちは海に出る前に壊滅しているさ。何せ魔族が目の前にいたんだからね」

「どういうことだ?」

「ああ、言ってなかったね。私は魔族ってやつを一目見ようと見物に行った口さ。すぐに兵士たちにやられるってね。一応港町だけど、シュヴィール王国一の港町だからね。守備の兵士だって名が知れている有名な奴もいた。だけど……」

「全滅したっていってたな」

「そうさ。私も、周りの連中もなめていたんだ。自分たちの国の力を過信していた。絶対勝てるって。負けることを一切考えていなかった。ほかの大国が苦戦しているってのにさ。笑い種さ」


自分が住む国を信頼するのはいいことなんだろうけど、こういう時はどうなんだろうね。

真っ先に逃げるべきだって俺は言えるけど、きっと災害時に現場を見に行きたがる感じと一緒なんだろうな。野次馬的な感じで。


「目の前に兵士の死体が降ってきて、それを確認しに来た魔族がいてね。私はその場で座り込んじまったのさ。そしてその魔族と目が合った。死を覚悟したね。だけど、奴らは私や逃げ惑う人たちには目をくれなかった。ほかの兵士たちが集まってくる方向へいったのさ。奴が見境なく人を殺して回るなら私はこの場にいない」

「なるほどな。優先順位はわかっているってことか。というか、後方の港に察知されずに乗り込んでいるんだから、それまで隠れて進むっていう知恵があるのはわかるな」


田中さんが今まで聞いてきたことから魔族の状態を整理していく。

うん。確かにそういう行動をとるんだからちゃんと考えられるってことだよな。

ん? これって……。


「田中さん。魔族って何か目的があって攻めているってことになりませんか?」

「あ、そういうことですか」


俺の言葉に田中さんよりも先に、撫子が反応した。


「何か目的があるって普通じゃない? 撫子も何を納得しているの? 今回は後ろの補給をつぶすためって田中さんが言ってたじゃん。僕も話を聞く限りそう思うよ」


光だけはよくわかってないようで首をかしげている。

でも、エルジュやユーリア、そしてリリアーナ女王の目つきは鋭くなっている。

俺の言葉の意味をしっかりと理解しているんだろう。

そして、それはゼランさんも同じで。


「まさか。偶然戦端が開かれたんじゃないってことかい? あの化け物たちは予定を立てて戦争を起こしたっていうのかい!」

「落ちつけ。ただの予想だ。でも何か目的があっても不思議じゃない。何せ後方の物資をわざわざ止めるぐらいだ。確実に敵対している大国をつぶすために動いているんだろうって俺でも予想が付く。そっちも思いついたようにな」

「……でも、それなら。シュヴィール王国は……」


ゼランさんの顔が絶望に歪む。

俺が言ったのが原因だけど、状況を考えると普通はそうだよな。

そして支援をしていた国を残すかというと……俺的にはありえない。

これからまた邪魔されかねないし。


「だから落ち着け。答えはでてない。相手の行動を考えるに後方に少数を送ったんだからただの支援止めだろう? 本格的に占領しようとするなら、あんたたちだって逃がさなかったはずだ。そこまで手を回せないってことは……」

「なるほど、確かに支援を止めるための襲撃って可能性が高いか。あんな大きな町を占領できるほどの数はいなかったっていうのは理解できる。でも、勝てるとは思えなかったけどね」

「占領できることと、敵に勝てるかはまた別の話だからな」


あ、なるほど。

占領とかじゃなくただの足止めって可能性もあるか。

でも、足止めにしても……。


「ねえ。僕もようやく話が理解できたけど、ゼランさんの国の支援を止めるために襲ったってことはさ。今、真っ向から魔族と戦っている国ってまずくない?」

「「「……」」」


光の言葉に全員が沈黙する。


「ま、うまくいっているならな。後方を襲われて、シュヴィール王国も含めてしっかり反撃するだろうし、そう素直にはいかないだろうさ」

「そ、そうさ! 私たちの国が負けるもんか!」


田中さんのフォローの言葉に少し空元気でいうゼランさん。

その姿は完全に無理をしているって感じで痛々しい。


「よし。今日のところはこれぐらいで良いか。ああ、最後に海の方を警戒したいんだが、どの方向にゼランたちの大陸はあるんだ?」

「あー、警戒は確かに必要だね。えーっと、地図はあるかい?」

「ああ、こっちだ」


田中さんはそういっていつの間にかこの港町の地図を用意していてそれを差し出す。

そして、ゼランさんもそこは航海をしてきただけあって即座に一点を指さす。


「この方角だね。まあ、やってくる可能性は低いとは思うけど、兵士さんに見張ってもらうぐらいはしていいと思う」

「ここね。わかった。領主には俺が伝えておく。みんなはもういい時間だから休んでおけ」


田中さんはそう言って部屋を出ていく。

きっと、ゼランさんが言ったところを見に行ったんだろうな……。

俺も手伝うべきか?

そう考えていると、撫子が俺の肩に手を置いて。


「休んでおきましょう。田中さんが何も言わないのですから今は体力の回復に勤めましょう」

「そうだねー」


うん。そうだ。休めるときに休もう。

ということで、俺はおとなしく寝ることにする。

何事もないのがいいんだけど……どうなるかなー。



どうも魔物とはちがうようで、こっちの魔族よりもちゃんと仕事をしている感じがします。

一体どんな目的があって魔族は国を攻めているのでしょうか?

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