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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


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第251射:単調作業はやっぱりつらい

単調作業はやっぱりつらい



Side:ヒカリ・アールス・ルクセン



「まずは、この資料のでじたるかをたのみたい」

「了解。じゃ、結城君たち手はず通りに頼む」

「はい。任せてください」

「ええ。これで資料がいつでも読めるのですから頑張りますわ」


なんか、晃に撫子はやる気になっているけど……。


「どうしたんだいヒカリ? 何か元気ないようだけど?」


僕の様子に気が付いてくれたノールタル姉さん。

流石、異世界でできた我が姉!

血はつながってないけど、ソウルシスター!


「いやー、本がこんなに山のように積み重ねられているのをみてやる気がなえてきた」

「あー、なるほど。ヒカリは勉強が苦手だべか?」

「うん。ゴードルのおっちゃん。というか、勉強が好きな学生なんていないね!」

「光さん。それは偏見が過ぎますわ」

「普通に勉強している奴はいるぞ。勉強のできる学校にな。っていうか、光の学校ってお嬢様学校だろう? 勉強できなきゃ入れなくないか?」

「ですわね」

「いや、勉強ができるのと、好きなのは同義じゃないんだよ」


仕方なく勉強して成績をだしていただけ。

そうしないと両親がうるさいから。

何が悲しくて、勉強の元ともいえる本のデジタル化を手伝わないといけないのか……。


「ま、気持ちはわかるが、帰る方法を探すためだ。がんばれ」

「うー。そういわれると仕方ないよね。デジタル化できれば僕たちも出た先で調べられるしね」


やるしかない。

とはいえ、この量を見るとなえてしまう。

この本の山を一ページ一ページ記録して、写真を撮っていくだけの作業……。

終わりが見えない。

もっと人がいれば……と思ってあたりを見回してあることに気が付く。


「あれ? そういえば、お姫様にカチュアさん、キシュアさんは?」

「ああー。姫様たちならタナカさんにデジタル化の説明されて、姫様で調べた内容の本をまとめに行きましたよ」


うげっ。まだ増える予定!?


「うむ。できれば城にあるすべての書物を記録したいものじゃな。勇者殿たちたのみますぞ!」

「「「……」」」


さっきいい返事をしていた、晃や撫子どころか、ノールタル姉さんたち、ヨフィアさんもその希望を聞いて絶望しているね。

ははっ! 城の本全部デジタル化? 


死ねるね。


僕も死んだ目になりかけたことで、田中さんがマノジルさんの後ろに現れて一発。


「おい、爺さん。勝手に仕事増やすな。個人的なことはコツコツ自分でやれ。見ろ、結城君たちどころか、ゴードルまで仕事の多さに引いている」

「おっとすみませぬ。まあ、ぼちぼちやっていきますかな。では、とりあえず、こちらは勇者殿たちが帰還するために必要な資料ですので確実にお願いいたします」

「ということだ。まあ、きついかもしれないが、帰るためだ頑張ってくれ」

「「「はい」」」



ということで、僕たちの作業が始まったわけだけど……。


パシャ、パシャ、パシャ……。


そんな撮影音だけが部屋に響く。

最初に本のタイトルのフォルダを作って、ページ数を入力して写真を保存してくという単調作業。

最初こそ、タイトルや内容が気になってはいたが、そのたびに手が止まるし、今回の目的は調べる為ではなく、記録するだけの作業なので、効率を重視していると気にならなくなり、そして眠くなってくる……、ぐぅ。


と、いけないいけない。これは僕たちが帰るための作業なんだ。

頭を振って意識を覚醒させつつ、みんなはどうかなと思ってあたりを見回すと……。


「「「……」」」


パシャ、パシャ、パシャ……。


先ほどと同じ地獄が広がっていた。

やばい、予想以上につらい。

魔王城殴り込みとか、ルーメル王都に戻る時よりある意味つらい。

徹夜明けでさらにドローンの監視を頼まれるぐらいつらい。


……単調作業は拷問だね。


とはいえ、流石に書き写しをするわけでもなく、写真を撮って保存していくだけであり、作業人数も多いから目に見えて本は減っていっている。


「というか、今見て思ったけど、一冊一冊の本の厚さの割には内容がさほどないよね」


そう、何度も写真を撮っていて気がついたんだけど、この世界か、ここの本だけかは知らないけど、装丁はなんか豪華なのに中は薄いんだよね。

色々な意味で、文字密度はないし、ページ数も少ないってやつ。

で、そんな僕の疑問に答えてくれたのは撫子。


「仕方ありませんわ。見るからに本は一冊一冊手作りで、内容も手書きです。つまり印刷技術が発達していないようです」

「紙もギルドの依頼書はゴワゴワだったしな。それに比べてこっちの本はましだけど、それだけ高いんだろう。ほら、ギルドや雑貨店で紙買おうとしたときすごかっただろう?」

「ああ、あったあった」


あの時は、田中さんからノートを出してもらおうとか思ってなくて、普通に買えばいいやと思ってたんだけど、意外と高くてびっくりしたんだよね。

ギルドの依頼書に使われている茶色いシミのある紙でも日本の感覚からすると、ノート5冊分ぐらいの値段するんだよね……。

そんなことを考えていると、今度はマノジルさんが話に加わってくる。


「ははは、勇者殿たちの世界は製本技術が発展しているのでしたな。タナカ殿に本を見せてもらっておどろきましたな。しかも一般で大いに売られている。うらやましい限りです。本が読み放題の世界とは!」


いやー、僕は別に本はそこまですきじゃないかな? 漫画やラノベならともかく……。

ということで僕としては図書館とかで時間をつぶせる人の気が知れないね。


「そういえば、日本っていうか地球でもデータベース化しているよね。その人たちもこんな苦労してるのかなー?」

「いや、まだまだきついぞ。書籍のデータ化っていうのは、画像化だけじゃないからな。本の素材、重量、筆跡、内容は原本と、現代翻訳に分ける」

「うげっ!?」


田中さんから告げられた事実に思わず叫んでしまう。

そして、ある疑問も浮かぶ。


「……そんな拷問な仕事だれがやるの?」

「国がデータベース化は推奨しているし、民間でもそういうことはやっているぞ。データは本とは違って劣化しないからな。しかも嬉々としてやっている。本を永遠に保存できることに無償の喜びを感じている奴らが」


想像を絶する世界だね。


「ほほう。やはり、田中殿たちの故郷にも同好の士はいるのですな」

「世の中たくさん人がいるからな。そういう連中もいるだろうさ。で、話ついでだ。爺さん。俺たちがここで本のデータ化を終えた後はどこに行ったらいいと思う?」


あ、そうか、絶望の作業で忘れてたけど、僕たちは帰るための方法を探すためにこれから動く必要があるんだよね。


「ふむ。正直な話召喚技術に関して秀でている国というのはあまりきかんからのう」

「まあ、そりゃそうだろうな。勇者召喚と言葉だけだけ聞けばいいことだが、裏はただの誘拐だからな。しかも、戦ってくれっていう戦闘奴隷だ。国としては正式に認めるとかよほどだぞ」

「……本当に申し訳ない」


田中さんに痛いところを突かれて頭を下げるマノジルさん。

こんなところでそういうことを言わなくてもいいのに。

はぁ、フォローしないとね。


「いやいや、マノジルさんが悪いってわけじゃないから」

「いや、国のやったこと。わしが姫様を手助けしたのも事実。笑い話ですませていい話ではない。しかも勇者殿たちは本当に魔王を倒してくださった。姫様を助け魔王を討ち果たす。陛下もおっしゃられておりましたが、まさにあなたがたは真の勇者です」


マノジルさんはそう言って深々と頭を下げる。

なんか、謁見室で王様にお礼を言われたときみたいで、むずがゆくなる。


「おだてられていい気になるなよ。爺さんも若者をためすんじゃねえよ」

「おっと、ただお礼を言っただけですがな。これで少しでも勇者殿に好感を抱いてもらうなどとは思っておりませんとも」

「「「……」」」


あー、なるほどこういうことなわけね。

ちくしょう。大人はいつも若者をもてあそぶんだ!


「姉さん!」

「はいはい。大丈夫だよヒカリ。そこの大人ども、遊んでないで、ちゃんと話を続けな」

「だそうだ。ノールタルに怒られたくなかったらちゃんと話をしろよ」

「元はといえばタナカ殿がこっちの傷をつついてきたことなんじゃが……。まあよい。さて、どこに向かえばいいのか」


そう言ってマノジルさんは腕を組んで考える。


「どこが魔術が達者だとかないのか?」

「あるにはある。魔術の国という名前の小国ではあるが、そこなら可能性もあるじゃろう」


へー、そんな国もあるんだ。

でも、あっても不思議じゃないよね。


「小国というと、今回の連合にはいなかったよな?」

「うむ。今回の連合はあくまでも大国の連合じゃったからな。ロシュール、リテア、ガルツそしてルーメルじゃ」

「ルーメルは俺たちだけの参戦だけどな」

「それをいうでない。話はどこに召喚に関する情報があるかじゃ。そういうことで小国とはほぼつながりがないから、時間はかかるじゃろうな。幸い大国とは知り合いなんじゃろう?」

「ああ、なるほど。連合の知り合いに口利きしてもらえってことか。で、その魔術の国ってのはどの大国の傘下なんだ?」

「騎士の国ロシュールの傘下の国じゃな」


あー、確かあのすごくびしっとしてたウィードの女王様がいた国だっけ?

あと、エルジュがいる国だった気がする。


「……なるほど。ちょうど反対側か。話を通してもらうのも時間がかかりそうだな」

「まあ、そこらへんは仕方あるまい。とはいえ、ウィードの女王がダンジョンのゲートを使って各国の交通を楽にしようとしているからのう。それに乗っかればいいじゃろう」


そういえばそんなことも聞いた気がする。

やっぱりセラリア女王ってすごいじゃん!

それで、私はあることに気が付いた。


「それならさ、エルジュに会いにいこう! いまエルジュって確かリリアーナ女王と一緒にラスト王国で支援活動やってるしさ、セラリア女王の妹さんだし!」

「いいですわね。リリアーナ女王にも近況を報告するにもちょうどいいですわ」

「いや、昨日の今日ってわけじゃないけど、すごい出戻り感があるけど、いいのかな? どう思います、ゴードルさん?」

「関係ねえべさ。リリアーナ様もアキラたちに恩返ししたいっていってただ。喜んでくれるだ。まあ、ノールタル姉さんは気まずそうだべ?」

「そんなこと気にしないさ。なあ、セイール」

「ええ。みんなの顔が見れるのはうれしいですから」


姉さんもセイールも賛成。

つまり、目的地は決定だね!


そう思っているとドアが開いて。


「お待たせいたしました。こちらの本のでじたるかをお願いいたします!」


ドサドサドサ……。


お姫様が空気を読めないほど本を持ってきやがった……。



いいか、単調作業は本当に地獄だ。

そして、デジタル化これって今でもぼちぼちやっているよねー。

世の中だれかがこういう仕事をしてくれていることに感謝です。

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