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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


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246/524

第245射:別れと次なる目標

別れと次なる目標



Side:ヒカリ・アールス・ルクセン



「何かあったら、ウィードを頼りなさい」

「はい。是非ともウィード、そしてロシュールにお越しください」

「このラスト王国も勇者様たちをいつでもお待ちしております」

「それなら、またガルツに来てくれ。歓迎するぞ」

「リテア聖国も勇者様たちを歓迎いたしますわ」


そう言ってくれる、国の偉い人たち。

僕たちは田中さんとお姫様に連れられて会議に参加させられたと思ったら、今後何かあれば頼っていいよという話だった。


「私たちは私たちで帰る方法を探してみます」

「何か見つかれば情報をお送りいたしますね」


しかも、帰る方法を揃って探してくれるとまで言ってくれる。


「ま、私は細かいことはよくわからんから、そこまで役に立つとは思えんがな。だが、手伝うぞ!」

「はぁ、ローエル。もっと言い方を考えなさい。頼りないわよ」


ローエル将軍は相変わらずだなー。

そして、なんか凛々しかったセラリア女王はローエル将軍に対してため息を吐いているっていうのが新鮮だった。


「とはいえ、とりあえずルーメルに戻って事の成り行きを報告して頂戴。私たちも兵を同行させて親書を持たせるから、それであなた達の行動に正当性は持たせられるはずよ」

「うん。わかったよ」

「はい。わかりました」

「ご配慮ありがとうございます」


セラリア女王たちは僕たちに各国兵を同行させてルーメル王に連絡を取ってくれる方法を選んでくれた。

これがあれば、いきなりむげには扱われないだろうと田中さんは言っている。

そうなること祈るよ。

戻ってそうそうルーメルと険悪になるなんて考えたくもないし。

と、そんなことを考えていると、リリアーナ女王とノールタル姉さんが話している姿が目に映る。


「姉さん。勇者様たちと一緒に旅に出るんですか?」

「ああ。いい機会だ。勇者と魔族が仲良く旅をすれば、世界は平和になったって伝えられるだろう?」

「……それはそうですが」

「それに、私は勇者様たちと旅をしたいんだよ。新しくできた妹たちを放っておくわけにはいかない。そうだろう? それともリリアーナはまだ独り立ちできないかい?」

「もう。そう言われると何も言えないじゃないですか。四天王の席を用意できますって言ってもだめですよね?」

「その席に魅力はあまり感じないね。なあ、ゴードル?」


そう、この場にはゴードルのおっちゃんもいる。

会議の間に到着したみたいで、連れてきた和平派のみんなはもう解散しているみたい。

ゴードルのおっちゃんは、ノールタル姉さんと同じように僕たちと旅をしてくれるって言ってくれた。


「そうだべな。リリアーナ陛下には悪いだども、おらたちにはその席は堅苦しいだ。ヒカリたちの恩を返すだよ。というか、ノールタル姐さんのいうとおり、世界を見てみたいだ」

「そうそう、ってゴードル。私たちはあくまでもヒカリたちの帰る方法を探すんだよ」

「わかってるだ。でも、世界を見るのも楽しみだべ?」

「そりゃね」


そう言って笑うノールタル姉さんとゴードルのおっちゃん。

そうだよね。

世界を見て回るのも楽しいよね。

僕も楽しみだもん。

そして、その2人の顔を見たリリアーナ女王は少し残念そうな顔をしたあと困った顔をして。


「決意は固いようですね。まったく姉さんはいつもこうなんだから。ゴードルも意外と頑固ですね」

「リリアーナに言われたくないね。勝手に魔王になったくせに」

「わはは、似た者姉妹ってやつだべ。そしておらも、自由にいきるべよ。だども、リリアーナ女王、何かあれば呼んでくれ。助けるだよ。なあ、みんな?」


ゴードルがそう言ってこちらをみる。

そんなわかり切ったことをと思うけど、ここは答えないとね。


「うん。任せてよ! なにせ僕たちは勇者だしね!」

「いや、俺たちはそこまで今回役にたってないだろう?」

「晃さん。そういう無粋なことは関係ありませんわ。友人を助けるのに理由なんていりません。それだけの事です」

「そうそう」

「いや……、あーもう、わかったよ。何かあれば俺たちでよければ力になります」

「はい。微力ではありますが。何かあれば必ず」


僕たちがそう返事を返すと、リリアーナ女王は飛び切りの笑顔で。


「はい。その時は力を貸してもらいます。そして、勇者様たちも、いえ、ヒカリ、アキラ、ナデシコも何かあれば力になります」

「ええ。みんなで力を合わせればどんなことだってへっちゃらです!」


エルジュもリリアーナ女王に続いてそう言ってくれる。

あ、エルジュとはこの短い期間だけど、年も近いことから、すぐに仲良くなれた。

聖女だからちょっとあれかな?って思ったけど、本人もいいって言ってくれたから問題なし。

なんか、護衛のオリエルさんが怖い顔してたけど、すぐにため息を付いていた。

あー、苦労しているんだね。でも、仕方ないよね! 友達なんだし。


「さ、いつまでも話をしていたいけど、そうもいかないわ。ユーリアも気を付けなさいよ」

「あら、忘れられているかと思っていましたわ」

「とはいえ、ヒカリたちに被害が及ばないように上手くやれ。何かあれば、ガルツかリテアに逃げてくるといい。いいな?」

「ああもう、わかっています! だから頭から手を放してください! ローエルはいつも雑ですわ!? 髪が乱れます!」


ユーリアお姫様もローエル将軍にとっては妹同然みたい。

頭をわしゃわしゃしてて、元のヘアスタイルに戻すの大変そうだなぁ。

あ、抜け出した。


「まったく。ヒカリ様たちすぐに出発しましょう! ここにいては身が持ちませんわ!」


そう言って珍しく駆け出していくお姫様。

その後ろを自然とついていくカチュアさん。

なんだか、締まらない別れ方だけど、こういうのでいいのかもしれない。

僕もその後を追うように走り出して……。


「みんな。また会おうねー!」


元気よく手を振って、みんなと別れを告げる。

すると、ほかのみんなも走りだして同じように手を振って別れを告げて、僕たちはルーメルへと戻っていくのだった。



「……ぜー、ぜー」

「ま、走ればそうなるな。というか、意外と体力あったんだなお姫さん」

「ほ、褒めてくださって光栄ですわ」


とまあ、こんな感じで、みんなが見えなくなるところぐらいですぐに息切れを起こしていたのはお約束ってことで。

そのあとは、リカルドがお姫様をおんぶしつつ、のんびりと森を歩いていく。


「でも、なんで田中さんはあのお別れの時に先に行ってたのさ? もっと話すこととかあったんじゃない? 帰ることとかでさ?」


そう、田中さんはあのお別れの時には既におらず、先行して森に入っていた。


「別に話すことはないからな。既に会議の時に必要なことは聞いた。だから先に行って待ってた。あのまま一緒にいたらずっと話していそうだったからな」

「うっ」


そう言われるとそうかもしれない。

田中さんが先に行ってたからそろそろ行かないとって思ったし。


「とはいえ、ここからどうするつもりだい?」

「んだ。方針はあるだか?」

「どうするって、まずは報告だな。アスタリ子爵を通してルーメル王に連絡を取ってノールタル、セイール、ゴードルのことと、魔王討伐を説明しないと敵認定されかねないからな。セラリア女王たちからも言われただろう」

「……そうでしたね。私たちのせいで迷惑をおかけします」

「いや、セイールさんたちのせいじゃないですから」

「ええ。そうです」


慌てて、セイールのフォローに入る晃と撫子。

田中さんももっと言葉を選べばいいのにって思うけど、そういう気づかいはするだけ無駄っていわれるだろうな。

って、それはいいんだよ。


「それは聞いているけどさ。それからどうするかって話だよ。セラリア女王たちが手を回しているんだから、そうそう問題になるとは思えないしさ。でも、帰る方法についてはさっぱりだから、何かわかることってないの?」


そう、僕たちが聞きたかったのはそこだ。

ノールタル姉さんもそれを気にして聞いてくれたはず。


「そこは戻ってみないと何とも言えないな。マノジルの爺さんが何か見つけているかもしれないし、フクロウの方で何か情報が見つかっている可能性もある」

「うげ。あのババアを頼るんですか?」

「情報源としては優秀だからな。全部人任せでいいってわけでもない。どこかに拠点を構えてじっくり情報を集めるのも手だと思っているな」

「拠点かー。いいねそれ! いい加減宿屋暮らしとか野宿も大変だし、そういう所ほしい! あと、家具とか揃えたりしてさ」


田中さんの案に心が躍る。

拠点ってことは家だよね。

自分だけの家!

素晴らしい!


「いいなそれ。帰るために俺たちも調べものする必要があるだろうし、その資料をそろえる部屋とかもいるだろうしな」

「うんうん。だから拠点って必要だよねー!」

「気持ちはわかりますが、家なんて買えるお金がありますか?」

「「あー……」」


撫子の非情な一言で現実に戻る私たち。

わかってるよ。

この世界でも所詮は子供さ。

家を買うお金なんてどこにもないよ。

そんな感じで落ち込んでいると、リカルドさんの背中にいるお姫様が口を開く。


「家ぐらいでしたら、今回の功績を考えれば普通に報酬としてくれると思いますよ? なくても私の私財から出しても良いですし」

「ほんと!?」

「ええ。魔王を倒したのは連合と協力してですが、アスタリを単独で守ったこともあります、その功績を考えれば、家どころか豪邸と領地をもらってもおかしくない功績だと思いますわ」

「「おー!!」」


お姫さんの言葉に喜んでいると、田中さんが一言。


「で、ルーメルの土地と爵位をもらって部下ってことか?」

「いえ、そのつもりは……。なるほど、お父様たちですね」

「まあ、可能性はあるだろうな。こっちにはそういうつもりはなくても家をもらってしまったら、対外的にはそう宣伝する可能性は高い。こっちの常識を知らないのを利用してな」

「え? どういうこと?」


僕が2人の会話についていけないでいると、撫子が説明をしてくれる。


「なるほど。つまり、家や土地をもらうことはこの世界では国に属するってことになるんですね。それを知らずに受けれても、周りはそうは思わないと」

「そういうことだ」

「えー……。じゃ、どうするの?」


これじゃ、家とか無理じゃん。


「そりゃ、この状況を利用するんだよ。拠点があると便利なのは事実だからな。だから、まずは……」


こうして、田中さんの作戦を携えつつ、ルーメルを目指すのであった。




さあ、これから帰る方法を探す旅へになります。

第一章完ということろでしょうか?


普通ならこれで物語は終わりですが、まだまだ終わらないのが雪だるまです。

グダグダまったり続きますよ!



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― 新着の感想 ―
[良い点] 1章でこんなに使うのは、やはり雪だるま先生式ダナー。
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