表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

242/523

第241射:未来はいい方向かも?

未来はいい方向かも?



Side:ナデシコ・ヤマト



「メル、無事でしたか」

「はい。陛下のお陰でこのように無事な姿でいられます」


そう言って、感動の再会をしているのは魔族の本当の王であるリリアーナ女王と、そのメイドをしていたメルさんです。

デキラに城を追い出されて以降ようやく再会できました。


「よかったー」

「ええ。よかったですわ」

「だな。本当に無事でよかったよ」


私たちもリリアーナ女王の無事を見て安心していたのですが……。


「あのー、あなた方が魔族の反デキラ派をまとめている方々でしょうか?」

「え?」

「はい?」

「どちら様でしょうか?」


いきなり話しかけられて振り返ると、そこにはどこか高貴そうな私たちと同じ年ぐらいの女性が立っていました。


「あ、失礼いたしました。私、このロシュール、リテア、ガルツの3国連合の総大将を務めている、エルジュと申します」

「「「は?」」」


あまりの事についていけないでいると、エルジュと名乗った女性の後ろから、すごい迫力のあるエルジュさんに似た女性がでてきて……。


「あなたたちが、リリアーナの言っていたルーメルの勇者たちでいいかしら?」

「あ、うん。そうだよ」

「ちょっ、光! その受け答えはまずいって! 何かこの人すごく偉い人だぞ!」

「すみません。私たちは身分の高い人との作法については疎いものでして。ご容赦を」


晃さんがとっさに光さんの口をふさいで、私が即座にフォローをします。

この迫力と動作の綺麗さからみて、貴族の方なのは間違いないでしょう。


「その程度のことで気にしたりしないわよ。私の夫も無礼極まりないし。それに比べればね。で、ルーメルの勇者様たち、この頼りない妹だけど、本当にこの連合軍の総大将よ。そして私が、この妹の補佐として付いている姉のセラリアよ。今はウィードの女王も務めているわ」


そう言って笑顔を見せてくれる姿は、キレイでこれが女王だという装いがありました。

リリアーナ女王もデキラの時に見せたあの迫力もありましたし、ルルア様も独特な迫力がありました。


「さて、勇者様たちとはゆっくりと話してみたいのだけれど、今はそうもいかないわ。リリアーナ貴方もよ?」

「ええ。そうですね。今は、デキラを倒さなくては」

「そうよ。それが今の最大の目的よ。足を止めることは許されないわ。全軍進みなさい。そして先行しているローエルたちに伝令。レジスタンスたちとの合流に成功。連合軍は民家には手出しをせずまっすぐに城を目指せと」

「「「はっ!」」」


キビキビと指示を出していく姿は、どことなく田中さんに似ているものがあります。

というより、エルジュ様よりも、指揮官らしく見えますね……。


「エルジュも総大将として威厳を保ちなさい。勇者様たちの表情を見なさい。私の方がそれらしいって感じでみているわよ?」

「ちぃ姉さま、そんなこと言っても、すぐには無理です。私は僧侶なんですよ~」


ああ、なるほど。

彼女は僧侶なのですね。

確かに前線に立って戦う人には見えません。

って、ちょっと待ってください。

エルジュ? どこかで聞き覚えが……。


「あの、失礼ですが、エルジュ様にご質問があるのですがよろしいでしょうか?」

「はい? 何でしょうか、勇者様?」

「お急ぎではありますが、ひとまず自己紹介を私は、日本より召喚されました大和撫子と申します。そして、こちらが……」

「光・アールス・ルクセンっていうんだ」

「結城晃といいます」


光さんの元気いっぱいの挨拶は今は胃にいたいのですが、無視するとして……。


「ご丁寧にどうもありがとうございます。それで、ご質問というのは?」

「はい。エルジュ様は、そのリテアの聖女であるルルア様のお弟子さんと伺っていたのですが」

「「あ」」


そこまで言って、光さんも晃さんもその事実に気が付いたようだ。

このエルジュ様は私たちの姉弟子ということになり、あの噂の聖女様でもあるのです。


「はい。そうですよ。ルルア様から、私も聞いております。勇者様はみな筋が良かったと」

「あ、そうだ! ルルア様は無事なの? リテアから追い出されたとか聞いてたけど?」

「無事ですよ。今ではリテアから出向という形で、ウィードで外交官を務めています」

「よかったー」


光さんはそう言って安心した表情になります。

私も安心しました。

本当に無事なようです。

まあ、結婚したとかなんとか、いろいろ話は聞きますが、今はその時ではありませんね。


「お時間を取らせました。セラリア様、エルジュ様ありがとうございます」

「いえ。大事な人の安否は知りたいですよね」

「構わないわ。でも、これから協力してもらうけどいいかしら? ああ、それともそこにいるユーリアに聞いた方がいいかしら?」


そう言ってセラリア様はユーリアお姫様に視線を向けます。

ああ、そういえば、知り合いとか言っていた気がしますね。

そうでなくても、国のお姫様なのですから、各国の王族と面識があっても不思議ではありません。


「今の私には何も権限なんてありませんから、気にしないでいいですわよ。セラリア、エルジュ」


そして、その質問に対して苦笑いしながら答えるユーリアお姫様。


「随分ともまれたみたいね。私やローエルが剣をもって戦っていると聞いた時には信じられないって顔をしていたのに。今は何も文句はないみたいね」

「あのー、ユーリア様はちぃ姉さまやローエル姉さまとは違う気がするんですけどー」

「エルジュの言う通り、お姫様が剣を持って戦うなんて信じられなかったです。でも、今の私には必要だったのです。だから、私は今のセラリアたちを認められます。セラリアもローエルも自分の手で守りたいものがあったのですね」

「ええ、そうよ。守りたいものがあった。だから剣を取った。そしてエルジュは癒しを、そしてユーリア、貴方は勇者を。それだけのことよ」


どのお姫様も、守りたいものの為に自分が取れる手段を選んだだけでした。

そして、それは私たちも同じです。


「さあ、話はこれで終わり。4大国と勇者様、そしてリリアーナ女王もそろい踏み。さっさと終わらせて、楽しいお喋りと行きましょう」

「「「はい!」」」


セラリア様の言葉に全員で返事をして気合が入ります。

なるほど。これがカリスマという事なのでしょう。

ユーリアお姫様とも違う魅力があります。


「まず、ユーリア率いる勇者様とレジスタンスのみんなは連合軍の後方に行きなさい。気持ちはうれしいけれど、民を兵士として頼るわけにはいかないわ。民は守るべきものよ」

「セラリア。その気持ちはわかるけど、彼らも命を懸けてこの場にいるの。何か出来ることはないかしら? 全員それなりに魔術は使えるわよ?」

「そうであるならなおさらよ。そこまで決意をした民を戦わせるわけにはいかないわ」


セラリア様はそう言うと、後ろに控えていたレジスタンスたちに向き直って……。


「気持ちは嬉しいわ。明日をつかむために自ら戦いを決意し、ここまでやってきた。だけど、だからこそ、貴方たちはこんなところで死んではいけないわ。私たち騎士が出来るのは、悪を討伐するだけ。この美しい街を再建できるのは、貴方たちだけなのだから。ねえ、リリアーナ?」

「ええ。皆、セラリア女王の言う通りです。今は命を大事にしてください。そして、私たちを助ける為にやってきた、傷ついた騎士や兵士たちを、治療してあげてください」


セラリア様に促されて、リリアーナ女王がそう言うと、レジスタンスの方々は持っていた武器をおろして、素直に移動を開始します。

そして、すれ違い様に騎士や兵士の皆さんに……。


「どうか頼みます。でも、死なないでくれ。俺のおごりで一緒に飲もうや」

「ああ、一緒に飲もう」

「騎士さん。俺たちが、俺たちがやらなくちゃいけないのに……」

「気になさるな。騎士は民のために戦うものだ。騎士の本懐だよ。だから胸を張って送り出してくれ」

「兵隊さん、けがをしたら無理せずもどってください。私が直しますから」

「ああ、その時は頼むよ」


そんなやり取りをして、涙ぐんでいる人たちもいました。

そこには、種族の違いはありませんでした。

魔族だからといって誰も、差別をしたりしていません。

ただ、戦争に向かう人と、それを見送る人がいるだけです。


「ノールタル姉さん。僕の勝手な想像だけどさ。きっとこれから上手くいく気がするよ」

「そうだね。私もそう思うよ。そうなるといいね」


そして、それを見た光さんとノールタルさんはこれから魔族と人が上手くやっていけるんじゃないかと思っているようです。

私も同じ気持ちです。

ちゃんと気持ちは通じるんです。

そんな嬉しい光景を見つつも、全体としてはまだまだ戦いの只中であり……。


ドタドタ……!!


そんな音がしたと思うと、大量に前から人が移動してきて。


「何事か」

「はっ! 城へと続く通路で魔王の配下と思しき兵士や魔物と交戦! その結果撃退はしましたが、不意打ちもあり多数の死傷者がでました! 一刻も早い治療を!」


そう言う兵士の話を聞いて、私たちはすぐに駆け寄ります。


「治療なら任せてよ!」

「ええ。回復魔術なら使えますわ」

「はい。わずかですが協力させてもらいます」


光さんを筆頭に私たちは協力を申し出ます。

ですが、セラリア様は……。


「ありがとう。でも、今はエルジュに場を譲ってあげて。総大将らしい所は見せないとね。いいかしら? エルジュ」

「はい。任せてください」

「え? けが人は結構多いよ」

「はい。一人で対処できる数では……」


と、私たちがそう言いかけていると、エルジュ様から物凄い魔力が吹き出し、あたり一帯を包み込み……。


「大丈夫ですよ。私はこれでもルルア様と同じ聖女ですから。行きます!」


そう言ったエルジュ様の表情は今までのあどけないお姫様の顔ではなく、キリッとした、真剣な凛々しく、そしてある呪文を唱えます。


「死の淵に立つ者たちを呼び戻したまえ。命の光を! ワイドエリアエクストラヒール!」


ブアァァァと優しい緑色の光が辺りを包み込みます。


「うそっ!? エクストラヒール!? しかも、範囲物凄いよ!」

「こ、これが聖女様の力ですか……」

「すげー」


最高難易度の田中さんも絶賛する回復魔術をこれほどの範囲で使えるなんて、ルルア様が弟子にしたのも納得です。

私たちがその光景に唖然としているうちに、ケガをした兵士たちは立ち上がり……。


「よし! 私たちは再び前線に戻るぞ!」

「「「おう!!」」」


再び戦場へと舞い戻るのです。

そこには、恐れや絶望などはありません。

あるのは……。


「私たちには聖女様や国を超えた仲間、魔族の人たち、多くの味方がいる! 恐れるものは何もない! いくぞー!!」

「「「おー!!」」」


仲間を信じて、倒すべき相手に何度でも立ち向かう勇者たちでした……。



「あのー、治療したばっかりなので、安静にしてほしいんですけど……」

「エルジュ。聞こえてないわよ」


そして、エルジュ様の言葉は正しくとも、聞こえていないようで困っている表情に、セラリア様のツッコミでクスッとわらってしまいました。




こうして人々が協力していき、魔王へと迫る!

そして、エルジュとセラリアとも合流。


沢山の力が集まって魔王は倒せるのか!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ