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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


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第236射:予定配置

予定配置



Side:タダノリ・タナカ



「……ということで、私はデキラ王の命令により義勇兵を連れて、ロシュールが来る門を防衛することになった」


そう言うのは、メルの父親だ。

どうやら、城は連合軍がやってきたことで大騒ぎ。

そのドタバタで、メルの親父さんが門の責任者を上手く勝ち取ったようだ。


ま、その配置はすぐにあいつに伝える予定だから、うまく突破されるのは確実だろう。

とはいえ、戦うという建前上、メルの親父さんの軍に人死にが出ないわけではない。

デキラ派の主要人物を潰したとは言え、それでもデキラ派は存在しているから、門から連合軍を上手く引き入れられるかは運次第になる。

人死にが出ない戦いとかおかしすぎるからな。

今のところ、デキラが入れ替わっていることは秘密だから、あいつの方から積極的に敵を迎え入れるような指示は出せない。

徹底抗戦を伝えて、砦の裏切りも聞いているから対策も打つ必要がある。

だから、何もしていなくても打ち破れるほど楽なところでもないわけだ。


その敵味方入り乱れる中でメルの親父さんが無事かどうかはわからない……。


「お父様。本当に……」

「ああ、私が指揮官だ。どうだ立派なモノだろう」


そして、それを知らないメルにとっては、ここが今生の別れにも等しいようで、涙ぐみながら、父親に声を掛けるが、そこは父親、立派に胸を張って答える。


「……はい。御立派になられました。お父様は私の誇りです」


それを見たメルは、父親の覚悟を理解したのか、絞り出すように言葉を贈る。

死ぬ可能性がある以上絶対に大丈夫だとは言えないので、俺も安全性については何も言えないが、ほかには口を出す。


「別れの挨拶はいいが、まずは死なないように細工するのが先だ。向こうに配置されたのは、予定通りのはずだ。で、それからどうする? こっちから何かしら支援がいるなら手を貸すぞ」


こっちとしても、メルの親父さんが失敗することは避けたいからな。


「ふむ。正直な話、どうやれば上手くいくかが分からない。今まで謀反など起こしたことが無いからな」


そりゃそうだろうな。

謀反を起こした経験ばかりとなると、人として信用できん。

さて何を説明すればいいモノやら……。


「そうだな……。俺ならわざと謀反を考えて対策を打つ」

「どういうことかな?」

「つまりだ。デキラ派の連中は裏切りが出ないかっていうのを警戒するっているのは分かるだろう?」

「当然だな。次も内から門が開けられてはデキラたちの死を意味する。そこは絶対に防ぐための警戒、対策はしてくるだろう」

「だからだ。今はあんたは門の防衛の指揮官なんだろう? あんたが率先して裏切りのための対策を立てる」


俺がそこまで言うと、流石にわかったのか、目を大きく見開いて驚いた顔になる。


「なるほど。私が率先して裏切りに対しての対策を立てれば、そこに手を入れられるということか」

「そういうこと。まさか指揮官が裏切りの手はずを整えるとは思えないだろう。しかも、裏切りに備えて手を打っているやつが」


そう、メルの親父さん自ら、裏切りに対してしっかりとした対策を立てることで、デキラ派の注意をそらそうというわけだ。


「まあ、あんたがリリアーナ派だってデキラたちにばれているなら、それは危険だけどな。そこはどうなんだ?」


この作戦の前提条件はメルの親父さんがデキラ派から味方だと思われていることだ。

これがなければ、メルの親父さんごと始末しようとする連中が控えているだろう。

いざというときに背中からバッサリということだ。


「疑われていることはないだろう」

「やけにはっきり答えるな。何か理由があるのか?」

「ああ。既にリリアーナ派の人々はゴードル殿が引き連れて行っているからな」

「「あー」」


俺とメルで同時に納得の声を上げる。

確かにそうだな。


「まあ、ロシュール側の砦のことだから、多少は疑ってくるだろうが、それは末端の兵士に限るだろう。私がそういう細工をするとは思っていない。思っているなら最初から私はゴードル殿と一緒にルーメルへ向かっているはずだからな」


納得の話だな。ここ大一番で裏切ると困るような役職に人を置かないか。

その前にそういうやつらは排除されているってことか。


「とはいえ、あまり露骨にやるとばれるからな」

「まあ、それはそうだろう。で、具体的にはどうすればいいと思う? 裏切り者を考えた防衛となると、通常の防衛よりもかなり違うと思うが?」

「悪いが、俺はこっちの戦い方を知らないんだ。魔族は防衛の際にどうするのが当たり前なんだ?」


俺に聞かれても、こっちの世界の戦場ルールなど知らない。

砦に寄って守るだろうなーというのは分かる。

その程度だ。

しかし、拠点に籠って戦うというのは、現代戦では既に負け確定だ。

敵が拠点にまで寄せてきているということは、それだけ負けていることを指し示すからな。

敵が無理に強襲してきたならば、こちらから迎撃部隊を出して終わり。

だから、元々拠点を盾にして戦うという選択肢が存在しない。


現代戦において拠点は守り隠すもので、盾にするっていうのはありえない。


で、俺の質問にメルの親父さんは少し考えてから……。


「人とさほど変わりがあるとは思わないが、確かに、そこの認識はしっかり確認したほうがいいな。今回の状況を見るに、デキラたちは、ゴードル殿たちをルーメルに向けているため、兵力が著しく落ちていることから、私には、門を強固に固めて、相手の息切れを待ち、ルーメル侵攻軍が戻ってくるかあるいは、連合軍にルーメルが落ちたと連絡が届いて撤退するのを待つ。というのが方針のようだ。私もその指示に従って防衛を行うことになる。どうだ、これで何か思いつくか? 私に思いつくのは、せいぜい、門の近辺に配置して、裏切ろうとすれば後ろから突くというところだが」


つまりは、拠点を盾に使用って作戦だな。

この世界は防御力>攻撃力という図式なんだろう。

現代では、壁による防壁に意味はないからな。

まあ、それでいい。現代レベルの戦争となると、俺1人じゃ手の打ちようがないからな。

おかげで、やりやすいことこの上ない。

さて、この状況であるなら……。


「なるほどな。まあ、その作戦も悪くない。だが、裏切りそうなやつに門の防衛を任せるわけもないだろう」

「むう。確かにな」

「だったら……」


ということで、そこからしばらくメルの親父さんと門の防衛作戦の配置について話し合い、気が付けば日付が変わっていて、ようやく終わりを告げて、戻ることになった。



「……タナカ様。あれで上手くいくのでしょうか?」


帰り道、そんな質問をメルから受ける。


「さあな。物事に絶対はない。確実に大丈夫なんて思っているやつが大抵、思わぬトラブルに対処できないで終わる」


結城君たちに、いつも言っている同じ答えを返す。


「……」


俺の返答にメルは不安そうな顔になる。

とはいえ、俺は希望を言うようなタイプでもないからな。


「心配するなとはいわんが、それで意識を奪われると自分の命を落とすからな。それだけは気を付けとけ。俺たちは俺たちで、メルの親父さんを支援するために動くからな」

「……私たちも同時に動くのでしたね」


そう、メルの親父さんと話した結果、俺たちも同時に動けばデキラ派の連中の気を引けて、メルの親父さんやレジスタンスたちの命もすくえ、連合軍の負担が減らせるという結論になった。


「そうだ。これから、どう動くかしっかり考えないと俺たちだけ全滅ってこともあるからな」

「敵をひきつけすぎてもだめということですか」

「そうだ。そのバランスが難しい」


参戦が早ければ、連合軍の前に潰してしまえと判断されるだろう。

逆に参戦が遅れれば、俺たちは無事でも、メルの親父さん、連合軍の被害が甚大な被害を受けてしまい壊滅する可能性が……ないな。

裏にはあいつがいる。既にデキラは死んでいる。

あとは茶番劇をどう乗り切るかだ。


まあ、連合軍が門を破ってくれないと困るが、破れないわけがない。

つまり、これからの戦いは出来レース。

連合軍が離反した魔族と手を取り合って、邪悪な魔王を倒すことで、魔族が敵でないと世界に宣言するための大舞台。

デキラ派たちには精々世界平和のために犠牲になってもらいましょう。という話だ。


とはいえ、その人と魔族の手を取り合いを実現させるのは、俺たちが動かないといけない。

なるべく犠牲を減らして、上手くやらないといけない。

メルの親父さんの作戦はそのままあいつに伝えているから、勝手に上手く合わせてくれるだろう。

しかし、メルの親父さんの安全が確保されたわけでもないけどな。

デキラ派の連中がどこまでやるかが分からん。

メルの親父さんが率いるレジスタンスが最悪全滅しての開城というのもあるだろう。


「犠牲がゼロで済む戦いじゃないからな。まあ、そのためにも色々やったんだ。後はメルの親父さんに現場を任せて、俺たちは連合軍とメルの親父さんたちがぶつかったら、速やかに動いてデキラ派を陽動する。それで負担が減るはずだ。というか、メルの親父さんの部下たちも、町の方で蜂起する予定だ。信じてやれ」

「……はい。でも、タナカさんが信じろなんて言うんですね。全て切り捨てて考えているかと思っていました」

「別に、意識的に当てにしていないってだけだ。その方が最悪の時にすぐに動けるからな。人っていうのは予期せぬ事態には驚いて動きが遅れる。それでは自分の命を落とすからな」


ま、味方がうまくいってくれたら儲けものってぐらいに思って行動するのがいい。

作戦行動すべてが上手くいくことなんて稀だ。

隣で笑っていた戦友が次の瞬間には頭を撃ちぬかれて死んでいることに驚いていたら、次の瞬間には自分が死ぬ。

ただそれだけの話だ。


「なるほど。そう心構えをすることで、注意深くなるということですか」

「そうだな。ま、できる奴はこんな露骨にしなくても状況を把握できる。だが、俺はそこまでの才能は無くてな」

「……タナカ殿が戦いに関して才能がないというのは、正直信じられません」

「世界は広いんだよ。せいぜい俺は作戦が上手くいくようにせかせか動き回るだけだ。さて、戻ったら、メルの親父さんの作戦を伝えて忙しくなるぞ」


そう、まだ予定でしかない。

準備が出来なければ、意味がない。

さてさて、俺たちはこれから本当に忙しくなるね。


「芋ほりが懐かしい」

「つい、一昨日の事ですが?」

「だらけたいって話さ」


あーあー、忙しいのは嫌だね。

と、タバコをふかしながら、拠点へと戻るのであった。




こうして、命を懸けた作戦が決められていく。

まあ、どこでも戦争っていうのは命を奪っていくもんなんだけどね。

これは、終わりが明確に見えている分楽なのかもしれないね。



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[一言] 漸く連載に追い付いた。 この後必勝ダンジョン読んできます。 (。・ω・。)ゞ
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