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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


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第234射:小さいことからコツコツと

小さいことからコツコツと



Side:タダノリ・タナカ



「ほう、それは本当の事か?」

「はい。間違いなく、連合軍はロシュール側の砦を突破し、このラスト王都に向かっています」


そう話すのは、デキラを打倒するまで会わないとか言っていた、メルとそのご両親だ。

あのかっこいい約束はあっさり破られるモノだったらしい。

いや、まあ普通に考えれば連絡を取り合う必要があるんだから、約束なんて守られるわけもない。

あれか、この親子なりのジョークなのだろうか?


と、そんなことはいいとして、俺たちは、連合軍が砦を破ったのを確認した後、レジスタンスをまとめる行動を本格的に始めたわけだ。

強制収容所にいた連中は勇者ご一行が、平民と貴族のリリアーナ派をまとめるのは、このメルの父親ということになっているから、俺たちが状況を確認しに来たわけだ。


「ですので、お父様。連合軍が来た際にはレジスタンスを率いて連合軍に合流をしてください。下手に行動していると、敵とみられかねません」

「話は分かるが、こちらが先に援護に動いた方がいいのではないか? 確かにリリアーナ陛下を慕うモノを集めてはいるが、それでもデキラを支持するものも多い。それらが集まって各門を守る。それを破るのは容易ではない。先日、魔物の召喚失敗騒ぎで王城内は混乱があったとはいえ、それでも厳しいものがあるぞ」

「魔物の召喚失敗ですか?」


おっと、この前のことはそんな話になっているのか。

ま、偽物が入り込んだんで、うまくごまかしたってところか。


「そうだ。デキラへ反感を持つ者が強力な魔物を召喚してデキラを亡き者にしようとしたみたいだが失敗に終わった。その魔物を支配下に置いてさらに戦力が強化されているとのことだ」

「……そんなことが」

「うむ。まあ、デキラの直轄になるだろうが、連合軍が攻めてくるのであれば、戦わなくてはいけない。それまでに戦力が削られるというのは極力避けなくてはなるまい」

「それは、そうですが。どうやって」

「何、リリアーナ女王の名のもとに内応したものがいるというなら、同じ手を私たちも取ればいい。私たちが門の防衛の戦力になり、開門をして連合軍を引き入れればよい」


……同じ作戦が通じるかね?


「デキラが監視を置く可能性もあります。いえ、確実に裏切りがないように手を打つはずです」


俺の心配はメルも同じだったようで、裏切りに対して何かデキラが動くはずだという。

俺も同じ意見だな。

デキラもそれぐらい対応するだろう……といいたいが、もうその指示を出すデキラは死んでいる。

死体は俺がしっかり処分したからな。

とはいえ、現場を仕切る指揮官は警戒するだろうから、簡単にいくとは思えないな。


「だからこそだ。被害が出ても私たちレジスタンスは連合軍のために働いたという事実が大事なのだ。死んで、怪我をしてまで連合軍を助ける。それで我々は連合軍と共闘できるのだ。被害を出さずに後ろを付いてくるだけの魔族を連合軍が警戒しないわけがないからな」


ごもっともだ。

だからこそ、わざと血路を作って味方だとアピールするわけか。

いい手だと俺は思う。

まあ、死んだり、怪我をする連中にはたまったものじゃないだろうが。


「……話は分かりますが、そんな危険なことの指揮を誰が……」

「無論発案者である私だ」

「それはっ!?」

「誰かがやらねばならぬことだ。勇者様たちを旗頭にするわけにもいかない。このラスト王国で立場があり、民をまとめるのには、私が最適だろう。メル、お前がやったことと同じだ。私も皆のために前に立つそれだけだ」


他の誰かに任せるより、俺としては信頼がおけるからありがたいことだ。

とはいえ、メルにとっては肉親が死地に向かうことだからな。

しかし、そこは貴族の娘なのか、泣いて止めるようなことはせずに……。


「……どうか、お気をつけて」

「ああ。メルも無茶はするな。私が防衛軍に編入されたらまた連絡を入れる。それまでじっと堪えるのだ」

「はい」



こうして、俺たちは無事に?平民と貴族派のトップと話し合いを済ませて、強制収容所までの道を戻っているわけだが……。


「何か、もっと何かできないでしょうか?」

「俺に言っているのか?」

「ええ。タナカ殿なら、もっと安全に連合軍を引き入れることが出来るのではと思いまして」


そんな無茶を言われてもな。

俺は何でもできるスーパーソルジャーではない。


「状況がはっきりわかっていないから、何とも言えないな。親父さんの配置が決まってからだ」


配置が決まっているなら多少はやりようがある。

だが、この時点では細工もできない。


「……そう、ですか」

「というか、親父さんも言ってただろう。じっと耐えろってな。連合軍が来るまでにレジスタンスが勝手に行動したら、それこそ問題だ。そこをちゃんと抑えることが、親父さんの援護にもなる」

「はい。わかりました。つまり、お父様の配置が決まればやれることはあるということですね」

「おう。だから、現状維持を頑張れ」

「かしこまりました」


何というか、これから頑張ることが決定しているようだ。

はぁ、面倒だな。

何もしないで連合軍の到着を待つというのはないものかね。

まあ、他人に全部任せている不安よりはましなんだろうが……。



とまあ、そんな感じで強制収容所まで問題なく戻ってきたんだが。


わーわー!!


ちょっと離れていてもわかるぐらい、何か騒いでいる声が聞こえてくる。


「夜に一体なんでしょうか? 皆寝静まっているはずですが?」

「さあな。まさか、デキラの部下でも強襲しに来たか?」

「まさか!?」

「冗談だ。強襲されても誰かが連絡をするはず……」


と、言いかけていると、タブレットに着信が入る。

発信元はルクセン君だ。


「もしもし、もう近くまで戻ってきているぞ、何の騒ぎだ?」

『あ、そうなんだ。なんか、魔物が出てきたみたいで、兵士の人が応戦しているみたいなんだ。もう晃とか撫子は応援にでていったよ』

「なるほど。魔物がでたのですね。今までそういうのが無かったのが不思議でした」


メルの言う通り、ゴードルが畑仕事をしていた時も魔物が出ていたから、今まで魔物と遭遇していなかったのが不思議だ。


「なるほどな。状況は把握した。で、応援はいるか?」

『ごめん。そこまでは分かってないんだ。ただ、魔物が出たから田中さんたちも魔物に襲われるかもって連絡したんだよ』

「事情はわかった。とりあえず、近くまで来ているが魔物との遭遇はない。このまま、魔物との戦闘を確認してくる。必要があれば手を貸す。で、ルクセン君が残っている理由は回復要員か?」

『そうだよ。僕も戦いたかったんだけど、それでお留守番。まあ、戦闘が始まってから、けが人が運ばれてくることはないから、そこまで苦戦もしてないとは思うんだけどね。でも、まずかったら助けてあげて』

「わかった」



そういうことで、俺たちは駆け足で騒ぎのもとへと向かうと……。


ぎしゃぁぁぁ!!


そんな叫び声をあげながら、うねうね動いている木が倒れていく姿だった。


メキメキ……ドズン……。


それなりに身は詰まっていたのか、倒れた音は激しく大きかった。

まあ、枝葉が付いているから。


「やったぞ! アキラ様とナデシコ様がやってくれた!」

「「「わぁぁぁぁ!!」」」


どうやら俺の手伝いは要らなかったようだ。

既に最後の魔物を倒していて、歓声が上がっている。

周りの兵士たちも見る限り立てないような重傷者もいないようで、完勝したようだ。


「あ、田中さん、メルさん」

「戻ってこられたのですね」


2人は俺たちに気が付いたようでこちらに駆け寄ってくる。


「おう。問題なく倒せたみたいだな」

「はい。流石勇者様です」

「いや、兵士のみんなが抑えててくれましたから」

「はい。援護があってのことですわ」


ふむ。驕ってはいないようだし、過信もしていないと。

傷もないから、問題なさそうだな。

随分、たくましくなったと喜べばいいのか、悲しめばいいのか、まあ死ぬ可能性が低くなっているのはいいことか。

と、それよりも……。


「あの木の化け物は、確かゴードルのやつが倒してたやつだよな?」

「はい。この畑の一帯でよく出る魔物みたいです」

「本当の生木を相手にしているようで、普通の斬撃は通じないから苦労しましたわ」


そりゃ、そうだろうな。

生木を剣で切りつけたところで傷がつくだけで、切断なんてそう簡単にできるものじゃない。

普通の銃撃ですら、生木は防げるからな。

それが魔物っていうのはなかなかにすごい環境だな。

俺がこの生木を倒すとしたら、ナパームで燃やすか、バズーカで吹っ飛ばすかぐらいだな。

ここまでの太さの生木となると、マグナムでも難しいかもしれない。


「で、ここの警備をしていた兵士に聞きたいんだが、魔物の出現はここ10日ほどなかったと思うが? 俺の気のせいか?」

「いえ。そうです。というか、ここ一か月は魔物は見ていません」

「はぁ? 魔物は出ないのか? でも、ゴードルが退治してたのは聞いたぞ?」

「その、ゴードルさんが出兵する前にデキラに掛け合って、森一帯の魔物を討伐してくれたのです」


ああ、なるほど。


「つまり、ゴードルの魔物狩りの効果がなくなる頃ってことか」

「はい。そうなります。これから増えてくるかと、とはいえ、デキラに援軍を頼むわけにもいきません……」


そりゃそうだろう。

わざわざ敵を呼び寄せて、既に強制収容所が自由収容所になっているのをばらす理由もない。

何とか連合軍が来るまでごまかせればいいんだがな。

ま、そこはあいつやメルの親父さんがうまくやると信じて、やるべきことは。


「とりあえず、巡回の数を増やすしかないな。ノールタル、ドローンをこっちに回して監視を強めるか?」

「そうしてもらえるとありがたいね。とはいえ、それをやるのは……」

「もちろん俺たちだな」

「「えっ!?」」


驚きの声を上げる結城君と大和君。


「あきらめろ。ここの人たちの人命がかかっているんだ。ま、兵士たちも協力するだろうし、そこまでひどいことにはならんさ。なあ?」

「はい。基本的に巡回は私たちが行いますので、勇者様たちは、有事の際までお休みください」


そう言ってくれる兵士たち。

ここまで言われて拒否できるほど心が強いわけでもないから……。


「わ、わかりました。できる限り頑張ります」

「そ、そうですわね。私もできるかぎり協力しますわ」

「はいはい。ま、何かあったら起こすから、2人はもう寝ていいよ。さ、寝た寝た」


ノールタルがそう言ってすぐに2人を倉庫へともどす。

ノールタルは2人が無理しているのが分かったな。


「さ、俺はこれからここら一帯の安全確保の話し合いだな。メルも寝てていいぞ。ついでにリカルドを呼んできてくれ」

「かしこまりました」


さて、ここからは大人が頑張るとしますか。

連合軍が来る前に魔物にやられましたとか、悲しすぎるからな。



大事の前の小事といいまして、足元はちゃんと整えておかないと、思わぬところで足元を掬われるものです。

ちゃんと、魔物退治をして連合軍が到着するまで耐えておかないといけません。



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