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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


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第232射:死体処理

死体処理



Side:タダノリ・タナカ



全く、厄介なことになった。

いや、当然といえば当然だが、魔王デキラの死体処理に監視がついた。

和服姿の生首女とデカい白蛇だ。

やつの配下で、俺がちゃんと死体処理をするか監視するためについてきた。

まあ、死体がよみがえることがある、不思議な世界だから、そういうのも必要かと思うことにする。

なるべく、手札は見せずに綺麗に片づけたいな。


ドサッ。


そんなことを考えながら、適当な場所にたどり着いたので、死体袋を地面に下ろす。


「驚きです。半分になっているとはいえ、それなりの重さがあり、持ちにくいはずなのに、ここまでの速度で移動するとは……」

「いや、お前も付いて来てたじゃないか」


平然と俺の移動速度についてきたやつが何を驚いているんだ。

まあ、そう言いつつも、俺は作業を止めることなく進めていく。


「それは、私が高レベルの魔物ですから。ですが、タナカ殿はレベル1。……やはりレベル1の身体能力には見えません」

「そりゃ残念だな。俺にはわからない」


助かる、向こうは勝手に俺のレベルを見て混乱してくれている様だ。

それならこっちも探りを入れてみるか。

俺はそう考えつつ、ガソリンをまいて死体袋ごと燃やす。


「さて、燃えつきるまで暇だな。暇ついでに、こっちも話が聞きたい」

「何でしょうか?」

「やつから俺の話はどこまで聞いてる?」

「どこまでですか? ……主様と同郷の出身であり、戦場を渡り歩いていた傭兵であるというのは聞いております」

「ちっ」


やっぱり、俺の情報は全部筒抜けとみていいか。

ま、もともと、アスタリの町でデキラの好戦派とぶつかった映像は押さえられているから、今更というのもあるが、こうして面と向かって言われるのはきついな……。

というか、あっさり答えたな。

隠す必要もないとみているか。

どのみち、俺にとっては最悪の状況ってことか。

傭兵に置いて手札、武装を把握されるのは死活問題だからな。

当分は大人しくしておくしかないわけか。


まあ、積極的に敵対しようとは思っていないが、やつを出し抜くのは難しそうだな。

あー、いらいらする。

タバコでも吸うか。


そう決めて、タバコに手を伸ばしていると……。


がささ……。


目の前で燃やしている死体袋が動き始めた。

いや、袋は既に燃えてなくなっているから、実際には中のデキラの下半身が動いているということになる。


「燃焼による影響か?」


焼肉などで、肉が三日月状になることがある。

焼けたところの水分が飛んで縮んだ分、他の周りを引っ張りできる現象だ。


「いえ、流石にそれだけで、下半身が立ち上がることはないと思うのですが……」

「そりゃそうだ。となると敵だな」


女の冷静なツッコミに納得しつつ、俺はS&Z M29を取り出して、すぐに引き金を引く。


ドズン!! ドズン!! ドズン!!


三連射。

相手は動いていないからな、遠慮なくやらせてもらう。


ドチャッ……。


その結果、デキラの下半身は再び倒れて動かなくなり、大人しく燃え続ける。


「も、物凄い威力の銃ですね」


女の言う通り、確かに威力はあるが、ハンドガンに収めるもんじゃないな……腕が多少しびれる。

この程度の時間なら問題ないが、連続使用には難があるな。リコイルコントロールが面倒だ。

と、それよりも、聞き捨てならない言葉があったな。


「なんだ。銃も知っているか。となるとウィードでは銃も配備済みか」

「あ、はい。タナカ殿ならその程度把握しているだろうと主様は言っておりました」

「軍事機密をわざわざベラベラ喋っているのはやつの指示か」

「はい。こう言っておけば、タナカ殿も変なことは起こさないだろうと」


くそっ、本当に性格が悪い。

女の言う通り、やつが銃の配備を始めているとなると、変な気を起こす理由もない。

ことを起こしても運がよくて刺違えだな。

そんなことはするつもりはない。

というか、ここまで素直に言うということは、さらに上があるとみていいだろうな。

こっちの戦車を知っての行動だ。他にまだ手があるだろう。

……最初からわかっていたが、やはり敵対するだけ無駄だな。

と、そこはいいとして。


「燃え尽きたか?」

「はい。既にデキラの遺体から魔力の反応はありません。完全にただの遺体になったかと」

「そういえば、魔石が魔族にはあったんじゃないか? なんで回収していなかった?」

「デキラは戦闘で上半身を消し飛ばされましたので、その時に魔石も砕け散って、回収できませんでした。それに奥様たちの視線がこわかったので」

「ああ……」


パンツイーターの死体とかさっさと片付けてほしいよな。

そこは納得だ。

そんな感じで、燃えつきかけているデキラの下半身をみていると……。


『おーい、田中。君が火をかけたジェスタ君。完全に死んでなかったみたいで、こっちも面倒になっているから、後片付けお願いできないか?』

「ちっ。しぶといな」

『腐っても四天王だな。城の方に自力で戻って、敵味方問わずに暴れているから、さっさとたのむ』

「腐るというか、燃やしたけどな」


そんなことを話しながら、俺は既に駆け出している。


「ちょっ!?」

「しゃっ!?」


なんか後方に置いてきた女と白蛇が驚くような声が聞こえるが、任務の追加を言われて棒立ちしている奴がいるか?

ここら辺緩いな。まあ、こいつは軍事にはそこまで関係していないからな。


「そっちから確認できるかわからんが、そっちが仕留めたデキラの下半身も再起動したからな。止めを刺したはずだ。一応監視しておいてくれ」

『了解。把握している。まったく、不思議な世界だな』

「お前らが一番不思議だよ。相変わらずな。で、ジェスタのやつは頭もぶっ飛ばして、ガソリンで燃やして、ゾンビになる条件は回避していると思うんだが、原因は?」

『さあな。それを言ったら下半身で動き出したデキラの事もあるからな。そういう常識は捨てた方がいいんじゃないか?』

「確かにな」


あー、ゾンビの常識も地球のモノだったな。

ここは異世界だから、そういう地球の理屈は通用しないか。

となると、同じような武装じゃ、倒しきれない可能性があるか。

いや、そうなるとさっきのデキラ下半身はまだ死んでないってことになるが……。

あー、もうわからん。

なんか女は魔力があるのなんのとか言ってたな。

とりあえず、その魔力反応がなくなるまでやればいいか。

監視要員はいることだしな。

そんな結論を出しているうちに、城内へと戻ってきたのだが、思ったより騒ぎが大きくない。


「おい、静かすぎないか? 魔物たちが暴れていたんだろう?」

『ああ、邪魔になるのは全員閉じ込めているか、処分してる』

「それなら、遠慮はいらないか」

『ああ、自由にやってくれ。こっちはこっちでこれからのことで忙しいからな。あ、城ごと吹き飛ばしたりするなよ』

「わかっている」


ちっ、忙しいのは事実だろうが、俺の手札を見るっていう目的もあるだろうな。

はぁ、ま、今のところ敵にはならないからいいとするか。

その間に、何とか対抗する手段を作るしかない。

そんなことを考えながら進んでいると、物音が聞こえてくる。

ジェスタの死体が暴れている所か。

俺は、そのまま音のする方向に進んでいくと、中庭にでて、そこに皮膚が焼けただれたジェスタの遺体が動いているのが見えた。

周りには、ジェスタを取り押さえようとしているのか、白蛇が多数見える。


「おい。周りの魔物を引かせろ。巻き添えになるぞ」

『了解』


すぐにやつが命令したのか、白蛇たちがジェスタから距離を取る。

それを確認した俺はすかさず走り寄って……。


「おい」

「ぐがっ!?」


俺の声に反応したのか、それとも俺が自分を殺した相手だと気が付いたのかわからないが、こちらに振り返る。

顔は焼けただれているだけでなく、マグナム弾を喰らっているので頭が半分ほど吹き飛んでいる。

ああ、この程度の損傷だとゾンビになるか? なんてことを考えつつ、俺はその口にパイナップルをねじ込んですぐに離脱する。


「お、おばえ!!」


お、どうやら意識はあるみたいだな。

なるほど、こいつは死んでなかったわけだ。

いや、人体の神秘だな。

ま、それもこれで終わりか。


ボンッ!!


そんな音がしたと思うと、バチャビチャという音と共に何かが降りそそぐ。

振り返ると、頭は完全に吹っ飛んでいて、首元が裂けて胴体まで傷が入っている姿が映り……。


ドズン。


と、先ほどと同じように倒れ込んだ。


「仕留めたか?」

『魔力反応はないな。というか、口に手榴弾ねじ込んだのか』

「ああ。外からはやりにくいっていうのは、さっきやりあって知っているからな。中からやることにした」


わざわざマグナム弾つかって腕と銃にダメージ入れる必要はないからな。

動きも鈍いジェスタを簡単に仕留めるなら口に手榴弾をねじ込んだ方がいいと思ったわけだ。

とはいえ、パンツイーターみたいに頭部がなくても動く事例があるからな。

俺は動かなくなったジェスタの遺体に向かって何度か通常弾で発砲をして、風穴を開けておき、その上から火炎放射器でナパーム焼却をしておく。


パチパチ……。


流石によく燃えるな。

ガソリンじゃ倒しきれなかったからな。

しっかり燃やしておこうということでこちらにしたわけだ。

残るのは文字通り消し炭だけだ。

流石に消し炭からできるバケモノもいないだろうしな。


「さて、後始末は任せるぞ。俺はもう戻る」

『……流石に火炎放射器を使うとは思わなかったな。後始末が……』

「許可はお前が出したからな」


俺はそう言うと、すぐにその場を離れる。

あとは、やつらの仕事だ。

上手くいくのか、それとも失敗するのかわからないが、とりあえずパンツイーターは片付けたから、何とでもなるだろう。


俺たちに問題があるとすればあとは……。


「レジスタンスを上手くまとめることか」


失敗すると連合軍に敵として攻撃されることになる。

パンツイーターを倒すよりこっちの方が意外と面倒かもしれないな。

まあ、そういうところもやつからのフォローが入るだろうから、その話を聞いてからだな。

そんなことを考えつつ、俺はモニター監視をしながら戻るのであった。


「……はあ、これから何も起こりようのないモニター監視をするっていうのがある意味辛いな」


パンツイーターのダミーを監視する役とか辛すぎるな。

ここは何も知らない結城君たちに任せるか。

俺は他の監視に回ろう。

と、心に決めた俺であった。



こうして、秘密裏にパンツイーターとその他の排除が完了。

残るは、レジスタンスのみんなをまとめることと、偽物パンツイーターたちの監視を続けるという、つらい作業。


みんなは耐えられるのか。



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