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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


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第227射:行動の結果

行動の結果



Side:ナデシコ・ヤマト



「次!!」


私がそう叫ぶと。


「はい!! 次の重傷者を運んでこい!! 怪我人は運べ!」

「了解!」


そう言って兵士の皆さんが次の負傷者を運んできます。


「お願いします!」


そして運び込まれてきたのは、背中が真っ赤に染まった女性です。


「ううっ……」

「頑張ってください。もう大丈夫、大丈夫ですから」


私はそう言いながら、背中にかけられた布を取ると、この人も鞭で背中を打たれて皮膚が裂けるどころか中の肉まで切れて激しい出血を起こしている。


「ハイヒール!!」


私がそう叫ぶと回復魔術が発動して、女性の傷を癒します。

流石は魔法、いえ、魔術でしたか。

すぐに治るのはいいことです。

とはいえ、まだまだ患者さんはいるので、休んでいるわけにはいきません。

隣では光さんが今も必死に……。


「よし! これで大丈夫! ノールタル姉さん!」

「わかった。次を」

「はい!」


私よりも早い速度で治療を行っています。

光さんは回復魔術に私よりも才能が有りますからね。

当初はどこか真剣さにかけていて心配でしたが、今は何も心配はいりませんね。

さあ、私も頑張りましょう!


「次をお願いします!」

「了解!」



こうして、私たちは治療に励み、小一時間立つ頃には主な重傷者の治療が終わりました。


「ふひゃー。つかれたー」

「ええ。でも、よかったです」


私たちはそんなことを言いながら倉庫の前で座って夜風を楽しんでいました。

ここに来た時は、どうなるかと思っていて、全然自然を楽しむ余裕がありませんでしたが、今は一仕事を終えて満点の星空と夜の風を浴びて熱くなった体を冷やしています。

すると、ガサガサッと音がして……。


「随分、やり遂げたような顔をしているな」


そう言って茂みから田中さんがやってきました。


「ああ、やっほー。田中さん」

「どうも。そちらも上手くいったようですね」

「まあな。しかし、キシュアから報告を聞いて驚いたぞ。兵士と協力して、重傷者の治療を始めたってな。何が起こってそうなった」


田中さんは私たちの命令違反を咎めることもなく、ただ何が起こったかを聞いてきます。

それだけ驚いているのでしょう。


「僕たちも実際驚いたよねー」

「はい。驚きました。最初は裏切られたと思いましたし。まさか、重傷者の方が兵士の方を呼ぶとは思いませんでした」

「どういうことだ? 普通は黙ってるんじゃないか?」


普通はそうでしょう。

でも、ここでは違いました。

なぜなら……。


「タナカ。2人は疲れているんだ。詳しい話は私がするよ」


私が説明を始める前にノールタルさんがやってきました。


「あれ? 姉さん、もういいの?」

「ああ、一旦治療は終わったからね。みんな休憩だよ。で、話の続きだ。ここにいる連中、兵士たちは爪弾きものだったんだよ」

「つまり、デキラに反発した者たちだったのです」


そう、ここの兵士たちもデキラによる被害者だったのです。

彼らはデキラに反発した結果、このような仕事を回され……。


「あー……。しかし、昼の鞭を打ってたやつは?」

「あれは、日中にだけ来るエリートだってさ。残っている兵士たちは、少ない物資や魔力で必死に怪我人の治療をしていたんだってさ。で、夜には……」


亡くなった人々の処理を任されていたと。

……ここがこの世の地獄だと思いました。

人はここまで残酷になれるモノかと。


「そうか」


田中さんも続きを聞かなくても察したのか、タバコを取り出して、一服し始めます。

ですが、ですが、それで終わりではありませんでした。


「でもね。それでも、みんな生きていた。いや、死んじゃった人はいたけどさ、でも……」

「はい。光さんの言う通りです。それでも、生き抜いている人がいました。たとえすぐ目の前に死が迫っていても、生きようとする人たちが沢山いました。だから、立ち止まることはありませんでした」


そう、だから、私と光さんは惜しみなく力を貸しました。

それが間違いかもしれないということを考えつつも、それでも、助けたいと思いました。


「あー、勝手に動いたのはごめんなさい。でもさ、僕たちって勇者じゃん?」

「ええ。残念ながら勇者という肩書を持っていますので、助けを求める声を無視できませんでした」


と、2人で開き直りました。

怒られるのは当然のこと。ですが、それに後悔だけはないと言っておきたかったのです。

ですが、田中さんはそのままタバコをふかしつつ……。


「そういえば、リテアで子供たちを助けた時もこんな感じだったか?」

「あー、そういえばそうだね。みんな元気かな」

「懐かしいですね。あの時はつい熱くなってしまいましたね」


光さんの言うようにミコットたちは元気にしているでしょうか?

この仕事が終われば一度様子を見に行きたいですね。

その時にはきっと平和になっているでしょうから。

って、違います!? 私たちは覚悟を決めて田中さんに決意を言ったはずですなのに……。


「えーと、命令違反だけど怒らないの?」

「はい。私たちは指示を無視しました」

「別に2人とも軍人ってわけでもないからな。ま、どうごまかすかは大変だが、ここの連中の協力は得られそうなんだろう?」


うっ、それは……、正直忘れていました。

だけど、今から話せばといおうとしたら、なぜか光さん自信満々で口を開き……。


「そりゃもちろん。ねえ、姉さん」

「ああ、話もすでに通してあるよ。全員その時は協力してくれるってさ」

「みんな。死にたくないし、ヒカリとナデシコの力になりたいと思っている」


よかった、私たちが医療行為をしている間にノールタルさんやセイールさんたちはちゃんと目的を忘れずに行動していてくれたんですね。

そして光さんがそれを頼んでいたと。

お馬鹿だと思っていてごめんなさい。


「そうか、ならノールタル。まずこの場にいる中で一番偉い兵士を連れてきてくれ。昼にやってくるデキラ派の兵士たちへの対処を相談したい。その間に、大和君たちは治療した連中の様子を見ててくれ。今更病状が悪化して死なれても面倒だからな」

「「「はい」」」


そして、こんな予想もしていなかった状況でも即座に次の行動を指示する田中さんはやはりすごいと思ってしまいます。

さあ、休憩は終わりです。

朝まであとどれだけ時間があるかはわかりませんが、ここで敵に見つかってしまうわけにはいかないのです!



ということで、私たちは怪我人が押し込まれている倉庫の方に戻ります。

田中さんの言う病状が悪化している人もいるかもしれませんから。

しかし、私たちが戻った途端……。


「あ! 姉ちゃん!! ありがとな! うちの母ちゃんが助かった!」

「本当にありがとうございます。このまま死んでしまうかと!」

「おねーちゃんたち、ありがとー!」


そんなお礼の言葉と共に、元気になった皆さんが集まってきます。

元気になって何よりなんですが、ここまでいっぺんに来られると。


「うぉっ!?」

「ちょ、ちょっと皆さん!?」


潰されてしまいます!?

ここまで人が集まるとすごい圧力です。

あれですか!? 芸能人さんたちはこんな感じだったのでしょうか!?


「待ってくれみんな!! 聖女様たちは、けが人の様子を見に来たんだ、お礼を言いたいのは分かるが、まずは協力してくれ! ほかにだれか具合の悪いモノはいないか!」


一緒に付いて来てくれた兵士さんがそう言うと、すぐに皆さんはその場から離れて、自分たちに与えられている、血が染みついた床へと座り込みます。


「「「……」」」

「いないか? 具合の悪いモノは? 本当に大丈夫か?」


兵士さんが再びそう問いかけますが、特に反応はありません。

皆さんこちらをじっと見ているだけです。

そして、ある女の子が口を開きます。


「ねえ。せいじょさまは私たちを治しててつかれてない? ここ使う?」


そう言って、自分が座っている場所を開けようとするのですが……。

そこにはやはり、何もなく冷たい床が広がっているだけ。


「あー、大丈夫だよ。というか、はい。これ使いな」

「え?」


そう言って、光さんはタオルを渡します。

本当にただのタオルです。

ですが、この場において少しでも体を覆えるものがあるというのは……。


「ありがとうおねえちゃん! ……でも、ほかのみんなが寒いからいいや」


笑顔があふれるほど嬉しいことのようですが、遠慮してしまいます。

とても優しい子なのでしょう。

心がほっこりと満たされるとともに……あーもう、これで何度目でしょうか。

デキラへの怒りの気持ちで胸がいっぱいになります。

……覚悟しなさい。私は勇者としてではなく、一人の人として、あなたを許すことは決してありませんわ。


「ともかく、皆さんもう少し待ってください。物資をすぐに運び入れますから」

「え? どうやって?」

「光さん、私たちには田中さんがいるんですよ?」

「ああ!! そっか!」


物資に関しては何も問題ありません。

田中さんのスキルでこの程度の数なら物資を提供できます。

まあ、説得はしないといけませんが。

……それについては作戦があります。


「ということで、荷物が持てる方はついてきてください」

「「「はい!!」」」


こうして、荷物を持てる人たちを連れて……。



「……いったいどうした?」


話合いをしている田中さんのところへやってきました。


「物資が足りません。食事も、服も、寝具も、衣料品も、出していただけませんか?」

「お願い、田中さん! このとーり!!」

「「「……」」」


作戦というには、単純ですが、物資があることを期待している人々を連れてお願いに行く。

それが私にできる最大の作戦です。


「……あー、くそっ。ここで断るわけもいかないか。ただし、昼間の動きはきっちり言うことを聞いてもらうからな。ここに来て、作戦失敗とか笑えないからな」

「わかっています」

「うんうん! それは分かっているって、ねえみんな?」

「「「コクコク」」」


流石に、ここにいる人たちだけで、デキラが率いる城を根城にする好戦派を倒せるとは思っていません。

お昼の間はなんとか、デキラ派の人たちをごまかすしかないのは分かっています。


「……よし!! なら物資を出すから持っていけ。幸いデキラ派の連中は倉庫の中は見ないって話だからな」

「え? どういうこと?」

「兵士たちの話を聞く限り、貧民区の連中が住む倉庫なんかに踏み入れたくないそうだとよ」


……本当に、デキラといい、好戦派の人たちは私の神経を逆なですることが得意なようですね。


「おい、怒りに震える前に、物資運べよ。出したぞ」


その言葉に我に返ると、目の前には綺麗に分類わけされた物資が山積みにされていました。


「おお!! 話が早いね、よーしみんな運ぶよ!」

「「「おー!!」」」


こうして、私たちの交渉は大成功ではあったのですが、明日以降の作戦も立てなければいけないのは変わりません。

油断なく進めていきましょう。



事実は小説よりも奇なり


まあ、実際こういうことは歴史の中ではある。

邪魔者を兵士をまとめて固めているおかげで謀反が起こるっていうのはあるあるです。


こうして、撫子たちは貧民区のメンバーの協力を得られて、後は、一般層をどう取り込むかということが問題になってきます。


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