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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


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第213射:次の戦いに備える

次の戦いに備える



Side:ヒカリ・アールス・ルクセン



『ヒカリ様。戦闘があったと、セイールから聞きました。大丈夫なのですか?』

「あ、うん。無事に生き残ったよ。敵は壊滅」

『……はい? し、しかし、まだ開戦してから3日と経っていませんが?』

「詳しくは2日と半日ぐらいかな」


僕は今、部屋で休憩しながら、メルと話をしている。

アスタリ防衛戦の時はセイールにメルの誘導は任せていたから、メルはこちらの状況をしらないんだよね。

正直無事とか言っているけど、戦闘が終わって1日ぐらいは食事とかもできないぐらい衰弱していた。

田中さんが見かねて、回復魔術を自分にかけろって言われて、かけて何とか持ち直した。

メンタルも回復してくれるなんてすごいよね、魔術。


『いったい何が起こって、そんな短時間の間に戦争が終わったのでしょうか? 失礼ですが、ヒカリ様たちが戦力差で負けたというのであれば、まだわかるのですが……。敵が壊滅したというのは……』

「あー、なんて言ったらいいのかなー」


ま、普通に考えれば、5千対2万で5千側が相手を壊滅、全滅させるようなことはまずないよね。

僕もできるとは思ってなかったもん。

でも実際田中さんが現代兵器を使って全滅させたんだけど、言って理解できるわけもないし……。

あ、そうか、別に素直に説明する理由もないか。


「ま、大まかにいうと、田中さんの作戦が当たって敵本陣をぶっ潰せたから、敵は逃げていったんだよ」

『敵の本陣をですか……。そんなことが可能なのですね』

「そうそう。細かいことは難しいからわかんないけど。おかげで今はみんな後片付け中。僕たちも魔術を多少使って疲れているから、休んでいるって感じかな」

『なるほど。しかし、私は防衛戦に間に合いませんでしたね』

「別に気にすることじゃないよ。メルだってこの一週間とそこらで森を抜けたじゃん」


そう、メルはたった一週間と数日で大森林を抜けて、只今、こちらに向かっているんだ。


『それは、私たち魔族は森を抜けるのは慣れていますし、メイドの私たちはそういう戦闘訓練も受けていますので。この程度は容易です。しかも準備はヒカリ様たちに完全に整えていただいていますし、荷物もありませんでしたから』


ま、確かに、旅の荷物は持ち歩かなくていいし、動きやすいのもあっただろうねー。

というか、こっちの世界のメイドさんはヨフィアさんやカチュアさんといい、戦えて当然なんだね。

恐ろしいね、異世界のメイドさんは!

いや、まてよ、意外と地球のメイドさんも戦っているイメージあるかな? 漫画とかで。

と、そんなことはいいとして……。


「そういえば、今メルはどこにいるの? 迎えに行く余裕はありそうだよ」


予定していた敵の先発隊との戦いは思いのほか短時間というか、あっという間に終わってしまったから、それぐらい余裕がある。


『はい、誘導のおかげで、リテアとルーメルの国境近くに出ていますので、意外と近そうです』

「いやー、結構時間かかると思うよ。馬車でルーメル王都からリテア王都まで一か月近く移動したし」


国境近くなら半分くらいだろうけど、それでも2週間3週間はかかる。

となると、僕たちが迎えに行くのは厳しいか。

ゴードルのおっちゃんが紛れ込んでいる、敵の本隊が到着するのがだいたい一か月っていってるから、往復でやっぱりギリギリだなぁ。


『大丈夫です。風の魔術で移動速度は馬並みですから』

「あ、そういえばそうだっけ。それなら間に合うかな? あ、でも、そういえば、国境にはルーメルに入れないようにするために配備されているのがいるんだった」


そう、これがルーメルが孤立した原因だ。

デキラのやつが情報封鎖のためにそんな嫌がらせをしてたんだった。

それをメル1人で抜けるのは厳しい。


『確かに、戦力が固まっている道なら厳しいでしょう。ですが、迂回して町に寄らない草原を進めば見つからないかと』

「うーん。確かに、草の影に隠れて行けば、行けるとは思うけど、大森林側はきっと魔族と魔物がいるし、それしかないよね……」


でも、不安だ。メルは一人だし、草原側に魔族がいないとも限らないし、魔物だっている。

そんな感じでどうしたものかと悩んでいると……。


「こっちから迎えに行けばいい」

「え? って田中さん」


田中さんがそう言ってきた。

というか……。


「このアスタリを離れていいの? 本隊が来るんじゃないの?」

「それまでに戻ればいい。時間には間に合うだろう。車を出せばいいだけだしな」

「あ。そう言えばそんなことできたね」


馬いらずの便利な乗り物。


「この緊急時に出し惜しみする意味はないからな」


今までは、周りの反応を窺って出さないでいたけど、戦車を出した今ならもう隠す必要はないのか。


「よし! それならさっそく出発だ!!」

『えーと、私を迎えに来てくれるという話はわかるのですが、私一人に構っている余裕はないのでは? ヒカリ様たちはアスタリ防衛の要のはず』

「いや、状況が変化して、メルの命が最優先になった」

「『は?』」


どういうこと?

アスタリの町を防衛しないと、ルーメル王都に敵が流れ込むんだけど?

田中さん馬鹿になっちゃった?


「ま、難しい話じゃない。リリアーナ女王の所在が判明した」

「え? 見つかったの!?」

『陛下は今まで行方不明だったのですか!?』


あ、まずい。

メルにはそのこと言ってなかったんだっけ?

つい、というか田中さんがばらしちゃったじゃん!?

そう言う非難の意味を込めて田中さんに視線を向ける。


「別に驚くことでもないだろう。予定外のことで、別ルートを選んだんだ。ま、流石は魔王ってところだな。ロシュール方面に逃げて、ダンジョンのウィードにたどり着いたようだ」

「ウィード? ああ、あの噂の?」

『どういうことでしょうか? ダンジョンに陛下は亡命されたのですか?』

「詳しい話はあとでする。今は簡単にいうと、リリアーナ女王にメルの無事を知らせる必要があるからだ。まあ、無視して話を進めてもいいが、メルがいるのといないのでは、俺たちも気まずいからな。というか仕事で引き受けたんだ。余裕があるなら動く。それだけだ」

『なるほど。そういうことならわかります』


そうだね。頼まれて余裕があるんだから、迎えに行くのは当然だよね。


「で、余裕がある理由だが、リリアーナ女王はウィードでルーメルの事、デキラの事で協力を求めて、連合を作るように動いているとグランドマスターから連絡があった」

「え!? それ本当!!」

「本当だ。だから、勝利する可能性は格段に上がった。ロシュール方面から、ルーメルを除いた3大国の大連合が進軍、こっちはルーメルで敵の本隊を抑える。という話だ」

「え、でもそれじゃ、魔族の人たちが……」


人に奴隷にされるんじゃ……。

と、僕が思っていると、そのことは予想していたようで。


「そこは上手くやるそうだ。デキラたち好戦派を邪悪な魔王として、ほかの魔族は虐げられてたということにするらしい。幸い、聖女エルジュは和平派の魔族の手によって助けられていたらしくてな。って、結局詳しく話しているな。それもあって、俺たちはアスタリの町から出てメルを迎えにいくわけだ。ここでメルに死なれてルーメルや俺たちに不信感を持たれても困るからな」

『陛下はそのような逆恨みをするような方ではありません』


そうメルさんは力強く言う。

まあ、あの女王様が、言い方が悪いけどメルさんを守れなかったことで、僕たちを恨むような人には見えなかったね。

そして、デキラが邪悪な魔王なのは間違いない。

変態だからね。


「なら、お前さんを助けた方が心証がよくなるな。義理堅いってことだ。ま、それに今後の魔族との交流が始まるうえで、魔族を勇者が助けたという事実は、各国的に魔族との友好を推し進める上で必要って判断されてな。グランドマスターがリリアーナ女王から聞いた方針だ」

「あー、なるほど」


そういうことを色々やって、魔族との交流のために準備するのか。


『陛下は、未だにあきらめていなかったのですね』

「みたいだな。後はどうやって各国を説得するかだが、それが出来なければ、ラスト国は蹂躙される。今までの恨みはあるからな」

「ちょ、田中さん。そんなことわざわざ言わなくても……」

『……なるほど、そんなときのためにも、私が合流する必要があるわけですか』


僕が注意しようと思ったんだけど、なぜか勝手にメルが納得した。


「そういうこと。まだ連合が乱暴狼藉をしないという保証がない。だから、敵本隊をさっさと撃破したら、ゴードルに和平派をまとめてもらって、俺たちが先にラスト国に乗り込む予定だな。まあ、流石にデキラを捕縛するか倒すのはリリアーナ女王の役目で、俺たちは軍のバカが暴走しないのかを確認することだな」

「え? 僕たちでデキラを倒さないの?」

「敵の本隊を相手にして、その間に連合が本国を落とすって筋書きだからな。ある意味横取りとも取れる作戦だからな。ここで俺たちが本隊を蹴散らして、本国を連合が到着する前に落とすと、ルーメルが文句を言うだろうな。連合に魔族領は渡さないってな。しかし、この連合の目的は、ルーメルの援軍に回るより、魔族の本国に攻めた方が、敵本隊が動揺するだろうって、助けになるって意味合いがあるんだけどな」

「あー……」


ありそう。

というか、絶対そういう文句を言うね。

ルーメルを守るためにとった行動とか言ってもあの宰相とか聞く耳持たないね。


「ついでに、俺たちだけで、ラスト王国まで進軍するのもきついからな。アスタリの冒険者と兵士だけじゃな。かといって、ルーメルの援軍を連れて行くのも問題だ。となると、本当に俺たちだけでラスト王国に居座るデキラたちの排除をしないといけない」


それはキツイ。

僕たちって言うとせいぜい10人とちょっと。

その人数だけで、ラスト王国に乗り込んで制圧は無理。

というか、その後連合の人たちが来た時になんて説明していいのかもわからない。

だからこっそり行って、連合にお城の攻めとかは任せるわけか。


「俺たちは先に乗り込めれば、レジスタンスでも集めて、連合軍との協調性を高めるとかいう支援だな」

『なるほど。そういうことならお任せください。デキラに不満を持つ者たちならいくらでも心当たりがあります』

「たすかる。ということで、迎えに行くから、今は待機していてくれ」

『わかりました』


ということで、僕たちは一旦アスタリを離れて、メルを迎えに行くことになったのでした。





こうして表の歴史は紡がれていくのです。

裏は色々ドロドロしたものがあったんだけど。

世の中ってこういうもんだよね。


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