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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま
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第198射:焦燥と連絡

焦燥と連絡



Side:タダノリ・タナカ



いや、あの変態はできる変態だったな。

まさか、俺が潰すのを手伝った暗殺ギルドの連中と手を組んでいたとは思わなかった。

まあ、よくよく考えればあり得る話だ。

ルーメルでの活動拠点が潰されて、ギルドもそれなりのダメージがあっただろう。

ルーメルで抑えた資料はルーメル国内だけに留まるモノではなかっただろうし、おそらくガルツ、リテア、ロシュールの暗殺ギルドから恨みを買っているのはむしろ自然なことだ。

そこに、デキラのルーメル潰しが加われば、喜んで暗殺ギルドは手を貸すだろう。


不幸中の幸いなのが、俺たち勇者ではなく、国を潰そうとしていることだ。

これで俺たちだけを狙うものだったら、休む暇なく敵が来ている可能性もあったからな。

俺がやったことに関しては特に知られていないってわけだ。

まあ、ルーメルにとっては大迷惑だが。


『どうした? 何かウォールで分かったか?』


お、ようやくクォレンが出た。

他のメンバーはまだ呼び出し中か。

まあそれも仕方がない。

皆、重要な立場だからな、簡単に俺たちの連絡を受け取れないだろうと予測はしていたからな。

と、そこはいいとして、クォレンとの話だな。


「わかったぞ。そっちの違和感の正体もな」

『そうか、で、何が違ったんだ?』

「簡単にいうと情報封鎖だ。デキラ率いる強硬派の部隊がルーメルへ向かうガルツの人たちを襲撃していた」

『だからか、全然向こうのギルドとこちらのギルドの緊張感が違ったのは』

「だろうな。面白いぐらいだぞ、ダルゼンの町では戦争がどうなるかわからない、と不安になっている民衆と、ウォールの町では魔族許すまじ、聖女の仇を。って感じだからな」

『しかし、情報封鎖とは、もうすぐこちらに仕掛けてくるってことか?』

「それはいまリリアーナ女王や、ゴードルに確認を取ってもらっているところだ」

『確認って、もうこの状況で手をこまねいていては……』

「下手に動けばそれこそ危険だ、敵がどの程度手を伸ばしているのかを確認する必要がある。逃げたと思って、そこが敵のど真ん中とか笑えないだろう?」

『……それはそうだが。ここで周りを固められてしまうのではないか?』


クォレンの心配することもわからんでもないが、やみくもに逃げてもどうにもならんのも事実だ。


「固められてもいい。まずは生き残ることだな。そうすれば何とかなる」


亡命という手段は、リリアーナ女王にとっては屈辱だろうが、生きていればなんとかなる。

亡命して復帰したという話は地球でもごまんとあるしな。


『行方不明の四天王が戻ってくればな……。まて、まさか』

「……この状況で四天王が行方不明なのが偶然って思うほうが頭悪いだろう」


ここまで戻ってこない四天王のことを考えると、既に始末されている可能性が高い。

もうあてにできないってことだ。


「今リリアーナ女王に連絡を取っているところだが、基本夜にしかあっちはフリーじゃないからな。なかなかでない」

『そりゃ、そうだろうな。で、どうするつもりだ? 女王陛下になんて言うつもりだ?』

「まずはこっちの出来事を伝えるだけだ。まあドローンで支援はできるが、それを有効に使えなきゃ意味がないからな。一番のパターンはデキラをさっさと抑えて鎮圧することだな。もう四天王は待てないってことは理解するだろうしな」

『それが出来なければ?』

「そりゃ、逃げるしかない。ドローンの方で、ラスト国の監視を使って逃亡ルートは確認しているから、逃げるにしても案内はできる」

『……あの女王が逃げろと言って逃げると思うか?』

「しらん。俺は忠告をするだけだ。どうするかは現場の人間の判断するところだな」


死亡したら死亡したで、こっちとしては普通に魔族を殲滅するって方向で楽なんだよな。

デキラが反対派は粛清するだろうしな。

残っているのは敵ってことだ。

敵を殲滅したあとは、俺たちが解放した国にノールタルたちを戻せばいい。

本人たちにとってはあれだろうがな。

とはいえ、何もしないってわけじゃない。

リリアーナ女王やゴードルがあっさり死んでしまえば、魔族の動きを正確に知ることが出来なくなるからな。

利害が一致している限りは利用させてもらう。


「あ、魔族の方は連絡が取れてからだが、グランドマスターの爺さんに連絡を取って、リテアからルーメルの情報封鎖がないか調べる。クォレンも、ルーメルからリテア方面の流れを調べてみてくれ。偶然っていう可能性も捨てきれん。案外、勇者たちを狙った第二弾って可能性もあるからな」

『……アキラ君たちには悪いがそっちのほうが状況的に良かったかもな。ともかく、話はわかった、こちらもすぐに調べてみる』

「頼む」


さて、クォレンとの話は終わった。

他は一体どうなっているか……。


「どうだそっちは?」

「リリアーナ女王にはつながりません。とはいえ、ドローンから見る限りは執務室で仕事をしていますので今のところ問題はないかと」

「ゴードルのおっちゃんも、畑仕事に出ていて出ないよ……」

「ま、そりゃそうだな」


予想した通り、日中は忙しいか。

とはいえ、逆に考えればデキラはまだ動きを見せていないということになる。

デキラの情報封鎖はまだ完全に終わっていないとみるべきか?


「ノールタルたちの方はどうだ? ドローンで見る限りの動きは?」

「いや、デキラもまだ城にいるし、ルーメル側の砦にも動きはないね」


やはり、そちらのほうでは動きはないか。

……タイミングを待っているのか?

しかし、どんなタイミングだ?

四天王に手を回しているなら、戦力的には有利なはずだが……。

ま、今考えても仕方はないか。


「とりあえず、大和君とルクセン君はそのまま2人を監視しつつ、連絡が取れそうならタブレットでの会話を試みてくれ。ああ、気付かせようとして、無理にドローンを近づけたりはするなよ」

「わかっていますわ」

「うん。わかっているよ」


とりあえず、魔族側はおそらく夜だな。

あとは……。


「田中さん! グランドマスターの方に連絡がつきました!」


結城君の方は連絡が付いたようだな。


「よし、代わる」


そう言って、タブレットを預かるとそこにはグランドマスターの爺さんの顔がある。


『一体日中になんじゃ? ガルツの方で緊急事態でもあったか?』

「ガルツというか、ルーメル側だな。魔族からの情報封鎖がされていた。しかも、暗殺ギルドも絡んでだ。そっちの方はどうだ?」


俺がそう端的に説明すると、爺さんはそこまで驚いた様子もなく、難しい顔で……。


『あ奴らも絡んできたか、ルーメルは色々恨まれてしまったか。しかし情報封鎖か。そう言われるとそんな感じもあったのう」

「あったのか」

『ほれ、リテアに接する大森林から魔物が大量に出てきた話があったじゃろう?』

「あったな。というか、その原因を調べるために駆り出されたほうだからな」


おかげで、オーヴィクたちが瀕死の重傷を負って、結城君たちは現実を改めて実感し、ルクセン君がその現実を上回る治療技術の習得に成功した。

結局いいことなのか、悪いことなのかはさっぱりだったな。


「だけど、あの話が情報封鎖に繋がっていたのか?」

『全体的な魔物の出没地域じゃが、大森林から国境という出現地域になっておるのう。そもそも、この魔物騒ぎで危険な外に出る連中は減っておるからのう』

「ああ、そういうことか」

『しかも、ルルア殿が無事に戻ってきたのはいいが、そのあとはロシュールのダンジョンの騒動じゃ。外に兵を向けている暇はないときたものじゃ。そんな中で冒険者ギルドだけで動く利点はないのう』

「世界平和のために働けよ」

『まだ起こるかも怪しいことに動かせんわ。というか、タナカ殿がいうか、タナカ殿が』

「いや、実際戦争を止めるために動いているしな。異世界の人間で」


まあ、俺は結城君たちの意思ってのがあるからな。

俺が率先して戦争を止めようとしているわけではない。

だが、組織上は戦争を止める動きをしているから、戦争を止めるために動いているのは間違いない。


『……妙な状況もあったもんじゃな』

「ま、帰る方法も探らないといけないしな」

『各国の協力が必要不可欠か』

「だな。どこにそういう情報が眠っているのかもわかっていないからな。で、あの魔物騒ぎが情報封鎖の一環で、それは見事に成功しているって感じか」

『うむ。ルルア殿が持って帰った案件や、反対派の処理で国内の軍は今は身動きがとれん』

「そりゃそうだろうな」


国のトップが揉めているんだからな。ただの治安維持活動ならともかく、大森林から出てきた魔物の群れをどうにかするのは、国家事業となるから勝手には動けない。

予算や物資もかなり必要なことだからな。

で、そういう意味で見事に足止めを喰らっているわけか。

そして、冒険者ギルドの方も近づかなければ被害はないのだし、依頼もないのに、危険を冒して魔物を排除する理由もないか。


「しかし、そうなると、リテアからの支援は期待できそうにないな」

『……ルーメルへの軍隊派遣はかなり時間がかかるじゃろうな』

「ガルツとロシュールは和解交渉で忙しい。リテアも事後処理で忙しい。実質的に、ルーメルはいま孤立無援ってことか」

『そうなるな。となると、やはり動くか?』

「ここまで、状況が整うとな。情報封鎖だってそこまで長く続く訳もない。たまたま、戦争が起こったり、聖女様たちの暗殺未遂が起こったからできているだけだ。ここで動かないなら、デキラは後がない」

『逆に動くなら、最大の成果か』

「ああ、こっちはこれを乗り切れば、各国で連携をとるとまではいかなくても、情報封鎖も解ける。そうなれば、魔族は四方八方から攻められることになる。それは普通は避けたいだろうからな」


俺が急いで連絡を取ろうとしているのはこれが理由だ。

今が、デキラが動くには一番いい時期なんだ。


『で、肝心のリリアーナ女王やゴードル殿との連絡は?』

「あっちとはまだ連絡は取れていない。恐らく夜になるだろうな」

『ふむ。そうなると、間に合わない可能性もでてくるのう。で、その時はどうするんじゃ?』

「現場に俺たちはいないからな。ドローンでの撤退支援ぐらいしかできん。おそらく、ルーメル以外の方面に逃がすことになるな」

『まあ、攻め込むならルーメルじゃからのう。そっちに逃げてもつかまるだけか。しかしのう、何処の国に逃すつもりじゃ? どこも友好的とは思えんぞ?』

「別に堂々と魔族ですって名乗る必要もないだろう。まあ、可能性としては、グランドマスターの爺さんがいるリテアが第一候補だな。保護を頼めるからな」

『ふむ。その時は任されよう。だが、無事に出られるかのう? あの女王が国をほったらかして逃げるような人物には見えなかったが』

「クォレンにも言ったが、その時はその時だ。俺たちは俺たちのできることするだけだ。まあ、死んだ方がこっち、じゃないな、俺個人としてはあまり配慮しなくてよくなるから楽でいい」

『……人でなしじゃのう』

「ここまで状況がわかっていて動けない組織よりはマシかもな」


という感じで、グランドマスターの爺さんとの会話は終わる。

これで、リリアーナ女王の逃亡先は一つ確保できたわけだな。


さて、あとはリリアーナ女王とゴードルとの話し合いだな。





デキラはやはりできる変態だった!

あれだね、真面目過ぎる奴ほどこじらせると大変ってやつだね!!


とはいえ、これでリリアーナ女王とルーメルがピンチと気が付く。

タナカたちは対応できるのか?



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