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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


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第193射:情報を集めに

情報を集めに



side:アキラ・ユウキ



「おー、すごいねー。馬車が4台もあるよー。って、あれ? 4台は多すぎじゃない? というか、2台はこんもり何か乗ってるし」


そう言って目の前の馬車をぐるぐると眺めているのは光だ。

これからの旅が楽しみだーって感じだよな。

まあ、俺もそうだけど、でも、この荷物は確かに不思議だよな。


「田中さん。この荷物なんですか? 俺たちはアイテムバッグで持ち運びはできますけど?」


実際、ノールタルさんたちの荷物は俺たちが預かっている。

いまさら、馬車に荷物を山ほど積む理由はないはずなんだけど……。


「ん? ああ、一応偽装だな。この前はルーメル王都からの手形を発行されて移動を許可してもらっていたが、今回はルーメル王都に戻るつもりは無いからな。今回は商人としていくわけだ。それはわかりやすい商品」

「あー、なるほど」

「商人ですか。それなら確かに情報を集めるのには一番良いかもしれませんね。多くの人と会う職業ですから」


撫子の言ったことで、商人として行く本当の意味を理解した。

ただガルツに向かう為だけの変装かとおもったら、情報を聞き出す意味もあったのか。


「クォレンの言ったことが気になったからな」

「あー、確かクォレンさんがなんか違和感を感じるって話だっけ?」


そういえば、クォレンさんは別れるときに妙に悩んでいる顔をしていたよな。

違和感か、俺も注意しておこう。

と、そんなことを考えていると、背中を叩かれる。


「まあまあ、難しいことはいいじゃないかい。まずは私たちの服装に感想をいうべきだと思うよ。さ、男性諸君」

「ですわね。まさか女性に恥をかかせるおつもりでしょうか? ねえ、光さん」

「へ? あ、そうそう。選んできた服なんだから、ちゃんと褒めてよね」


光、お前絶対忘れてたよな。

でも、そんなことを言えば怒られるし、改めてノールタルさんたちを見る。

うん、魔族のみんなは普通にすごくかわいい。

あれか、リリアーナ女王といい、おっぱいの大きい四天王レーイアさんといい、魔族の女性は美人が多いって奴か。

日本で言うなら京都美人みたいな?


「おう、その格好なら、特に普通の人と変わらないな」

「ですな。魔族とばれるような外的要素は1つもないです」

「「「……」」」


俺が答える前に、田中さんとリカルドさんが感想を言うんだけど、やっぱりというか、まあ、望んだ回答じゃなかったみたいで、沈黙するノールタルさんたち。

田中さんたちにそう言う回答を求めるはどうかなーとは思うんだけど、こうなると、俺しか残っていないし。


「えーと、凄く似合ってると思います。ノールタルさんも、セイールも、他の皆も。それぞれ特徴があっていいと思う」

「晃~。具体的に言ってほしいなー」

「ですね。晃さんは心を砕いてくれるのはわかりますが、田中さんとリカルドさんがちょっとあれですからね」


ちっ、二人のせいでハードルが上がったじゃないか!?

そう思って二人に視線を送るが、特に気にした様子もなく、馬車の準備を始めている。

……だめだ。あの二人にこういう威嚇はさっぱり意味がない。


「さあ、アキラ。私たちのどこがどう特徴があって似合っているんだい?」

「……教えて?」


そして、ノールタルさんとセリールさんが代表で俺に詰め寄ってくる。


「え、えーと、ノールタルさんは動きやすそうなボーイッシュな感じでいいですね。スポーティです」

「すぽーてぃ?」


スポーツって単語が理解できないのか。

まあ、この世界に正々堂々と運動をするようなこともないしな。

と、逆にこれはチャンスか、意味が分からないなら、その類の言葉で褒めて行けばいいんだ!!

そのひらめきを頼りに、俺は魔族の皆さんが首を傾げるような単語を使ってとりあえず褒めることに成功した。


「……せこっ」

「相手に伝わらなければ意味がないんですよ。わかっていますか?」

「それでからかおうって魂胆が見え見えなんだよ」

「「ちっ」」


やっぱり、この2人は性格悪いよなー。


「ま、アキラが私たちを褒めてくれているってのはわかったからいいか」

「……うん。悪意は感じなかった。だからうれしい」

「「「コクコク」」」


ノールタルさんたちは素直に納得してくれるから、色々な意味で可愛いと思う。


「アキラさん。私はどうですか!!」

「ヨフィアさんも似合っていますよ。メイド服もよかったですけど、こういう一般の服も似合いますね。もちろんお姫様やカチュアさんもです」

「いやー、そうですかー、照れますねー。よかったですね、姫様、カチュア先輩」

「こういう服装も、時にはいい物ですね」

「姫様がそういうのであれば、何も問題はありません」


ヨフィアさんは平常通り、お姫様は意外と楽しんでいるようで何よりだ。

ここで平民の姿などできませんとか言われたらどうしようかと思ったけどそういうこともないようだ。

まあ、そんなことを言ったら田中さんが容赦なく放り出しそうだよな。

で、そんなやり取りをしていると……。


「よし、点検終わり。皆、乗り込め」

「「「はい」」」



そういうことで、俺たちはアスタリの町を離れて、ガルツを目指すことになった。

とはいえ、道のりは馬車の足だとゆっくりで、のんびりとした時間が過ぎていく。

タブレットの監視も今は落ち着いている。

一応、四天王の捜索も続けているんだけど、全然発見できずにいて、数カ所にドローンを固定して探すという方法に代わっている。

幾らでもドローンを出せるってことが分かったから、そう言う方法になった。

馬車の中でドローンの操作をしていると酔うからというのが一番の原因だけど。


「あ、そう言えばお姫様。ロシュールのセラリア王女に手紙送ったって言ってたけど、ガルツに移動してたら、返事を受けとれないんじゃない?」

「それは大丈夫です、ヒカリ様。アスタリのソアラギルド長に受け取ってもらうように言っていますから。そして届けばタブレットで連絡が来るようになっています」

「あーなるほど。その手があったか。便利だね」


本当に便利だよな、タブレットでの通信機能って、これがあればタイムラグなく情報が受け取れる。


「手紙で思い出しましたけど、田中さん。そういえば、リテアの方はどうなっているんですか?」

「ん? ああ、グランドマスターの爺さんからの情報によれば、今回の暗殺の首謀者とかはすでに、現聖女のアルシュテールがルルアから情報を聞いた時点で、証拠固めを行っていたらしい。戻ってきてからは、暗殺に関わった連中はしょっ引かれて、首になっているそうだ。ああ、物理的な首になってるほうな」

「……うへー。でも、当然なのかな」


光がその話を聞いて顔をしかめる。

まあ、首ってことはチョッパと落としているってことだよな。

日本で言う斬首。さらし首は……こっちでは見たことないんだけど。

どうなんだろうな? とはいえ、確認してみる勇気はない。


「ま、そうだな。自分を殺そうとした相手を生かしておく理由はないからな。前例を作ると殺人しても生き残れるんだと思うバカも出てくるだろう。しかも殺人、暗殺しようとしたのが、国家元首だ。厳罰に処さないと、面目がたたん」

「では、リテアの混乱はそこまで酷くないということでしょうか?」


ああ、撫子が言って気が付いたけど、そこまで用意周到にしていたなら、リテアの方はそこまで乱れないってことか。

まあ、そうだよな、実際聖女様は死んでいなかったんだし、悪い政治家たちがつかまったってことだしな。


「まあ、対外的には問題ない」

「え? 何その言い方。実は問題がありますよって感じになってない?」

「ああ、ルクセン君の言う通り、実はある問題が起こっている」

「というと?」


俺が先を促すと、田中さんは肩をすくめて話を始める。


「国が揺れるほどの問題じゃないんだが、元聖女ルルアの立場でもめているんだとよ」

「はぁ? 聖女様がもとに戻るんじゃないの?」

「流石に、はい元通りにしましょうとはいかなもんだ」

「この騒ぎの責任ということでしょうか?」

「それこそふざけた話じゃん!!」

「まあ、落ち着け、ルクセン君。責任と言ってはいるが、責任を取らされる話じゃない。今はすでに新しい聖女様がトップについているからな、また切り替えるというのはどうだという話だ」


なるほど、確かに、そう簡単にちょくちょく国のトップが代わるのは困るよな。

日本で言うと総選挙があるってことだよな。

そのために税金が使われるってことだし、そんなのはなー。と思っていると、光がまた怒った感じで口を開き……。


「ちょっとまったー! 無理やり聖女様をやめさせられたんだからもとに戻るのが当然じゃないの!!」

「まあ、そういう意見もあって揉めているんだよな。とはいえ、妖精族と交流を持ったということで妖精族との外交官についてもらう方が国益になるんじゃないかっていう感じだな。そもそも、聖女の座から追われた理由は、弟子であるロシュールの聖女が戦いを広げたってことからだしな」

「いや、それは魔族の……せいってことに……」


光もノールタルさんたちの前で魔族の責任ってのを強くは言えないみたいだ。

でも、状況から考えて魔族のせいじゃないってのはかなり可能性高いはずだ。

だから、聖女様が責任っていうのは……。

と、思っていると今度は撫子が難しい顔で口を開く。


「魔族の影が出てきたからこそ、聖女という座から降ろされてたというわけですか?」

「まあ、その可能性もあるだろうな。あの国では一番の回復魔術の使い手だ。案外自分で望んで聖女をやめたのかもな。これなら国の舵取りをしなくて済むし、弟子であるロシュールの王女の仇を討てるわけだ」

「……そんな敵討ちをするような人には見えなかったけど」

「いや、俺の勝手な想像だ。それに、暗殺されかけたという事実があるからには、それだけ不和を招いた国主だということになる。そんな周りとの調整ができない人物をトップにまた据えようとはなかなか思わないだろう?」

「そういうことも考えないといけないんですね」


確かに、周りと喧嘩ばっかりしている人を国のトップにするのは問題だよな。

また同じようなことが起こるかもしれないって不安はわかる。


「まあ、そんな色々な要因があって、内部はまだまとまっていないな。とはいえ、対外的には持ち直している。なにせ元聖女様は生きていたからな。隙は無いと思うだろう。魔族の方もな」

「あ、そっか。聖女様が生きているって情報がデキラにも伝わるんだ。これで、デキラがさらに動かなくなるってことか」

「そうだな。リリアーナ女王やゴードルの言う通りなら、警戒をするだろうな。となると、残るはガルツやロシュールってことになる。ロシュールの方はグランドマスターから情報を得ているし、ダンジョンが存在する。そこにはお姫さんが手紙を送ってくれた」

「だから、俺たちは、ガルツの様子をってことですね」

「そうだ。ガルツが戦争の影響でどうなっているのかで、またデキラの判断も変わってくるだろうしな。俺たちが動くことで何かが変わるかもしれないってのもあるが、内情がよくわかっていない国を調べるためでもある。まあ、とはいえドローンの監視と同じですぐに何かが分かるわけでもない。まずはのんびり行商として旅を楽しもう」


こうして俺たちはのんびりとガルツへと向かい馬車を進める。

こんなのんびりな時間が続けばいいのにな……。


「ほら、晃の番。ドローン監視」

「……わかったよ」


馬車の中でも辛い監視はかわらないか。



リテアはこれからで揉めているようで、魔族に攻めこむようなことはなさそうだね!!

安心してガルツに向かうことにした田中一行。


さて、ガルツはアレからどうなっているのか、そしてこの田中たちの動きからどう世界は動いていくのか。

それとも、また別の何かが動き出すのか!


それは、誰もわからない。

多分。



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