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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま
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第191射:現状維持からの変化を

現状維持からの変化を



Side:ナデシコ・ヤマト



『……ということでひとまずは目立った問題は起きておらんのう』

『それはよかったです。これ以上リテアに揺れてもらってはこちらとしても困りますから』

『んだ。デキラの奴も聖女暗殺の連絡はきたみたいで、そのおかげっていっちゃなんだが、おらと話すことを決めたみたいだべ』


そんな風に話し合いをしているのは、冒険者ギルドの統括と言われているグランドマスターの御爺様、人類の敵と言われている魔族の長である魔王であり女王リリアーナさん、そしてその部下である四天王と言われるゴードルさん。

そして最後は……。


「今のところはデキラの奴は様子見ってところか。ま、動くことがなくて何よりだな」


私たちを率いる田中さん。

この中で異質ではありますが、一番発言力を持っているのは田中さんです。

この繋がりも田中さんがいなければ無かったことですから。

そして、今は聖女ルルア様がリテアに戻ったということの報告で、夜に関係者が集まって全員で話し合いをしているところです。


『問題は、ロシュールのダンジョンですか……』

『ダンジョンが制御できたとか、初めてきいたべよ』

「なんだ、魔族の領地にもダンジョンがあるのか?」

『ありますよ。私たちにとっては貴重な物資を回収する場所になっています』

『まあ、町から離れているから、行き来は大変だべだがな。森じゃとれないものとかあるからいいだべよ』


なるほど、ダンジョンを利用して、足りないものを補っているのですね。

あの過酷な状況でたくましく生きている方法の一端が分かった気がします。


「と、話がずれたな。そのダンジョンをロシュールが所有することによってどう動くかわからなくなってきた。そこはグランドマスターのほうに監視や情報提供を頼んでいる」

『うむ。リリアーナ女王、そこはわしに任せてくだされ』

『はい。ご協力に感謝いたします』

『しかし、魔族の女王と聞いていろいろ想像しておったが、こんなに可愛らしいお嬢さんだとはおもいませんでしたな。いや、失礼でしたな』

『いえ。そう言っていただけて何よりです』


そう言ってリリアーナ女王は御爺様の言葉を流します。

実際、年齢的にも御爺様より年上ですけど。

と、そこはいいとして、これからどうするのかです。


「さて、これで一応各国の動きははっきりしたわけだ。あとは、俺たちがどう動くかだが……。個人的には、まだ動きを見せていないし、ルーメルにいる俺たちはまだしばらくは監視だな」

『わしのほうも情報が集まるのを待つばかりじゃな。リテア内部の方に関しては、わしからどうすることもできんから、何か要請があれば答えていく方向になると思うのう』

『私のほうも、デキラに対する戦力を水面下で集めるのが先ですね。まだ動くにも戦力が足りていません。まったく、四天王の2人はいったいどこにいっているのやら……』

『まあ、死んではいないだよ。あいつらと戦って騒ぎにならないのがおかしいべ』

『確かに、生きているというのが唯一の救いですね』

「四天王については、俺の方からも捜索を続けてみる」

『お願い致します』


ということで、会議の方は現状維持という感じで話は終わりました。


「ぶー、これからもまだ監視なの? いい加減飽きてたんだけど」

「光さん。監視も大事ですよ。とはいえ、気持ちもわからなくはないですけど」


アスタリの町に移動する以外は基本的に、ずっと監視の日々ですからね。

そろそろ気が滅入ってくるのもまた事実です。


「ま、そうだよな。俺もずっと家にこもってるから、なんか体が鈍ってる気がする」


それは、晃さんも同じようで、肩をぐるぐる回してほぐしています。

ずっと、同じ姿勢で監視はつらいですよね。

とはいえ、監視がとても大事なのは分かっています。

とりあえず、田中さんに軽く言ってみたつもりだったのですが……。


「……そうだな。いい加減休憩も必要か。監視する場所も限定的になってきたしな」

「「「え?」」」


意外な回答の前に固まってしまう私たち。

まさか、休んでいいよと言われるとは思わなかったのです。


「なんだ。俺を血も涙もない奴だと思っていた反応だな。同じことを繰り返すと、慣れと疲れからミスが多くなるのは俺も把握している。いままでは、目を離すわけにも行かない状況だったからな」

「じゃ、今はいいってこと? でも、まだ監視しないといけないところはあると思うけど?」


光さんの言う通り、まだまだ監視しないといけないところはあるはずです。

というか、血も涙もないとは思っていませんが、私たちのために全力を尽くして、心を鬼にして私たちを鍛えてくれる方です。

こういうところで手を抜くとは思っていませんでした。


「別にそういうところは……こうして、分割画面で監視してればいいしな」


そう言って、田中さんは分割画面で表示されているドローンたちがとらえている映像を見せてきました。


「……そんなことが出来たんですね」

「あ、言ってなかったか? ま、既に誰か個人を監視するっていうのはリテアの元聖女様とデキラぐらいだ。それに、デキラの方に聖女暗殺の報告が届いたってのは俺たちがこのアスタリの町にいるっていうことも向こうに伝わっているだろうな」

「それは、そうだよね……」

「となると、ここにずっといるのはどうなんだろうな。と思ったわけだ。もともと防衛のためにアスタリにいたが、今のデキラは意外と防衛重視というか思慮深いことがわかっている。だから……」

「逆に俺たちがここにいることがデキラに変な刺激を与えないかってことですか?」

「分かってきてるじゃないか。そういうことだ。一応、アスタリ前の大森林からの侵入はソアラやイーリスに厳重注意を払うように言ってはいるが、この前あった魔物の襲撃みたいに迂回されれば分からないからな」


確かに、田中さんの言う通りです。

私たちが警戒しているのは、あくまでも目の前の大森林からやってくるモノのみです。

前ならそれで情報封鎖が出来ていると思っていましたが、既にデキラにも聖女死亡の話が流れているということは、デキラの方にも色々なルートからの情報を仕入れる方法があるということです。

元々からそう言う予想ができていましたが、今回の事ではっきりしました。


「でもさ、どっかに行くって言ってもどこに?」

「それに、デキラが私たちを狙ってアスタリに攻め寄せないとも限りませんが?」

「まあな、ルクセン君、大和君の言うことも尤もなんだが、リリアーナ女王やゴードルの話を聞く限り、デキラの方もすぐに軍を起こせるような状況でもないからな。それに、進軍すると決まったとしても、明日明後日にアスタリに到着するわけでもない。こちらはリリアーナ女王やゴードルからの連絡を聞いて戻れば十分に間に合うだろう」

「わざとアスタリから出てみて、デキラの動きを見てみるってことですか? でも、どこに行ってみるんですか? ルーメル王都ですか?」

「いや、外に出るならガルツ方面だな。相手の動きを見るっていうなら遠方の方が相手も動きやすいだろう。ついでに、ガルツの今後の動きを把握するのにも丁度いい。ルーメルにはフクロウにクォレン、リテアにはグランドマスターの爺さん。ロシュールは流石に厳しいとして、それならってわけだ」


なるほど。

その理由なら、ガルツというのは納得できます。


「じゃ、アスタリはどうするの? というか、ノールタル姉さんとか置いてくの?」

「そうだね。そこは気になるところだね」


確かに、私たちがアスタリの町を離れるのはいいとして、アスタリの町との連絡や、ノールタルさんたちのことはどうするおつもりなんでしょうか?


「アスタリの方は別に心配いらないだろう。ソアラとイーリスに任せておけばいい。まあ、問題はノールタルたちだが、まずは本人たちの意思を聞いてからだな」

「ん? その言い方だと、私たちがついていきたいといえば、いいみたいだけど?」

「ああ、ノールタルは、初日からタフだからいいとして、セイールたちはどこまで体力が回復しているかってのが大事だな」

「なるほどね。私たちが魔族ってことは大丈夫なのかい?」

「別に、見た目があの四天王たちみたいに個性的ならともかく、ぱっと見た目は普通の人と変わらんから、心配はないと思うぞ? 姫さんはどう思う?」


そう言って田中さんはお姫様に視線を向けます。

私たちもそれに倣ってお姫様に視線を向けて返事を待ちます。

確かに問題は無いように見えますが、お姫様から見ると何か問題があるかもしれませんから。

それで視線を集めたお姫様は少し考えているようで……。


「……そうですね。ノールタルさんたちをこのアスタリに残していくのも危険です。あ、これはソアラギルド長や、イーリス副ギルド長を信じていないわけではないのですが、ここはあくまでもアスタリの町ですからね」

「ああ、ルーメルの王様とか宰相が手を出してくると大変ってことかー」

「……ええ。今の状況からすると、魔族に攻め入るために情報を集めていることでしょう。そういう状況でノールタルさんたちを残していくのは……」

「危険ですね。では、ガードにリカルドさんやキシュアさんを……」

「無理ですな。タナカ殿の命令でも、陛下の言葉には……」

「まあ、タナカ殿がいなければ、断っても無理ですね。その時は私は死んでノールタル殿たちはとらわれですね」


……リカルドさんのヘタレはともかく、キシュアさんはかなり現実的なことを言いますね。

田中さんがいないときに国相手に対抗するのはかなり難しいことです。


「となると、セイールさんたちの体調次第ってことですよねー」

「そうですね。付いてくる分については付き人として付いてくればいいだけですから」


ヨフィアさんとカチュアさんはノールタルさんたちが付いてくることには特に問題はなさそうです。

あとは、やはりセイールさんたちの体力次第ということですね。


「で、どうだ? 結局の所セイールたちの体調次第だが?」

「うーん、私としてはセイールたちは行けると思うんだけど……。どうだい?」

「はい。私たちもついていきます。大丈夫です」


ということで、これからの行動は決まりました。


「よし、予定が決まったのなら準備だな。女性陣はノールタルたちに目立たない服の調達をたのむ。男たちは食料や馬車の確保だ。人数が増えた分大変になるぞ。行動開始」

「「「はい!!」」」


こうして、私たちは旅の準備を始めるのでした。

ガルツ、何事もなければいいのですが。


こうして田中たちは魔族や各国が即座に動くことはないとみて、相手の動きを見るためにも、アスタリから旅立つことを決意。

その結果、一体何が起こるのか……。


それは誰もわからない。

なあ、読者諸君! さっぱりわからないよね!

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