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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま
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第177射:挫折と希望と未来と

挫折と希望と未来と



Side:ヒカリ・アールス・ルクセン



魔族の女王様と仲良くなれて、好戦派の変態デキラを退治できるかと思っていたのに……。


「……うまくいかないよねー」

「……そうですわね」


僕のその言葉に撫子も気落ちしたような声で答える。

晃には結構強気で言ったけど、僕たちも結構ショックを受けていたんだって改めて理解する。

これで、戦争がなくなるかと思っていたのに……。

聖女様が魔族に殺されちゃった。

あのデキラが仕組んだって話だ。

あのクソ女みたいなのを呼びだすとかいうよりも、確実な方法だよね。

あー、その可能性になんで気が付かなかったんだろう。

自分の想像力のなさにショックだよ。


「とはいえ、気が付いたところで何ができたって話なんだけどね」

「ええ。私たちでは立場がなく信用もありませんからね」

「「……」」


そんな感じで、自分たちの無力を感じながら、四天王探しをしているんだけど……。


「ヒカリ、ナデシコ、そんなに気にする必要はないよ」


と、言いながら、ノールタルが頭にポンと手を乗せてくる。


「君たちが本来背負うべきことじゃないからね。といっても、異世界に連れてこられて、やりたくもない勇者っていう立場を背負わされて、それでも私たちを助けてくれたんだ」

「それは、別に関係ないよ」

「ええ。そうです。いやいや勇者をやらされてとか、そういうのは関係ありませんわ」


そう、勇者とか、一般人だからとか、無理やりだとかは、何も関係ない。

ただ、困っているから、僕たちで助けられると思ったから。


「うん。君たちは優しいからね。きっと何も力がなくても私たちを助けてくれようとしただろうね。だけど、私たちも君たちを心配している。だから、君たちだけで悩むのはやめてくれ。私たちだって、君たちが心配だ。それはわかってくれ」


ノールタルがそういうと、セイールたちもうなずき……。


「ヒカリ、ナデシコむりはしないで。私たちも一緒に頑張るから」

「……」


そう言ってくれた。

それがなんだかとっても嬉しくて……。


ホロリ。


なんか頬に流れるような感覚があったと思ったら、ノールタルが抱きしめてくれて。


「タナカは男だからね。こういうのはできないか。お姫様もメイドも同じか、勇者に期待している。そんなんだと泣けないよね」

「あ、うん」


僕は抵抗することなく、そのまま頭を胸に抱き抱えられることにする。

なんか、涙がとまらないんだ。


「光さん……」

「大丈夫。ただ、ノールタルはお姉さんみたいで安心できるから……」

「そう言ってもらえると光栄だね。まあ、魔王っていう妹もいるけどね」

「あはは、それじゃ、ノールタルは勇者と魔王のお姉さんか」

「そうかもね。ま、頑張っているんだ。こういうときもあっていいさ。で、撫子もお姉さんの胸でなくかい?」

「今は遠慮しておきますわ。晃さんもいることですし」

「おっとそうだった」

「ありゃ」


ノールタル姉さんのお胸は小さく僕と親近感があってとても心地いいけど、流石に晃の前で泣いているのはだめだ。


「晃、見てた?」


とりあえず、わかってはいても聞いてみる。

デリカシーのある反応ができるかなー?


「ん? どうした?」

「「「……」」」


おいおい、どうやら、この超絶美少女である光ちゃんの涙どころか、泣いていることに気が付かなかったみたいだよ。


「いや、なんでもない。晃はヨフィアさん以外に好かれることはないってわかっただけ」

「ですわね」

「はい? いったいなんだ?」


晃が悪いってわけじゃない。

むしろファインプレイといっていいけど、僕としては不満だ。

あれだけ晃に気を使ってやったのにさ。

晃は鈍感だね。


「あはは、気にしなくていいよ。ちょっとデリケートになっているだけさ」

「はあ。そうですか」

「で、アキラとヨフィアの方は何か見つけたかい?」

「いえ、残念ですけど。まだ何も」

「見つけられませんねー。いったい四天王のお二人はどこに行ったんでしょうねー」


向こうも手掛かりは未だに無いみたいだ。

まあ、そう簡単に見つかるなら苦労はしないよね。

といっても、2人はリテアに行っているだけだもんね。

それで、あることに気が付いた。


「ガルツの方はロシュールとの戦争が終わるってことかな? ほら、ロシュールで魔族と手を組んだ大臣がいるとか言ってたし」

「その可能性は高いですわね。とはいえ、魔族を敵としてもらっても私たちは困るんですが」

「デキラたち好戦派だけを退治ってわけにはいかないよねー」

「まあ、そう都合のいいことはないだろうね。聖女様たちを殺したのはデキラたち好戦派じゃなくて、魔族って認識だしね」


ノールタル姉さんのいうとおり、魔族の責任って感じだからね。話して分かるようなら最初からこんなことにはなっていないか。


「うーん。あ、そうだ。お姫様的には今回のことはどう思っているの?」

「え? 私ですか?」

「そうそう。ルルア様じゃないもう一人の聖女様と知り合いみたいな感じだった気がするけど」

「そういえば、そのようなことを言っていましたわね。この聖女様の暗殺の件でお姫様はどう思っているのか? ルーメルはどう動くおつもりなのかとかわかりますか?」


撫子の言う通り、この件で動きを見せるのはガルツ、ロシュール、リテアだけじゃない。

僕たちを召喚したルーメルだって何かしら動きを見せるはずだよね。


「……正直に言いますが、国がどう動くかはわかりません。ですが、今までのお父様や宰相の態度を見るに、魔族を倒す方向になるかと」


ま、それはそうだよね。

魔族倒すべしって言ってるんだし。


「……このままではやはり戦争に……」

「姫様。気をしっかり。まだ終わったわけではありません。幸い、タナカ殿がアスタリの町の防衛強化をしておりますし、たとえ戦争になってもこちらに向かってくるのは、好戦派の変態でございます」

「カチュア殿の言う通りです。あの変態とその仲間だけを倒すチャンスともいえるでしょう」

「……なるほど。そう言う考え方もあるのですね。流石キシュアです」

「いえ。厳しい状況なのは間違いありません。それはお忘れなく。ですが、あきらめることはないということです。タナカ殿が常にそうしろと言っておりました」


僕もキシュアさんの言うことに納得した。

まあ、戦いになるのはアレだけど、どうせデキラたちが来るんだし、デキラたち好戦派を叩き潰すのにはいいチャンスかもしれないって言うのに気が付いたし、常にあきらめずに考えろって言うのは確かに田中さんによく言われてた。


「確かに、あきらめるのは早いですわね。戦争になったとしてもデキラたちさえ倒してしまえば、それでデキラという魔王を倒したとして、リリアーナ女王たちと和解に持ち込めるのではないですか? いかがですか、お姫様」

「……ナデシコ様の言うようになれば理想ですが、魔族の有無に関係なく、敗戦国という扱いになりますので……和解を受け入れるかどうか」

「言いにくいですが厳しいでしょう。敗戦国の扱いは良いとは言えません。まあ、勇者殿たちが戦いに参加し、主導で戦いに勝利をもたらしたとなれば、多少は何とかなるでしょうが……」

「うへー、結局僕たちが先頭で戦うことになるのか」

「でも、何かを望むのに、何もしないのでは確かに聞き入れられるわけがありませんわね」


ま、撫子の言う通りだね。

何も手伝ってないのにあれこれ言うのはお門違いか。


「よし、その時は率先して、デキラを私たちで倒そう。そして、リリアーナ女王たちを助ける! これで完璧だね」

「そこまで単純だとは思いませんが。その時はまずそれが大事ですわね。逃げては今まで頑張って来たことが無駄になります。なので、お姫様、その時は私たちが前にでるということで交渉してもらえますか?」

「いいのですか? あれほど、戦うことは……」

「無暗に戦いたくはないだけです。今回は私たちが戦うことで被害が押さえられると思うから戦います」

「だね。ノールタル姉さんやセイールたちをちゃんと故郷に帰したいしね。国とか政治とかそういうのはよくわかんないけど、大事な人たちの為なら僕たちはやれるよ。ねえ、晃」


そう言って、晃の方を見ると……。


「おう。ヨフィアさんたちの為になら頑張るぞ」

「いやー、照れますねぇ」


そうあっさり答える晃。

ヨフィアさんは嬉しそうにしているが、晃にはテレが混じっていないから、本気なんだろうね。


「もう、これ以上お世話になった人が死ぬのは嫌だしな」

「だね」

「そうですわね」


どうしようもない、関係はそこまでないって言われても、聖女様のことはショックだったし、ラーリィたちが大怪我を負った時も何とかして助けたかった。

いや、ラーリィたちは助かったけど、記憶ないから自分で助けたって感じはしないんだよね。


「ま、甘いのは分かってるけど、ノールタル姉さんやセイールたちは何とか頑張って守るよ!」

「ええ。ここまで仲良くなった人たちを見捨てたりはしません。それが私たち日本人としての心意気です」

「ああ、ここが異世界とか関係ない。俺たちは世話になった人たちは大事にしたいし、恩は返す。それだけだ」

「まったく、本当にまぶしい若者たちだね。で、こんな真っすぐな若者たちを誘拐して利用するというのは私としてもどうかと思うと、魔族からも言わせてもらうよ」


そう言って、ノールタル姉さんはお姫様を見る。


「分かっています。必ずや、この問題が解決した暁には、勇者様たちを故郷に帰すことを誓います」

「うん。お姫様がそう言うならいいだろう。だが、その約束を反故にしようとするなら、私たちは彼女たちの友人、姉として、貴女たちを許さないとだけ言っておくよ」


やべぇ、ノールタル姉さんかっこいい。

小さいのにかっこいい。


「ま、帰る手段がわからなくても、私たちが一緒に探してあげるよ」


ノールタル姉さんがそう言うとセイールたちも頷いてくれる。

僕たち、色々あって大変だけど、こうして助けてくれる人たちもいるから頑張れる。悪くないって思える。

ここの世界に来た理由は理不尽だったけど。

こうして、いい人たちに囲まれているのは、きっと幸せなことだと思う。


だから……。


「よーし、気合入れて頑張ろう! ノールタル姉さんたちと帰る手段を探すにしても、まずはデキラたちをぶっ飛ばさないといけないしね!」

「そうですわね。まずは、変態をどうにかしませんと」

「おう。聖女様たちの恩は返す」


そう3人で決意を新たにしているところで……。


「えーと、私たちが帰る手段を見つけられないこと前提になっていませんか?」

「あー、うん。お姫様ならきっと見つけられるよ!?」

「……あからさまに信じてられておりませんわね」


と、落ち込んだお姫様をなだめるのが決意を新たにした3人での最初の行動だったとさ。


いやー、だってさ、見つけられるとは思わないじゃん?

というか、ノールタル姉さんたちとも冒険したいじゃん。




問題は色々あるけど、別に不幸なことばかりじゃない。

楽しいことも色々ある。


そして、ノールタルという姉たちを加えて、あきらめずに立ち向かっていこう。


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