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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま
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第173射:地道に

地道に



Side:ナデシコ・ヤマト



「つ、つかれた」

「お疲れー、晃」

「お疲れ様です。晃さん」


私と光さんは、そう言って晃さんをねぎらいながら冒険者ギルドへと戻っていました。

本日の工事は大成功。予定を上回り2週間はかかることを、1日というか半日で済ませてしまいました。

もちろん、私たちだけで成しえたことではなく、アスタリにいる冒険者や兵士の皆さんが協力してくれたおかげです。

魔術も私たちだけではなく、ほかに魔術が使える方々も協力してくれたおかげもあります。

人が一つになって何かをしようとすれば、これだけ大きなことも簡単にできるんだと、感じ入ることのできるいい日でした。


「ま、しっかり運動したと思えばいい。だがあれだけ魔術を使って魔力切れは起こさなかったな」

「あ、はい。ただ疲れただけです。でも、これって魔力切れの倦怠感でしょうか?」

「あー、俺から見れば、堀を魔術で掘りおわった後の整え工事で一緒にスコップ持って作業してたからだと思うぞ。慣れない動きは体にくるからな」


確かに、田中さんの言うように慣れない動きをすると体に来るものです。

私たちが訓練を始めた初日はそうでした。食事ものどを通らないほど疲れ果てていましたから。

とはいえ、私たちも堀の整備は手伝いましたから、おそらく魔術行使での疲れもあるとは思います。



と、そんなことを話しながら、冒険者ギルドの地下へと戻ってきました。

そう、私たちの仕事は堀作りだけではありません。

というか、こっちが本番です。


「やほー。ノールタル調子はどう?」

「ん? ああ、ヒカリお帰り。こっちは特に動きはないね」

「ヨフィアさんはどうでしたか?」

「こっちも何もありませんよー。と、なんかアキラさん疲れてないですか?」


流石、晃さんの奥さんを志願しているだけあって、ヨフィアさんは晃さんの調子によく気が付きます。


「ああ、ヨフィア。そっちの監視の仕事は代わるから、結城君の介抱でもしてやってくれ、今日の慣れない堀仕事でえらく疲れている。まあ、魔術で回復もいいが、大事なのはリラックスすることだからな」


そうですね。いくら体調が万全だとしても気持ちが続かなければ意味がないですわ。


「はーい!! そんなことならお任せください!! さ、アキラさん部屋に戻っていいことしましょうね」

「ちょっ!? 田中さん!?」

「体力回復も仕事の内だ。ゆっくり休んでこい」


田中さんがそう言っているうちに、晃さんはヨフィアさんに連れられて、部屋を出ていく。


「えっと、あれっていいの?」

「いかがわしいことになれば……」

「いかがわしいって、想像力が豊かだな。あれだけ疲れている結城君だ。さっさと寝るさ。ヨフィアもタブレット監視を交代しつつとはいえ、今までやってきてたんだ。普通寝るぞ? というか、人の恋路を邪魔する理由もないからな。2人には何かあるか?」

「「……」」


そんなことを言われると何も言えません。

……別に私は晃さんと恋人というわけでもありませんから。


「ま、仕事に支障がでるようになれば注意はするさ。とはいえ、まだなってもないことを懸念するのは気が早いな」

「それもそっかー。まあ、ヨフィアさんには幸せになってほしいし、相手が晃なのがちょっと不安だけど」

「そうですわね。もうちょっと、甲斐性があれば……」


私たちも喜んでお二人を祝福できたのですが。

まあ、一概に晃さんが悪いということでもないですからね……。

この状況下で二人が幸せになれるのかというのが一番心配です。


「と、人のその後に興味を持つことよりも、俺たちはこの場の引継ぎだ。堀を作る際には結城君より楽をしているからな。キシュアも二人と代わってもらえ」

「……はい。ありがとうございます。私も休ませてもらいます」


キシュアさんはそう言うと、ふらりとドアの外へと消えていきます。


「なんか、キシュアさんも思った以上につかれているね」

「そうですわね。一体何が……」


私たちのそんな疑問にはノールタルさんが答えてくれます。


「そりゃ、ドローンの操作になれているのは、ヨフィアやキシュアだからね。私たちも頑張ったけど、彼女たちの助けを得ての話だったからね。2人の疲労は結構あるはずだよ」


なるほど、そういうことだったのですね。


「とはいえ、ノールタルたちも疲れているだろう。交代で休んどけ。俺たちが代わる相手がいなくなる」

「お言葉に甘えさせてもらって私も休むよ。いやー、ずっと同じ画面を見続けるっていうのはつらいね。本当に」


ええ、本当にそう思います。

何度も監視をしていますが、未だになれるようなことはありません。


「さ、結城君が昼に頑張ったんだ。俺たちも夜のフォローはしっかりするぞ」


ということで私たちは監視を開始します。


「なーんにもないね」

「ないですわね」


私たちが見つめている映像は森が大地に広がっているだけのただの大自然の光景です。

当初は何か見つかるかもと思っていましたが、そうそう都合いい話があるわけもなく、空を飛んで監視しているだけの時間がかれこれ1時間は過ぎそうです。


「というかさ、こんな風に夜に飛んでいいの? 相手が見つかるとは思えないんだけど? 見落とさない?」


光さんの言うように、暗い森の中にいる人なんて見つけられる気がしません。

日が昇るまでは同じ位置で待機していた方が見落とさない気がするのですが……。


「相手は四天王だからな。何かあればゴードルみたいに戦闘しているだろう。見つからなければ、そのまま往復で探せばいい。これの繰り返しだな。とはいえ、道をそこまで外れるようなことはないと思うけどな」

「確かにそうですわね。ザーギスさんがどのような人物かはよくわかりませんが、わざわざ森の奥深くにはいるとは思えませんわ」

「となると、道なりに探してれば見つかるってこと?」

「可能性が高いってことだな。で、こっちはさらに面白いことになっているな」

「え?」

「何か動きがあったのですか?」


その言葉から、田中さんが持っているタブレットを覗いてみると……。


『これだ。これだ!!』


……また変態が画面に映っていまし……。


「って、ちょっと待ってください。この部屋はリリアーナ女王の部屋ですよね!?」

「ふあっ!? ほ、本当だ!? あ、あの変態ついに部屋にまで!!」


私の言葉で光さんも気がついたようですが、間違いなく

全然面白い話じゃありません!!

最悪です。変態が部屋に侵入して、あまつさえ、下着を……。


「田中さん、何とかして殺せないんですか!?」

「爆弾でも送り込んでぶっ殺そうよ!!」

「いやいや、魔王の部屋で死んでいたら疑われるというか、間違いなくリリアーナ女王が殺したことになるだろう?」

「それでいいです! その変態は確実にリリアーナ女王の手で殺すべきです!!」

「そうだー!! 迷惑をかける変態には死を!!」

「落ち着け。予定ってものがある。ここでデキラを始末しても効果は薄い。四天王が集まるまで我慢だ。この話もリリアーナ女王にはするなよ。まあ、ないとは思うが逆上してデキラに押しかかられでもしたらたまったもんじゃない」


予定がくるってどうなるかわからないということですね……。

分かります、意味は分かります。

ですが、心が追い付きません。


「これでまた一つデキラを追い落とす時に圧倒的な証拠がそろったと思え」

「むむむ……」

「話は分かりますが、しかし、これは……」

「我慢だ。味方を増やして敵を減らす。被害を少しでも少なくするために必要なことだ。こう言っちゃなんだが、しょせん下着泥棒でしかないからな」

「「……」」


確かに田中さんの言うように、下着泥と不法侵入です。

その程度では、下着泥で死刑になるようなことは地球ではありえないというのはわかります。

リカルドさんたちにも話を聞きましたが、ルーメルでも同じく死刑になるようなことではないようです……。

軍のトップがやっていたということは確かに大変な問題ではあるでしょうが、それでも殺してしまっては、過剰な罰を与えたとして、リリアーナ女王の立場が悪くなるということですね。

あのデキラをつぶす時は、すべての罪状を突き付けたうえでやらないとこちらにダメージが来るということです。。

あの変態を倒したあと、すぐにリリアーナ女王の政権が倒れてもらっても困ります。

と、そんなことを考えていると、ゴードルさんから連絡が来ます。


『もどっただよー。って、リリアーナ様の部屋面白いことになっているだな』


ゴードルさんの方からもリリアーナ女王の部屋が見えているのか、田中さんと同じことを言います。

……世の男性はこんなにもデリカシーがないものかと思いたくなりますが、ここは状況が状況なので仕方がないのでしょう。

落ち着くのです。田中さんやゴードルさんが悪いわけではありません。

あの変態が悪いのです。

と、そんな風に私が葛藤している間に田中さんとゴードルさんが話を始めます。


「よう。お疲れゴードル。しかし、意外と使いこなしているようだな」

『んだ。写真とか昨日取りまくってみただよ。いやー、問題が片付いたあとにはみんなで記念写真を撮りたいもんだ』

「そうだな。で、リリアーナ女王の部屋のも印刷しとくか?」

『たのむだよ。だけど、そのことはリリアーナ様に言わなくていいだよ。どう考えてもおこるべ』

「当然だな。と気が付けば変態は去ったようだな」

『そうだべな。ま、みんなこのことは黙ってくれだ。今デキラを糾弾してもどうにもならんべ』


……わかっています。

分かっていますとも。

と、デキラが入れ替わってすぐとは言いませんが、さほど時間がかかることなく、リリアーナ女王が戻ってきました。


『おや、皆さんお揃いですね』


女王はこの部屋に変態がいたことに気が付いていない。

言ってあげたいのに言ってあげられないこの悔しさ……。


「ああ、ついさっきな。で、そっちはどうだ? デキラが何か動いている様子はあるか?」

『いえ、今日は特にそういうのは見受けられませんでした。いつものように、ルーメル方面の砦への食糧や物資をという要求があっただけですね』


どうやら、あの変態は図々しいことにそんな要求をしているようです。


「召喚の気配がなければそれはそれでありがたいことだな。ああ、こっちの方は四天王の発見には至っていない」

『まあ、ザーギスだしなぁ。変なところにいるだよ』

『ですね。街道を行けば見つかる可能性はやはり低そうですか』

「うえっ!? 本当!? 今まで街道沿い探してたよ!?」

「ですわね。見当違いのところを探していたわけですか……」


流石というべきか四天王は常識には当てはまらないようですね。


『ああ、すみません。街道沿いに行けば道に迷うことはないかと思っていたのですが……』

「あ、いや、リリアーナ女王が悪いわけじゃないし」

「でも、そうなると、見つけるのは大変そうですね」

『ザーギスは一度出ていくと2週間は戻ってこねえからなぁ』

「ともかく、まだ初日だ。早く見つけられるよう頑張っていこう」

『「「はい」」』


こうして、私たちのドローン偵察の日々はまだまだ続くのでした。

ですが、あの変態には絶対に鉄槌を!!




逮捕、立件前には確実な情報を集めてから。

そして致命的なところで確実に抑えるのが大事。


特に偉い人とかは、こういうところを押さえないと逆に痛い目にあう。


例え変態でもね!



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