援護射撃1:武器ってなにがあるの?
武器ってなにがあるの?
Side:タダノリ・タナカ
不意に気になることがあって、リカルドとキシュアにある質問をしてみた。
「「武器ですか?」」
そう、武器に関してだ。
この世界は中世ヨーロッパの文明レベル程度と俺個人での判断を下したが、魔術などの技術があるので、厳密には違うだろう。
というか、異世界な時点で地球の歴史と当てはめること自体が間違いだよな。
まず、魔物とか地球にはいないし、それに対して、有効な武器などがあるのでは?
と、思って兵士であった2人に話を聞いてみたわけだ。
「例えば、ほら、魔術武器っていうのがあるって話を聞いた。まあ、俺たちが買ったアイテム袋の武器バージョンといったところだが、そういうの含めてどういう武器があるのかを知りたい」
武器の特徴を知るということは、それだけ今後の戦いに有利となるわけだ。
それだけ相手の情報を集めているってことになるからな。
「ふむ。まあ、色々と聞いたことはあります」
「そうですね。私も色々面白そうな武器の話は聞いたことがあります」
「2人がその面白いっていう聞いたことがあるというのは、エンチャント武器か?、そういうのは結構普及しているのか?」
魔術によって、変な効果が載っている武器だ。
まあ、簡単に言えば斬った相手が燃えたりとかだな。
そういうのは聞いたことがあるが、実際に見たことはないんだが、どれだけ普及していて、対処法などはどうなっているかを聞きたい。
「いえ、エンチャントの武器はそうそう見るモノではないですね」
「そういうモノがあれば、既に勇者殿たちに貸し出されているはずですし」
「いや、それだけ珍しいモノなら、逆に貸さないだろう」
そこまで珍しいのであれば、武器として使うよりも歴史的価値が高いから国宝とかになっているんじゃないか?
日本でいう珍しい日本刀みたいに。
「ああ、珍しい武器や道具は確かに存在します。ですが、そこまで珍しいというわけでもないのですよ」
「そうなのか?」
「そうですね……。お金持ちなら一つ二つは持っていると思います。あとは高ランクの冒険者とかですね。とはいえ、意外と使い勝手が悪いと聞きます」
「使い勝手が悪い?」
意外な言葉が出てきたな。
何か特殊な能力が付いている武器なら、かなり有効かと思っていたが……。
「切った相手を燃やすという武器はありますが、基本的にそういう炎のエンチャントが付いている武器で燃やした程度では敵は死にません。逆に燃やされた相手が組み付いてきて、ひどいやけどを負うこともあるので……」
「ああ……」
言われて納得だ。
基本的にこの世界は近接戦が基本だ。
弓矢での射撃も存在するが、それだけ。
メインは接近してからだ。
となると、燃やされた相手は覚悟を決めて襲い掛かってくるだろう。
いや、魔物となるとそういうことを気にせず襲い掛かってくるだろうな。
そうなると普通に襲い掛かられるより被害が大きくなる。
便利かと思った相手を燃やす剣は、キシュアの言う通り使えないな。
至近距離で手榴弾を投げるようなものか……。
「結局のところ、敵を燃やすなどの行為は魔術師ができますからな」
「わざわざ、前衛が武器で魔術行使をする理由がないんですよ。まあ、魔術師と組んでいることが前提ですが」
「確かにな」
特に軍ともなれば魔術師部隊がいるのに、前衛がエンチャントの武器する意味合いは本当に少ないな。
連携が大事な軍からすれば、逆に邪魔か。
「そうですな。便利なエンチャント武器というと……速度を上げるエンチャントがかかっているモノですかな」
「ああ、それですね」
「速度を上げる? どういうことだ?」
「何と言いますか。風の魔術がかかっているようで、動きが早くなるのです」
「ええ。体が軽くなり、武器も普段より軽く振り回せる。まあ、身体強化と言う物ですな」
いや、風の魔術がどこにどう絡んでいるんだよ。
というツッコミをこらえた俺はすごいと思う。
まあ、こいつらの頭の中は早く動ける=追い風を受けているっていう図式なんだろうな。
しかしながら、厄介な武器もあったもんだな。
下手な武器よりも厄介だな。
パッと見た目でわからないからな。あっけにとられているうちに殺される可能性もあるわけだ。
やっぱり、この世界で近接戦はだめだな。近づかれる前に殺るのが一番だろう。
「というか、そういう武器は少ないですし、こういう時は、実際に武器屋とかにいってみてはどうですかー?」
今まで話を聞いていたヨフィアの言葉に一同の視線が集まる。
「あれ? 駄目でしたか?」
「いや、それが一番だな」
ということで、俺たちは武器屋の前にやってきたわけだが……。
「ここが、ルーメル王都で有数の武器屋か」
「ええ、ここは軍に武器を卸すのはもちろん、冒険者相手の商売もやっておりますので、珍しい武器もあるかと」
「珍しい武器屋もあったもんだな。専属の鍛冶屋でもいるんだろうが、そういうのは国に取り上げられそうだがな」
「え? なんで?」
俺の言葉に不思議そうに首を傾げるルクセン君。
そういう武器を作る職人というのは、いつの世も国に囲われる運命だというのは現代人であるルクセン君にはイメージし辛かったな。
「そうだな。国から注目される武器を作れる鍛冶職人というのは、今でいうなら最新鋭の研究をしている科学者、或いは兵器開発者に等しいわけだ。武器を剣と思うとあれだが、作っている武器が銃ならどうだ?」
「ああ、納得。そんな危険人物になるかもしれない人は確保したいよね」
「そういうことだ」
優秀な人材というのは裏返しで見れば国家の平和を脅かす危険な存在となりうる。
だからこそ、管理をしたいと思うのは当然のことだ。
「だから、この武器屋の存在を疑問に思ったわけですね。国家の運営ではなく、一個人の経営として存在しているから」
「その通りだ大和君。よほど商人として力を持っているのか、何かほかに理由があるのかってところだな。ま、そういうのは探らない方がいいけどな」
「え? どうして?」
「下手に首を突っ込んで、面倒ごとに巻き込まれたくないだろう? 今は今で精一杯なんだからな」
「確かに、そうですね」
「ま、のんびり今日は武器を見るだけにしておけ」
そう俺は告げて、武器屋の中に入ると、店員が近づいてきて……。
「いらっしゃいませ。申し訳ございません。どなた様のご紹介でしょうか?」
「おおっ、一見さんはお断りか?」
「流石に、一般の人に簡単に開放するわけにはいきませんので、そういう国との約定が結ばれております」
「なるほどな。こうして武器の管理と、人の管理もかねているってわけだ」
こういうことで各国に貢献しているってことか。
と、そういうことで感心している場合じゃないな。
「紹介じゃないんだが、こいつで足りるか?」
「はい? 私ですか?」
とりあえず、この場で一番立場の高かったやつを前に出す。
「これはこれはリカルド様。今は確か勇者の従者を……となると」
「おお、意外と知っているんだな」
「わかりました。少々お待ちください」
どうやら、俺たちの正体に察しがついたようで、店員は一人を残してお店の奥へ確認へと向かう。
「ねえ、ナデシコ。あの人僕たちの正体に気が付いた感じ?」
「ええ。そうみたいですわね。まあ、追い返されるよりはましだと思いますが」
「だな。とりあえず、見せてもらえるだけでもありがたいよ」
そんなことを話していると、すぐに先ほどの店員が一人の男を連れて戻ってくる。
「お待たせいたしました。確かに、リカルド様に、勇者様たちですね」
その男はリカルドはともかく、俺たちを勇者様たちとはっきり言い切った。
俺はこの男の顔に見覚えはない。
「ああ、いえ、タナカ殿。私は実際に会ってはいませんよ。容姿を聞いていただけです。商人としては常識ですからね」
「なるほどな。しかし、その情報が入ってくるということは、上と繋がりがあるわけか」
「ええ。何かあれば援助してほしいと陛下から言われております」
しかも、ルーメルのトップからか。
となると……。
「武具の代金は?」
「こちらに置いてあるものでしたら、無料で進呈いたしますよ。勇者様が使ってくれたとあれば、こちらとしてもありがたい限りですし」
「そうか。なら、店内を見せてもらっても?」
「はい。構いません。と、ご挨拶が遅れました。このオールラウンダー武具店のオーナー、マルチ・ラウンダーと申します」
……オール、マルチ、多用途兵器か。
と、人の名前に難癖を付けるのはいかんな。
「ああ、よろしく頼む」
そういうことで、俺たちは店内を見せてもらうことになったのだが……。
「すげー。剣だけでも沢山あるねー」
「はは、武器というのは基本的に消耗品ですからね」
「では、基本以外というのは?」
「そうですね。エンチャントを掛けられている武器などですね。まあ、それもモノによりけりなんですが、劣化軽減などのエンチャントが付いているモノは長持ちしますね」
なんだそのクソ便利な武器は。
俺は興味を惹かれて話を詳しく聞いてみる。
「その武器はあるのか?」
「いえ、流石に劣化軽減などの武器は別のところに保管してありますよ」
「現物があるのか?」
「もちろん。まあ、別の場所に保管しておりますが。しかし、流石にこれを無料で渡すわけにはいきません」
「ああ、いやそういうつもりはない。ただ、どれぐらいそういう武器が存在しているのかを知りたい。これから戦闘が多くなっていくだろうからな。敵が持っていそうな武器などは知っておきたいわけだ」
「なるほど。そういうことでしたら、そういうエンチャントがかかっている武具を持っているのは、有名冒険者になるとそういうのは必ず一つ二つは持っていますね。しかし、劣化軽減などとなると、国宝級のモノになります。大抵劣化軽減の武具などはほかに複数のエンチャントがかかっていますからね」
「なるほどな。しかし複数の魔術がかかっているとなると厄介だな」
そういう面倒な物もあるのか。
「まあ、そういうのは意外と見分けるのが簡単です」
「そうなのか?」
「ええ。そういう特殊な武器は無駄に豪華ですからね。機能美をかいていることが多いです」
「ああ……」
「劣化軽減が付ているおかげか、それとも特殊な武器だから、こだわるのでしょうね」
そう言うことか。
なんか、こっちの世界の実力のあるやつは装飾過多なんで不思議だったが、そういう理由からか。
強いから装飾過多なのか。
てっきり目立つためかと思っていたが、そういう理由もあったわけか。
「じゃあ、外見を見れば判るわけか」
「そうです。外見が豪華な相手は手数を重ねる前に一気に畳みかけた方がいいでしょうね」
「参考になる。さて、そのお礼といっちゃなんだが、何本か武器をもらって行く。それで宣伝してこよう」
「それはそれは、こちらとしてもありがたい限りです」
ということで、俺たちは武器屋で情報を集めつつ。お礼を兼ねて宣伝用の武器を二、三本もらって帰るのであった。
「みてみて、これハルバードだよー。つよそーだよね」
「それはまた使いづらいものを選びましたわね。私は投げナイフですわね」
「俺は、槍だな。投げても使えそうなやつ。で、田中さんは何にしたんですか?」
「俺か? 俺はメイスだな」
「え? なんでそれ?」
「意外ですわね。てっきりナイフかと思っていたのですが」
「何か理由でもあるんですか?」
「そりゃ、ナイフで斬る、突くはできるが、殴りに適した物は持っていなかったからな。銃はどちらかというと突くだしな」
「「「あー」」」
とまあ、各々色々な武器をみて、この世界の知識を得て戻るのであった。
もらった武器を使うかは甚だ疑問ではあるが。
初めての閑話。
まあ、オマケのお話ですね。
異世界の武器はどんなのがあるんでしょうって話。
春ネタは書けたらいいなー。




