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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま
163/516

第163射:四天王偵察

四天王偵察



Side:アキラ・ユウキ



「で、今はあの四天王ゴードルはあの小屋にいますよ」


そう言って、ヨフィアさんが操るドローンの映像には森の中にたつ素朴な一軒家があった。

他に近所と呼べるものもなく、本当に一軒だけそこに家がある。


「なんでまたあんなところに。四天王って魔王の重臣じゃなかったのか?」

「そうだよ。でも、ゴードルは開拓の仕事に従事しているからね」

「ああ、ゴードルの仕事はこの畑の維持ってことか」


田中さんの質問にノールタルさんが答える。

本当にノールタルさんは長生きしているだけあった、俺たちの質問にちゃんと答えてくれる。

まあ、わからないこともあるけど、わかることだけでも俺たちにとっては大事で役に立つ情報だ。

そんなことを考えていると、光がこんなことを口にする。


「じゃ、今から会話でもしてみない? ドローンで確認する限り兵士とかいないし」

「いや、流石に危険だろう? 巡回の兵士とか来るかもしれないし」


俺がそう言ってたしなめるんだが、代わりにノールタルさんが口を開く。


「ここは強力な魔物が多い森の中にあるからね。夜の森にわざわざ巡回なんて来ない、だから巡回の心配はいらないよ。こんな家に住めるのはゴードルぐらいのものさ」

「なるほどな。このゴードルっていうのはそこまで強いわけだ」

「ねえ。やっぱり今から話しかけてみるべきじゃない? ドローンに対する反応を見るのにもいいしさ」

「ちょっと危険な気もしますけど時間もいくらあるかわかりませんし……。晃さんはどう思いますか?」

「え? 俺? ……そうだな」


もう、俺は田中さんがアスタリ子爵と話すのをみて防衛のための堀を作ることにやる気満々なのは知っている。

まあ、田中さんの言うようにもうアスタリの魔族の拠点は潰してしまっているんだし、バレるのは時間の問題だもんな。

俺たちがここでじっとしていても何も変わらない。撫子の言うように時間が無くなっていくだけだ。


「俺も、光と同じ意見だ。今仕掛けて色々わかるならそれに越したことはないと思う。下手をすれば和平派の人が排除される可能性もあるような状況みたいだしな。なんとか繋ぎを作って、いざというときこっちに引き込めるようにした方が後々いいんじゃないか?」

「へえ。よく考えている。そういう考えがあるなら、俺は結城君に賛成だ」


意外なことに田中さんが真っ先に俺の提案に乗ってくれた。

で、田中さんが賛成してくれたならあとは簡単で。


「田中さんがOKだすなら、安全だねー」

「作戦に関しては田中さん以上の人はいませんからね」


2人の言葉に全員が頷く。

田中さんが賛成してくれるなら安心だもんな。


「じゃ、後はさっそく話しかけてみようってことなんだけど……。ヨフィアさんがそのまま操縦してみる?」

「いえいえ。流石にそれは無理ですよ。というか、このドローンはノーマルですし」

「ああ、そう言えばそうでしたわね。田中さんあちらにタブレット付きのドローンを出せますか?」

「やってみよう。ここまでの長距離は初めてだが、今までの実験は上手く行ってたしな」


そう、今までは上手く行っていた。

今回も同じように上手く行くといいんだけど、と、見守っていると、ドローンの視界に急にドローンが現れる。

タブレットが乗っているから、間違いない成功だ。

俺はそう思って田中さんを見ると、頷いてくれて……。


「良し上手く行ったな。あとは、動くかどうかだが……」


田中さんはタブレットを取り出して、操作を試みると、画面向こうのドローンのプロペラが回り始めた。


「おおー!? 動いた、動いたよ!!」

「魔力というのは電波よりも便利なんですね……」

「なんかズレてね? 撫子」

「うるさいですわよ。でも、これで根本的にどこでも連絡が取れるということですね」

「だな」


まあ、実は前にリテアの方にドローンを飛ばしていたことがあるので、魔力が届くかどうかの心配は基本的にしていなかった。

それよりも、田中さんがあんな遠距離にドローンを呼び出せるかが一番心配だったんだよな。

しかし、これはドローンが一台でも残っていれば、何台でもドローンが呼び出せるってことだから、本当にドローンに爆弾でも積んで突っ込ませる戦法ができるわけだよな……。

田中さんが言っていたドローンでの敵軍壊滅作戦が実現可能だということに気が付いて、肝が冷える。

和平に応じてくれないと、好戦派の人たちはあっという間に殺される気がする。

と、そんな俺の嫌な未来図をよそに、タブレット付きのドローンは動き始めて、ゴードルさんの家に近づいて行く。

もちろん、ドローンの操作をしているのは田中さんだ。


「結城君。こっちが映像会話と繋がっているタブレットだ。起動して確認してみてくれ」

「あ、はい」


そう言われて俺に渡されたタブレットを起動して映像会話を起動してみると、普通に真っ暗な森が映っている。


「明かりが無くて殆どみえません」

「暗視モードはなかったしな。光源を作るわけにもいかん。ゴードルの家の中が明るいことを祈ろう」


そう言いつつも田中さんは障害物にぶつかることなく、ゴードルさんの家をぐるっと一周回る。


「見た感じ、普通のログハウスだな。掘っ立て小屋とは違う。ちゃんと生活感があるな」

「だねー。いいよねー。こういう感じ」

「自然の中に生きているって感じがいたしますわね」


2人の言う通り、こういう所での生活はあこがれるな。

なんか一日ゆっくり過ごせそうな気がする。


「で、あとは中の様子だが、窓の戸板からは光がもれているから、起きているとは思うんだが。どう呼び出したものかね。銃撃でもするか?」

「「「いやいや」」」


超過激な呼び出し方に、速攻で否定する。

ゴードルさんと敵対になること確実だ。


「冗談だ」


冗談に聞こえないです。


「でも、どうやって呼び出せばいいのかな? 戸締りはちゃんとしているし。ドローンじゃ開けられそうにないよ?」

「最悪、ドローンで体当たりだな。それでノック代わりにするしかない。まあ、どれだけドローンを待機させておけばいいか分からんけどな」

「それはそれであまりとりたくない手段ですね。ドローンが何機も呼び出せると相手に教えてしまうことになりますし」

「ま、そこまで焦らなくてもいいだろう。魔族はいずれ動くのは間違いないが、今日明日って話じゃない。明日、明後日にでもゴードルと連絡を取れば何とかなる」


田中さんの言葉に全員頷く。

今日会えれば今日が良かったけど、無理をしてあう理由もない。

と、そんな感じで、話がまとまりかけていると……。


「おっと、そうもいかないみたいですよ。上空監視で異常ありです。ゴードルの家の近くで木々がいきなり倒壊するのが見えました」


はい? 木が倒れた?

そんなことがあるのかと思っている間に、田中さんは即座にログハウスの上空へ離脱する。


「どっちの方向だ」

「えーと、コンパスはNWの間です」

「了解」


直ぐにヨフィアさんから詳細を聞いて、そっちの方へと画面を向けると……。


『バキバキ……』


木が折れるような音が断続的に響くのが聞こえる。


「うひゃ、なんかすごいのがいるよね」

「生の木をこんな簡単に折って進める生き物がいるのが驚きですが、その前にゴードルさんに伝えなくて大丈夫なのでしょうか? この方向は真っすぐにゴードルさんの家へ向かっているように見えますが?」

「確かに、木々の倒れている位置を確認するとそんな感じだな」


森の中とは違って月灯りが射しているので、木々が倒れている位置は夜でもはっきりとわかる。

それを見ると、2人の言うように、確かに真っすぐゴードルさんの家に向かっている感じがする。


「何か伝えた方がいいんじゃない?」

「どう伝えるんだよ。というか、意外ともう起きて準備しているかもしれないぞ。これだけ大きな音がして寝たままってのは光ぐらいのもんだろう?」

「なにをー!?」

「2人ともじゃれるのは後にしてください。田中さんどうしますか?」


撫子は俺たちを注意してから即座に田中さんに意見を求める。


「俺たちから手を出すことはしたくない。ゴードルが自力で解決できるならそれに越したことはないからな。手伝い時は絶対絶命になってからだ。そうでもしないとドローンの戦闘能力が露呈してしまうからな」


確かに、迂闊に助けることはできないよな。

ドローンの実力がばれるわけだから、迂闊に攻撃が仕掛けられなくなるってことだ。


「とはいえ、四天王とか仰々しく呼ばれている連中で、しかもこんな所に住んでいる奴が、簡単に死ぬとは思えないから、お手並み拝見と行こうか」

「それが良いでしょう。相手の実力も推し量るいい機会です。敵対してきたときのことも考えてこういうのは必要かと」

「そうですね。私も田中殿やリカルド殿の意見に賛成です。戦士の戦いぶりを見るというのはそれだけ得る物が多いですから」


そう、リカルドさんやキシュアさんも賛成。


「私も同じ意見ですね~。まあ、アキラさんたちは盗み見る気分でよくないと思うかもしれないですけど、見て学ぶことも多々ありますから、いいお手本を見せてくれたと思った方がいいですよ」

「なるほど。そうですね。そう言った気持ちで見た方が気が楽ですね」


撫子はそう言って、ふぅと息を吐く。

ヨフィアさんが言ったように覗き見るって気分で色々葛藤していたんだろうな。リラックスした感じだ。


「お、姿が見えたな。……昼の映像に出ていたのと同型の魔物に見えるな」


そんなことを考えているうちに、森の中を進んでいる生き物正体が分かった。

田中さんの言う通り、昼にゴードルさんが倒した魔物とそっくりだ。


「あー、なんか木のお化けみたいなやつですよね」

「やはり、真っすぐにゴードルさんがいる家に向かっていますわね」

「仲間意識がある魔物だったのかな? ノールタルさんは何か知っていますか?」

「さあ、でも、おそらくはないよ。仲間意識なんてあったら、今頃あの国は魔物と戦争だからね」

「ああ、それは確かにそうだな。ま、たまたまってことだろうな。と、そろそろ迎撃をしないと家に攻撃を加えられるが、あの大男はどう……」


ドゴンッ!!


田中さんが言葉続ける前に、そんな大きな音がして……。


メキメキ……。


そんな音を立てて、木の魔物が倒れる。


「はい? 何が起こったの?」

「窓が開いてるな。あそこから何か投げたみたいだぞ」


気が付けば、田中さんがドローンを操作して、家の方に視界を向けている。

確かにそこには、戸板でふさがれていた窓が開いている。

魔物が倒れている方向から考えると、そこから何か投げたんだろうっていうのは予想が付く。


「でも、あんな巨大な魔物を倒すほどのモノがあの家にあるとは思えないんで……」


ボッ!!


撫子がそう言い切る前に、人の頭の大きさはあるだろう岩が窓から飛び出して……。


バキィ!! メキメキ……。


という音が辺りに鳴り響く。


「……あるようですね」

「そうだな。そして、本人のお出ましだ」


そう田中さんがいうように、家のドアが開け放たれて、そこから大男が家から出てきていた。


『まっだく。面倒なもんだ』

「「「……」」」


なぜかその言葉が訛って聞こえたのは気のせいだろう。




四天王には個性的な人がいっぱい!!

まあ、こんなもんだよね。

まとめてかかってきたらいいのにとか、思うけど、世の中そう都合よくはないってことよ。


そして、なんで異世界で訛りが聞こえるんだろうね?

まあ、全員が全員標準語で聞こえたらあれだけど、翻訳機能ってすごいよねって感じだね。

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