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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま
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第161射:国の形

第161射:国の形



Side:ナデシコ・ヤマト



ゾクゾク……!!


私はそんな言い知れぬ悪寒を感じて、後ろを振り返りますが、そこにはなにもありません。


「どしたの撫子?」

「いえ。なんか、悪寒が……」

「風邪かい? 私たちの看病をしてナデシコが体調崩しちゃ世話ないよ」

「ねる?」

「いえ。それには及びません。おそらく、変態の映像を見たせいですから」

「「「ああー」」」


私の言葉で納得するみんな。

まあ、当然ですわね。

パンツ食っている変態を見て悪寒がしない女性は特殊な性癖に決まっていますわ。


「しかし、その変態が好戦派のトップだったなんて世も末ですわね」

「だよねー」


そう、ノールタルさんたちに協力してもらって、お城の人の詳細を教えてもらっていたら、あのパンツを取って喜んでいた変態が、好戦派のトップであるデキラであることが判明いたしました。


「しかし、変態でも実力は十分あるのが厄介だね」

「うん。四天王、でもある」

「不思議だよね。ま、趣味は関係ないってことかな」

「でしょうね。ですが、あんなのを国のトップにしてはいけません。どう見ても国が混乱する未来しか見えませんから」

「だね。とはいえ、これからどうする? 結局さ、映像を見て回っていたけど、お城の人たちは有名人以外はよくわからなかったし」

「いえ、デキラの正体、四天王の存在が分かっただけでもすごいことですわ」


これからの行動指針に必ずなります。

田中さんがこの四天王相手に何をするかは何となく想像はつきますが……。

と、それはいいとして。


「ヨフィアさん、キシュアさん、アレから何かありましたか?」

「あ、そういえばそうだった。ヨフィアさん、キシュアさん大丈夫?」


私たちがずっと映像の解析をしている間、タブレットで監視をしているキシュアさんやヨフィアさんの報告を聞いていませんでした。


「あー、いえー。特に動きはないですねー」

「ですね。今のところは動きはないです」

「どれどれ?」


気になったのか、ノールタルさんがヨフィアさんが持っているタブレットをのぞき込みます。


「えーと、ここは……東の農場だね」


そう、ヨフィアさんが持っているタブレットには、かなり広い畑が存在していました。

おそらくここが魔族の大事な食料を供給するところなのでしょう。

農場で働いてる人は大勢いますし、兵士なのでしょうか? 鎧を着こんだ人も畑を耕しています。


「へー、農場もあるんだ。って、そんな区画監視範囲にあったっけ?」

「あ、タナカさんから時間がある時でいいから、探索してくれーって言われてましたからー。しかし、よくこんな強い魔物がうようよしている森を切り開いて、農場を作ろうと思いましたねー」


確かに、魔族の街は強力な魔物が住む地域になっていて、そう簡単に切り開けるわけがありません。

この農場を作るまでにどれだけ時間と労力がかかったか想像もつきません。

重機すらないのですから、切り株を掘り返すだけでも苦労するはずです。


「ま、こうでもしないと、私たちは飢えるしかないからね。そして、これを成し遂げたのがリリアーナさ。ほら、あそこを見てみるといい」


そう言って、ノールタルさんはタブレットのある場所を指さすと……。


「うげっ!? 魔物と誰かが戦っているよ!」

「うわー、相手はなんかトレントを物凄く強くしたような感じですよねー。アレの相手をするのは……」


ヨフィアさんがそう言った瞬間、木の魔物が腕をしならせて兵士に攻撃を仕掛けます。

兵士さんたちは、農具で挑んでいますが、やはり魔物には叶わないのか、一振りでなぎ倒されていきます。

幸いなのは、ただ殴られているだけなので、死んではいないところでしょうか……。


「これは、まずくないでしょうか?」


キシュアさんの言う通り、畑の中へと魔物は進んでいきます。

このままでは人命はもちろん、丹精込めて作った畑が荒らされてしまいます。


「いや、見てるといいよ。ほら、来た」


ノールタルさんがそう言うと、遠方から、岩が飛んできて木の魔物を森の際まで吹き飛ばします。


「はい? 魔術?」

「あたりだ。そして来た」


そういうノールタルさんの視線の先には、他の兵士の二倍はあろうかという大男が立っていました。


「あれが、剛腕土壁のゴードル。四天王の一人だよ」

「うひゃー。なんかお相撲さんを筋肉質にした感じだね」

「ですわね。脂肪があるべきところが筋肉になっているって感じですわね」


デブというには筋肉質。

まあ、サイズ的にはデブというのでしょうけど……。


「おおっ!? すごい早いよ!!」

「彼は見た目と違って結構俊敏に動くんだよね。そしてパワーも……」


ゴードルさんは瞬く間に、木の魔物に接近したと思ったら、枝をつかんでは折っていき鋭いとげのような攻撃もなぜか体にはじかれて折れてしまいます。

そして、ついには本体の前にたどり着いて、木の幹を掴んで……。


バキィ!!


「「「……」」」


折ってしまいました。


「すっげー……。というか、木の幹は全然持てるような太さじゃなかった気がするけど」

「ですわね。しかし、よく見ると、木の幹に無数の穴が開いていますわ。掴んでそのまま開けたのでしょう。信じがたいですけど……」


どういう力があれば、木の幹に指で穴をあけられるのか甚だ疑問ですが……。


「いや、私も戦闘を始めてみるけど、本当にあそこまでとはね……。異常な身体強化魔術のお陰で成せる技だそうだよ」

「身体強化って、あそこまでできるんだ」

「理屈は何となくわかりますが、あそこまでの強度を維持しつつ体に負担のない強化をできることが驚きですわね」


私たちも、身体強化で動きを強化していますが、指一本で木の幹に穴をあけようとは思いませんし、武器の攻撃を防ぐような防御の強化はできません。

まあ、多少は剣戟は防げたりしますが、その前に魔力の障壁を展開して守った方がいいですからね。

お陰で、田中さんのハンドガンの通常弾は弾ける程度の防御力はあります。

マグナム弾は無理でしたが……。

そんなことを考えていると、魔物を倒したゴードルさんはそのまま荒れた畑を直し始めました。

他の兵士や農家の人たちと一緒に。


「そして、ああやって畑を耕す人気者さ」

「へぇ。良い人なんだ」

「もともとは、農家の出だったらしいよ。それで今みたいに、魔物に襲われた時、身体強化と土魔術が発現して周りを守ったのが始まりだとさ。それを見たリリアーナが四天王に加えたみたいだ」

「なるほど。リリアーナ女王はちゃんと人を見る目があるんですね」

「いやいや、デキラは?」

「……」


光さんのツッコミに何も言えなくなりました。

リリアーナ女王は、自分の下着を盗む部下を四天王につけたということですよね……。

流石に、人の見る目は……。


「ああ、デキラはリリアーナが選んだわけないよ。好戦派がなんとかねじ込んだのがデキラだ。軍を掌握していて実力があるってことでね。ほかの、レーイア、ゴードル、ザーギスはリリアーナが選んだ手前、軍部の意見は無視できなかったってことみたいだ」

「ああ、大人の汚い話ってやつね」

「なるほど。それならリリアーナさんは人を見る目はあるってことですね。しかし、4人のうち3人は自分が選んだということは、元々融和派の人々は多かったということですか?」

「そうだよ。いちいち戦争する余裕もなかったのさ。リリアーナが女王につく前は、随分と食糧難だったからね。今や畑も東西南北の広範囲に存在しているけど、リリアーナ就任前は東の森のみで、かなりきつかったからね。それを解決したリリアーナの支持は厚いのさ」


そう、ノールタルさんの口からリリアーナ女王の功績を口にして違和感が出てきました。


「すみません。ノールタルさんの話を聞いて、不思議に思ったのですが、リリアーナ女王は元々王族というわけではなかったのですよね?」

「ん? ああ、人の国は王族とか貴族とかがいるんだったね。私たちの住む地域は強力な魔物が出るからね。血よりも実力が重んじられる。そして、みんなの支持を集める人物が国のトップとなる。まあ、便宜上王とか呼んでるけどね」

「選挙制かー」

「選挙?」

「ええ。みんなの投票で国の代表を選ぶという方法です」

「ふーん。それがヒカリやナデシコたちの故郷でやってた方法なんだね。なるほど、似ているかもね。ということは、ナデシコたちの故郷の人も強いんだろうね。トーナメントで勝ち上がるんだから」

「「?」」


ノールタルさんの言うことがよくわかりませんでした。

トーナメントとかいうよく判らない言葉が聞こえた気がしたのですが……。

私たちの困惑はノールタルさんにも分かったようで……。


「ん? トーナメントはしないのかい? 戦って、優勝したものがまず優先権、人気を集めるからね。強くない人に従おうってことはそうそうないからね」

「いやー流石にトーナメントはない……のかな? どうなの撫子?」

「なんで光さんが疑問形なんですか。私たちの国では、魔物という驚異がありませんでしたからね。聡明な方が今後の国の方針などを民衆に語って、支持を集めた方が国家元首となるシステムが一般的ですね。王などの象徴はあくまでも象徴で国政に口を出すことはないことが多いです」

「ふむふむ。なるほどね」

「しかし、ノールタルさんの話ではトーナメントで戦うという感じなのでしょうか?」

「そうだよ。そこでリリアーナは優勝したんだ。それから食糧難を解決する政策を掲げて、王の座を勝ち取った。それから150年ほどはリリアーナの天下さ」

「へー。リリアーナさんって凄いんだー」

「150年ものあいだ、王の座を守れるというのはすごいですわね。その間に王の交代を叫ぶ人もいたのでしょう?」

「それはもちろんいたさ。それを全部はねのけて、今まで頑張って来たんだが、今回が一番やばいかもね……」


確かに、ルーメルの侵攻によって国土防衛をおろそかにしているなどの指摘で、徐々に力を無くして行っているリリアーナ女王。

こちらの責任だと思うと、いたたまれない気持ちになります。

そして、あんな変態にパンツを取られる羽目になるなんて……。


「ともかく、あんな魔物を簡単に倒す四天王とかもいるんだし、喧嘩する前に、話し合いをするっていうのはやっぱり賛成かなー」

「ですわね」

「私たちとしても話し合いをしてくれる方がありがたいね」


コクコクと、セイールさんたちも頷きます。

やはり、会話が平和の一歩ですね。


「さ、頑張って色々な人を調べていって、話し合いの為の情報を集めていきましょう」

「「「おー」」」


こうして私たちは、再び城の監視に戻ってドローンで会話をするタイミングを調べていくのでした。










一週間に一度と前にいったな。

あれはうそだ。


とはいえ、執筆の速度の関係で投稿できないということはあると思いますので、ご了承下さい。

なんとか遅れないように頑張ってまいります。


そして、魔族は意外と国民選挙制。

まあ、天下一●踏会にでて上位に食い込まないと支持を集められない欠点はあるけどね。


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