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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま
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第154射:やりたいことをやって

やりたいことをやって



Side:ヒカリ・アールス・ルクセン



真っ暗な空間に僕はいる。

何も感じない。

いや、ならなんで僕は真っ暗ってわかっているんだろう?

そんな疑問が出てくると、辺りを見てみると、不意にポツンと誰かが暗闇の中、立っているのが見える。


『おーい』


僕は声をかけながら近寄るけど、その声に気が付くことはなく、ずっと僕に背中を向けている。


『おーいってば!! 無視するなよー!!』


なんかとても見たことのある人に無視されているのが非常に腹立たしくて、声を大きくして呼びかける。

すると、その人はこちらに振り返って……。


『ヒカリ。どこにいるかはわからないが。頑張れ、あきらめるな。じいちゃんとの約束だ』


そんなことを言った。


『……じいちゃん』


そう、その人は僕のじいちゃんだった。

外国人の方の。


『って、あきらめるってよくわかんないし』


相変わらず、いきなり僕に剣と盾の練習させたりと突拍子のないじいちゃんだ。

まあ、だから色々なことができて楽しいんだけど。


『よくわからんか。ふむ。いや、ヒカリならわからなくていいかもな。いつものヒカリで頑張ればなんとかなる』

『はぁ。えーと、そういえば、なんでこの場所って暗いのかな?』


とりあえず意味が分からないので、じいちゃんの話は無視して僕が質問をしてみる。


『いや、それはヒカリが寝ているからじゃろう?』

『はい? 寝ている?』


ん? そういわれると確かに、なんか魔族のセイールさんたちを治療して話して……って!?

そうだ。僕は今異世界にいるんだった。

僕がそのことを思い出したのに、じいちゃんも気が付いたようで……。


『なんじゃ、寝ぼけておっただけか』

『いやいや、普通夢の中で夢ってなかなか気が付かないよ。というか、夢か……』


夢ってわかってなんか残念な気持ちになる。


『じいちゃんも夢なんだよね。だって、僕がじいちゃんと話せるわけもないもん……』


そう、僕は異世界にいて、じいちゃんに会えるわけがないんだ。

はぁ、今更だけど、家族はみんな心配しているよね。

そんなことを今更落ち込んでいると、夢のじいちゃんが話しかけてくる。


『まあ、夢の中じゃな。きっと何度も見ることもないじゃろうし、覚えてるかもあやしいな』

『……もうちょっと、夢じゃないとか言ってくれてもいいのに。あと、忘れるわけないよ』


久々に会った家族なんだ。夢だからって忘れるわけもないよ。


『じいちゃん。僕帰れるかな? じいちゃんが生きているうちに』


不意に心の片隅にあった不安を言う。

最後のおまけは付けるけど。


『くぉら!? 何を言うかと思えば、わしを殺すな。ヒカリが帰ってくるまで普通に生きとるわい』


そう僕の悪口に反応しつつ、頭にポンッと手を置いて。


『最初も言ったが。頑張れ、あきらめるな。ヒカリ。そうすればまた会える。ヒカリのやりたいことをやるといい』

『僕のやりたいこと?』

『やりかけのことを投げ出して、こっちに戻って来れる性格なわけないからな。全部やって戻ってこい』

『いや、僕のやりたいことって言われてもな~』


無理やり戦いに駆り出されて、しかも結局、相手が悪いわけじゃなくて、本当に僕たち何のためにいるのかわからないんだよ。

こんな状況でなにかやりたいことって言ってもな。


『ま、わかるさ。じゃあな。そろそろ時間だ』

『あ、ちょっと。じいちゃん。伝わるかわからないけど、家族に僕は元気にやっているって伝えて』


夢から覚めるとじいちゃんの言葉から感じた僕はとっさに夢の中のじいちゃんに家族への伝言を頼んだ。

伝わるわけもないとわかっていたけど、それでも言わずにはいられなくて、そして、それを聞いたじいちゃんは……。


『おう。任せとけ』


そう笑顔で言って、光に飲まれていった。



「……」


目が覚める。

いつものように、けだるさとか、まだ眠たいってのは一切ない。


「変な夢みた」


そんなことを言いながら、頭をかいてすぐに起き上がる。

家族の夢を今更見るとは思わなかったな。

そんなことを考えつつ、辺りを見回してみると、撫子がいない。

おそらく、もう起きたんだろうな。

寝起きがいくら良くても、撫子の起きる時間に追いつかないようだ。


「……僕のやりたいことねー」


とりあえず、先ほどの夢の中でのやり取りを思い出す。

まあ、結局夢の中の出来事だといえばそれまでだけど、なんかひっかかる。

僕のやりたいことを全部やってから戻ってこいって言われてもな。


「うーん。僕のやりたいことって何だろう?」


今更ながら考える。

行き当たりばったりでやってきたからなー。

地球に帰るってのは、やりたいこと全部やってからって言ってたから、それは除外だよねー。

で、こっちでやりたいこと?

悩んでもやっぱりわからない。

今までそういう余裕がなかったのに気が付く。


「というか、仕方ないじゃん。いきなり魔王を倒してください。修行してください。別の国に挨拶と訓練に行きましょう。魔族は実はそこまで悪い人じゃありませんでした。ってもう、無茶苦茶だもんな」

「えーと、光さん。何を独り言を?」

「ふえ?」


気が付けば、撫子がドアから顔を出した状態で、こちらを見つめていた。


「ああ、ごめんごめん。変な夢を見てさ。なんかこう今までのことを振り返ってたんだよ」

「はぁ。よくわからないですけど。朝寝たばかりでお昼に目が覚めてるのは珍しいですね」


そう言いながら、撫子は部屋に入ってきてビニール袋をこちらに差し出す。


「これは?」

「田中さんからお昼ですよ。ほら」


そう言って中を取り出すと、カップラーメンとおにぎり、サラダが入っていた。


「うーん。なんというか、社会人のお昼ご飯を見た気がする」

「あはは、そうかもしれませんね。で、光さんはお腹は減っていますか? 朝、寝る前に食べたばかりですし……」

「いや、お腹空いている!!」


目の前にご飯が在るなら僕は食べるよ!!

ということで、お昼ご飯を食べながら、さっきの話を改めて話すことになる。


「……っていうことがあってさ。ズズッ」

「無理に食べながら喋らなくても。でも、不思議ですね。光さんのおじいさんが夢の中に出てきたんですね」

「まあ、普通ならただの夢なんだけどさ。やり残したことをやってから戻ってこいって言われちゃってさ、悩んでたんだよ」

「やり残したことですか……。私たちは今日まで一杯一杯というか、状況に流されるような感じですからね」

「そうでしょう? 一応、田中さんのお陰で、操り人形みたいな形は防げたけど、結局魔族の人たちとの戦争を回避に動いているのは間違いないからねー」

「お姫様の願い通りではありますからね」


そう。いくら自分の意思で選び取ったとはいっても、お姫様の願いの範囲だからね。

なんだかなーという気持ちはなくもない。

都合のいいように使われている事実には変わりがないからね。


「でも、それを無視することはできないですよね?」

「あ、まあ、そうだよね。見捨てるのは嫌だし。お姫様が頑張って頑張って、僕たちを呼び出したんだから」

「ですよね。私も同じです。いまさら見捨てるなんてできません」

「だから手伝っているんだけど、ほかにやりたいことって言われてもなー」

「うーん。まあ、夢ですから気にしないでいいといえばそれまでですが、光さんは何か気になるということですよね?」

「うん。なんか引っかかるんだよねー。やりたいことをやってからじゃないと帰ってくるなってさ」

「やりたいことですか。まあ、ここに来て何か私たちの意思でやったことはなかったですね」

「んー。僕たちの意思で、か。でも、忙しいしねー。自由にこの世界を探検できるなら、のんびりと観光とかしたいよねー」

「そうですね。案外、そういうのが光さんのおじいさんが言っているやりたいことではないでしょうか?」

「そっかなー? ん、でも撫子の言う通りかもしれない。いつも、楽しんでいけっていってたからね」


最近は、楽しむ余裕ってのが無くなっていた気がするし。

まあ、セイールさんたちとかひどい目にあっているところとか見ていたし、そこらへんで気がめいっているよね。

うん。やっぱり撫子の言う通りかもしれない。


「なんか、納得できたよ。もっと余裕を持てってじいちゃんは言ってたんだね」

「なるほど。余裕ですか。確かに最近忙しくてそういうのがなかったのかもしれません」

「でしょ? だから、撫子、この一連のことが終わったらさ、帰る方法を見つけるついでに色々なところを観光していこう。帰った時にいろんな話できるようにさ」

「いいかもしれませんね。異世界から帰還したっていう証明も田中さんのスキルでデジカメなんかで記録しておけばいいんですし」

「そうそう。きっと、日本に帰ったら大騒ぎだよ。私たち一躍有名人になるかも」

「ですね。あとは、ヨフィアさんも無事に連れて帰ってあげないといけませんし」

「あ、そうだった。晃にはもったいないけど、一緒についてくるって言ってるんだし。一緒に日本にいって仲良く暮らそうよ。そのためにも、映像とか記録をとっておこう」

「映像もそうですが、やはり物品とかもわかりやすい異世界に行ったという証明ですね。金銭的には宝石とか金銀があればいいですね」

「おー、ならそういう貯蓄も考えないといけないね」


なんだか、未来のことを話しているとどんどんやりたいことが増えてくる。

そっか、こうしてやりたいことを全部やって帰ってこいってじいちゃん言ってたのか。


「せっかく異世界に来たんだから、魔王倒して戻るだけじゃつまらないってことをじいちゃんは言いたかったんだね」

「ええ。きっとそうですわ。なかなかできる経験じゃありませんし」

「だね。となると、まずは人と魔族の争いを止めよう。たとえ戦争になってもとめよう。僕のやりたいことだし」

「当然ですね。きっと和解させましょう」

「よーし、そうと決まったら、行動あるのみ!!」

「え?」

「朝、田中さんと晃が会話の機械作っているっていったじゃん。僕たちもセイールやノールタルさんに話聞いてみよう!! いくぞー!!」

「あ、ちょっと、光」


夢にじいちゃんがなんで現れたかわからないけど、今はっきり分かったことがある。


「異世界にきたんだから、楽しんでやるー!! 面倒なことはさっさと片づけるぞー!!」

「なんか、ふっきれすぎてませんか!?」





大変な時にこそ、余裕を、遊びを忘れないようにってやつ。

それが色々なことにつながるからさ。


ということで、俺はゲームをする!!



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