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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま
153/516

第153射:無人機改造完了

無人機改造完了



Side:アキラ・ユウキ



「ということで、ドローン無線機搭載の開発というか、最終調整を急ぐぞ」

「はい?」


俺は起きたと思ったら田中さんにそう言われて混乱していた。


「えーっと、いったい何が?」

「ノールタルとの話は覚えているか?」

「ええ。好戦派の連中に誘拐されてアスタリに来たって話ですよね?」


寝ぼけた頭でもわかる。

クソ最低の話だ。

好戦派とかいう連中とは和解できるとは思えない。


「そうだ。つまり、この話を融和派の女王に伝えることができれば、話し合いのネタにもできるし、好戦派を抑えるチャンスになるかもしれないってことだ」

「ああ、なるほど。でも、どうやって女王と……」


そこまで言って田中さんが言っていたことが理解できて、一気に寝ぼけが吹き飛ぶ。


「ああ!! だから、ドローン無線機の開発ってわけですか!!」

「そうだ。無線機でなくても、意外とタブレットの映像通話でも行ける可能性もあるからな。そっちのほうがお互い顔も見えていいと思わないか?」

「いいですね。そうすれば、ノールタルさんたちの無事もしっかり伝えられますし、信じてもらえそうです!!」


昨日ノールタルさんの話で憤りを感じていたけど、彼女のおかげで、光明が見えてきたってことだ!!


「そういうことだ。でもな、そこで寝ているクォレンとも話してみたんだが、結構事態は逼迫しているという判断にもなっている」

「どういうことですか?」

「まあ、少し考えてもみろ。あの魔族の町、お城があるってことはルーメルで言う王都のひざ元で、民間人の誘拐、財産の没収を平然とまでは言わないが行われているっていうことは……わかるだろう?」

「……それだけ、女王の立場が悪いってことですか?」

「そうだ。そこまで大胆なことをやっているってことは、戦いになるまでそう時間的猶予はないと思ったほうがいいだろうな」


確かに、田中さんの言うように人攫いが横行しているような状態での国が平和なんて絶対に言えない。

というか、もうすぐ暴動が起きる国とかのイメージしかない。


「ということで、目を覚ましたんだ。早速開発を手伝ってもらいたいんだが、いいか?」

「はい!」



そういうわけで、俺と田中さんはモニター監視をリカルドさんやカチュアさんに任せ、夜の間は開発に集中して明け方ついに……。


「できたな」

「はい。できました」


そこには、不格好ではあるが、ドローン無線搭載機が佇んでいた。


「見た目はあれだが、ちゃんと調整はしてきたからな。まあ、通信状態が悪くなれば、新しいものを俺のスキルで出せばいい」

「ええ。それで動作不良の時は代用できますから安心ですよね」

「意外と、俺の能力は便利だよな」

「いや、もともと便利ですよ」


田中さんがいなければ上空から偵察とか、話し合いをしようなんて発想が出てこなかったに違いない。

というか、この異世界での生活はもっと悲惨なものになっていたと確信がある。


「ありがとう。まあ、食事には困らないよな。ほれ、朝飯のおにぎりだ」

「ありがとうございます」


そう言って、俺は受け取ったコンビニ梅干しおにぎりを食べる。


「んー。すっぱくておいしい。梅干しが食べれるって幸せですね」

「だな。離れてみて、初めてわかるな。梅干しはうまい」

「はい。って、ドローンを急ぎ完成させたはいいですけど、すぐに使うわけじゃないですよね?」

「まあ、本当に今すぐ。ってわけでもないが、近いうちに使う予定はあるからな。すぐ使うに分類されると思うぞ? 一般的な感覚だとすぐ使うは今すぐって感じなんだろうがな」

「あー、確かに。やっぱりそういうところはまだまだズレがあるんですね」

「そこは軍事と一般の違いだろうな」


そんなことを話しながら簡単に朝食を済ませる。


「でも、具体的にはこれからどうするんですか?」

「ひとまずは、このドローンが完成したことを大和君やルクセン君に話すところからだな。あの2人はドローンを使って話そうって構想も知らないはずだからな」

「ああ、そういえばそうですね」

「ということでだ。朝食ついでに、2人を呼んできてくれ。これはヨフィアとキシュアの分な」

「わかりました」



ということで、田中さんに言われて2人を呼びに行ったのだが、案の定あの頑張り屋たちは部屋におらず、地下のほうへいくと……。


「何、一緒に寝てるんだか」


そこには、セイールさんのベッドに沈む光と、丸椅子に座ったまま器用に寝ている撫子がいた。


「仕方ないですよー。ヒカリ様はずっとセイールさんとお話ししていましたから」

「ナデシコ殿もノールタルさんがお休みになったあとは、他の女性たちの様子をうかがって、ようやく寝たのです」

「まったく、頑張るよなー。と、申し訳ないですけど、ヨフィアさん、キシュアさん、2人を借りていいですか? 田中さんが話したいことがあるって」

「ええ。構いませんよ」

「はい。こちらはお任せください」

「なるべく早く済ませますんで」

「いえー。ゆっくり休ませてください。さっきも言いましたけど、お2人は頑張っていましたし」

「ですね。2人がいるからこそ治療できたのです。休めるときにしっかり休んでください。ここのことは、ソアラギルド長やイーリス副ギルド長と交代でということになっていますので、心配はありません」


2人の顔はマジだ。

ちゃんと最後までやり切るって表情をしている。

ここで無理にいうのもだめかと思うし、ソアラさんたちが来ることになっているのならそこまで心配する必要はないだろうと納得する。


「わかりました。と、これは田中さんから差し入れです。少ないですけど……」

「いえいえ。やったー! チョコですよ、チョコ! タナカさんはなんだかんだ言ってわかっていますよねー。これで徹夜も平気ですとも」

「はぁ。私の分もちゃんと残しておいてください。と、差し入れありがとうございますと伝えておいてください」

「ええ。伝えておきます」


そう言って俺は2人に話をすませたあと、寝ている撫子と光を何とか起こして田中さんのところへ連れて行く。


「ねむいー……」

「いや、お前俺の背中で寝てるからな」

「ふぁ……。申し訳ありません。流石に眠くて……」


しかし、珍しく撫子まで眠たそうにしている。

本当に付きっ切りで頑張ったんだな。

というか、光は本当に軽いよな。

女の子特有の柔らかさはヨフィアさんに軍配が上がる。

いや、比べるだけ失礼か。


ドンッ!


「いてっ!?」

「んあ? なんかスゲーむかついた。むにゃ」


コイツ……。

起きているだろう?

そんなことをしているうちにすぐに俺たちの部屋へとたどり着く。


「うわー。ここで僕にいやらしいことをするきだー」

「……やっぱ起きてたな」

「そりゃね。晃の若いリビドーが暴走して襲うかもしれないって」

「さっさと降りろ」

「へいへい」


まったく腹が立つが今はそんなことをしている暇はない。なぜなら……。


「結城君よく我慢したな。あとでルクセン君は訓練を増やすようにしておこう」

「ふぁい!? なんで!?」

「今は、ちょっと冗談やっている暇はないんでな。とりあえず、朝食は適当に出したから、食べて目を覚まして聞いてくれ。その後は寝ても構わないから」

「……え? 本当に僕たちが治療しているうちに何があったの?」

「もしかして、魔族に動きがあったのですか?」

「え、ええ!? ちょっと、まじ!?」


撫子の推測で慌て始める光。

まあ、それに近いからある意味撫子もすごいよな。


「当たらずとも遠からずってところだな。まあ、その話をするつもりだから、食いながら話を聞け。体力を回復するために食事は必要だからな。昨日看病に集中していて碌に食ってないのは、ソアラたちから聞いている」

「「うっ」」


ああ、なるほど。だから、田中さんは向こうに行かないでわざわざ2人をこっちに呼ぶように言ったのか。

そして2人は差し出されたコンビニご飯を口にし始める。


「あー、梅がおいしい」

「懐かしいですわね。そういえばこういうのを最近食べていませんでした」


俺と同じ感想を言う2人。

なんか、梅干しをとっちゃうよな。

あと、ツナマヨ。

おにぎりでは定番だな。

そんな感じで、二人がおにぎり一つ食べ終わるころに、田中さんが口を開く。


「先ほども言ったが、食べながら聞いてくれ」


そう言ってから、田中さんは俺に話した内容を再び丁寧に説明する。

説明が終わるころには、ご飯は食べ終えていて、そのまま話し合いになる。


「なるほどねー。ドローンに無線機を付けたわけか」

「確かに、融和派の勢力とコンタクトを取るには、これが一番安全だと言えます」

「と言っても、ノールタルさんやセイールの協力が必要不可欠ってことでしょう?」

「ま、大事な証人だからな。最終的には、映像会話で融和派の女王と交渉できればとは思っている」

「それが出来れば、もう平和になったも同然だよねー」

「……光さんの言うようには簡単にいかないとは思いますが、そうなれば今よりも確実に平和への道が見えてくるとは思います」


どうやら、2人ともドローンでの会話は十分現実的だと思っているようだ。


「2人が協力してくれるなら、ノールタルたちにこの話をしてくれ。まあ、急ぎはしていないが、時間はそれほど余裕があるとは思えない。理由はさっき話した通りだ」

「……まあ、言われてみればそうだよね。首都で誘拐が横行しているって、かなり治安が悪いよね」

「それで、現政権の力が盛り返すとはなかなか思えませんわね。だから、早めに手を打たないと協力する暇もないということですね?」

「ああ。手遅れになってからじゃ遅いからな」

「……わかったよ。でも、無理はできないよ。ねえ、撫子?」

「ええ。時間がないのはわかりますが、まだ無理ができる状況ではないです」


撫子はそう言ってしっかりと田中さんを見つめ返す。

撫子的には彼女たちには無理をさせません。って意味なんだろうな。

で、俺がわかって田中さんがわからないわけもなく……。


「それはわかっている。こっちとしても、ドローンが完全に完成したわけでもないしな。もっと調整したいことはある。先ほど言った映像会話とかな。とはいえ、話を聞くだけでもしてくれ。誰と会話をすればいいのか見当は付けておきたい。さすがにいきなり女王に近寄って話すとかは賭けが過ぎるからな」


素直に納得して、なおかつ、ある程度話を進めてくれるように頼む。

でも、ドローンで映像会話の開発かー。

まあ、同じような感じで置いて固定するだけなんだろうけど、どうやってアプリを起動するかとかを考えないとな。

あ、遠隔操作とかの応用で行けるのか?

と、俺はドローンの改造計画を考えていると、話が終わったようで……。


「じゃ、俺の話は以上だ。あとはこのまま休め。ドローンの件については俺と結城君で進めておくから。なあ?」

「ええ。撫子と光に彼女たちのことは任せきりだしな。こういうことで役に立つよ」


俺がそういうと、2人は頷いて……。


「うん。ドローンとか機械系は任せた。で、僕は寝る」

「……そうですね。流石に限界です。申し訳ないですが、少し休みます」


こうして2人はようやく部屋に戻って休んだ。

さて、あとは……。



「ま、こういう裏方は地味な作業の繰り返しだ。いけるか?」

「ええ。全然余裕ですよ」


ということで、新しいドローンの開発にいそしむのだった。




こうして交渉を兼ねつつ兵器を開発する田中。

戦いとは発明の母である。

皮肉だねー。



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