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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま
135/516

第135射:忙しい夜とのんびりした朝

忙しい夜とのんびりした朝



Side:アキラ・ユウキ



無事に? 聖女様の手助けが終わったあと、俺と田中さんは、魔族の町と城の監視をリカルドさんに任せて、映像の解析をしていると……。


「田中さん、この映像」

「ん? 何か映って……るな」


そう、この映像は俺がドローンでグレネードを撃って、姿勢制御をなんとかして頑張っている所で、画面がかなり揺れている所なんだけど、そこには、わずかに撃って倒れている盗賊、野盗の姿が映っていた。

立派な鎧の姿で。


「野盗、盗賊にしては、立派な鎧を着ているな。しかも、鎧の紋章はリテア聖国の紋章ときたもんだ」

「やっぱり、そうですよね」


田中さんの言葉を聞いて、俺の見間違いではないということがわかる。

倒れている連中は、どうやらリテア聖国の騎士で間違いないみたいだ。

となると……。


「間違って攻撃しちゃったんですかね?」


そんな不安が浮かんできた。

誤射したのか? 味方を殺したのか?

そんな風に思ってくると、体が震えて……。


「落ち着け。そういうことはないから。まず、森の中からこっそり様子を窺っている時点でおかしいからな」

「こっそり見守っているとか……」

「いや、どこに見守る要素があるんだよ。考えすぎだ。ここは魔物がいる世界なんだぞ。しかもただの女の一人旅じゃない。元とはいえ、リテア聖国のトップだった聖女様だ。それから考えると、明らかに敵対する行動だな」

「でも、そうなると、あの連中が聖女様の動きを監視していた理由って……」

「そりゃ、暗殺だろうな。この世界は魔物が普通にいるからな。町の外で殺せば殺人とは思われないだろうさ。というか、死体が残るかも疑問だな」


……確かに。

魔物に食われて骨も残らない冒険者もいるって聞く。

オーヴィクたちと協力して倒したオーガも人を食べるって聞いたしな。


「だけど、なんでこんなことを……」

「前に、元聖女様が失脚したって話があっただろう?」

「はい。って、まさかその政治の関係で、邪魔になったからってことですか?」

「それぐらいしか想像がつかないな。リテア聖都で殺すのは流石に目立つし、さっきのような状況が便利だろうな」

「そんなドラマみたいなこと……」


あるわけないと言おうとしたのだが、田中さんが……。


「いや、俺たちも十分に召喚されてとか、どこかのファンタジー映画の始まりだぞ」

「……」


そう言われると何も言えなくなる。


「無事に逃げているといいな」

「はい」


お世話になった人だ。

無事でいてほしい。

それを願って田中さんと一緒に夜空の星を眺めていると、リカルドさんが顔を出してきて……。


「田中殿。時間です。交代をお願いします」

「了解。結城君はもう休むんだな」

「え? でも、魔族の町と城の監視が……」

「無理はしなくていい。俺が交代でやっておく。特に目立った動きもないだろうからな。それに、ドローンを使わせた仕事もしたから、それで働いたことになってるから、気にするな」


田中さんはそう言うと、背中を向けて、モニターを手に取って見つめている。

こうなると、交代はしてもらえないな。

俺は大人しく、馬車の方に戻って、休むことにした。


でも、横になってもしばらくは寝付けないで、先ほどのことが頭の中を何度もよぎる。

聖女様が解任されて、1人で外に飛び出しているって、一体何があったんだろうな。

魔族の動きもあるかもしれないって、田中さんは言っているし、これからどうなるんだろう。

なんか、当初のイメージとはずいぶんかけ離れているよな。

最初は勇者だなんだのって言われて、魔王を倒すために旅立ってとか、のんきなことを考えていたけど、大人の事情っていうか、よくよく考えれば当然のことを聞かされて、そんな魔王を倒せば終わるような話でもないって分かった。

結局の所、種族が違うからっていう差別意識からくる戦争なんだよな。

いや、まだ魔族との戦争は始まってないか。

ただ、ロシュールとガルツが戦争しているって感じか。


「星はこんなに綺麗なんだけどな」


俺が見上げる夜空には満天の星空が広がっていて、戦争なんてしていることなんか馬鹿らしくなってくる。

そんなことを考えていると、なんか眠くなってきて……。



「おーい。起きなよ。晃」

「起きてください。晃さん」

「アキラさーん。たべちゃいますよー」


気が付けば、光たちにゆすり起こされていて、空には太陽が昇っていた。


「……おはよう」


体を起こすとちょっとまだ眠い。

昨日寝るのが遅かったせいか?


「おはよー。っていうか、何で馬車の入り口でグースカ寝ているのさ?」

「ん?」


そう言われて、辺りを見回してみると、俺は帆立て馬車の後部の入り口で寝ていることに気が付いた。


「ああ、ごめん」


俺はそう言いながら、横によけると、光と撫子が馬車の中に入ってくる。


「危うく、踏みつけるところだったよ」

「ヨフィアさんが教えてくれて助かりました」

「ありがとうございます。おかげで光に踏まれずにすみました」

「いえいえ。でも、ヒカリ様の言う通りなんでこんな所で寝ていたんですか?」

「えーと、なんか寝つけなくて、星を見ていたんですよ」


隠す理由もないので、素直に言うことにする。

でも、夜の聖女様を助けた件は、田中さんからの許可を貰っていないので黙っておく。

光とか聞いたら、追いかけようとか言い出しかねないからな。


「えー、晃が星って似合わないねー」

「失礼ですよ。光さん」


光は予想通り似合わないと言ってくる。

うるせえよ。自分でも似合わないの知っている。

もうちょっと、お前は撫子みたいな、周りに気を使う人間になれよ。

と、そんなことを言えば喧嘩になるのは見えているので、ぐっとこらえていると、ヨフィアさんが首を傾げて……。


「ほしって、夜にでる星のことですか?」

「はい。やっぱり、地元とは違って良く見える満天の星空なんで、魅入っちゃいました」

「? 夜に星がよく見えない所があるんですか? 曇りばかりの地域ですか?」

「「「……」」」


意外な、ヨフィアさんの反応に3人で顔を見合わせる。


「あれだよ。こっちの世界じゃ、星空は普通に見えるのがデフォルトなんだよ」

「確かに。夜になれば真っ暗ですからね。地球の日本の様に星空を妨げる光源は有りませんからね」

「とりあえず、そんなことを言っても分からないだろうし、適当にごまかす」


俺はそう言って、ヨフィアさんに向き直ると……。


「えーと、俺の住んでた家の部屋って窓が無くてさ、こうしてマジマジと夜空を見る機会がなかったんだよ」

「あー、なるほど。夜になると真っ暗で辛いですよねー。あ、でも、ランプみたいなのがあるか困らないのか」


俺の説明にヨフィアさんはあっさり信じてくれた。

そんなことをしていると……。


「おーい。お話はいいとして、その様子だとルクセン君、大和君の調子はよさそうだな」


田中さんがやってきて、光たちの様子を伺う。

そういえば、元々2人が車酔いしたから早いうちに野宿することにしたんだったよな。


「あ、うん。休んだから元気いっぱいだよ」

「はい。昨日はご迷惑をおかけしました」

「もうすぐ出発するから、酔い止めは皆飲んでおけよ。あと、気分が悪くなったら必ず報告しろ。我慢をすることないからな」

「「「はい」」」


田中さんにそう言われて、俺たちは酔い止めを飲んだりして、出発の準備を整える。

酔い止めはお姫様たちも飲んだようだ。

流石に映像監視は辛いからなー。

そして、ほどなくして、馬車での移動を開始する。

相変わらず、道中はのんびり馬車で進んでいくだけの旅路で、魔物が出る様子もない。

そんな感じで草原をゆったりと進んでいると、田中さんが話しかけてくる。


「昨日のことは話してないみたいだな」

「ええ。話すと光が助けにいくとか言い出しかねませんから」

「そうだな。ルクセン君はまっすぐだからな」

「でも、聖女様無事に逃げられましたかね?」

「さあな。昨日の夜も言ったがもう確かめるすべもないからな。というか、本人は逃げたっていう意識もないだろうからな。馬が逃げただけだし。俺はそれに巻き込まれて墜落とか、なかなかないよなー」

「そういえばそうでしたね」


意外なことに昨日の聖女様援護作戦の時は俺よりも先に田中さんの操作するドローンが落ちたんだよな。

そして、俺もグレネードで盗賊というか、追手の騎士たちをグレネードで吹き飛ばして墜落で聖女様を追えなくなったんだよな。


「まあ、向かっていた方角から察するに、ロシュール方面だったからな、弟子のエルジュ王女にでも会いに行ったんだろうな」

「会ってどうするんですか?」

「そりゃー。リテアの話をして、聖女がきっかけで戦争になったかどうかを真実か問いただすんだろうさ。それで無実なら、無理やり聖女から解任した連中はピンチだからな」

「いや、それって、ロシュールが素直に侵略しましたって認めるもんですかね?」

「国としては認めるわけがないだろうな。だからこそ、リテア聖国の連中は何としても、ロシュール行きを阻止したいわけさ。元聖女様がロシュールの支援を受けて戻って来れば、かなり問題だからな」

「ああ、だから聖女様はロシュールに行ったわけですか。復権するために」

「恐らくな。他の狙いがあるなら俺にはよくわからん。グランドマスターの爺さんなら何か知っているかもしれないが……」

「でも、とりあえず、闇雲に逃げ出したわけじゃないって分かってよかったですよ」


やっぱり聖女様だから色々考えているんだよな。

俺が心配するまでもなかったな。

ロシュールに行って味方を集めて元気に戻ってくれるな。


「で、聖女様はいいとして、アスタリの町はどうなんです?」

「どうっていうのは? 今の所、魔族が攻めてくることはなさそうだが」


そう言って、田中さんは平和な魔族の町を映しているモニターをこちらに見せてくる。


「仲良くできそうなんですか? そう言えば、仲介役のクォレンさんって一緒に出て来てから全然話してないけど、何かあったんですか?」

「ああ、クォレンは寝てる」

「寝てるって昨日からずっとですか?」


御者の隙間から荷台を覗くと、座って顔を下げたまま動かないクォレンさんがいる。


「……そういえば、昨日からあの姿のような気がする。昨日の朝は普通に乗り込んできていたのに、具合が悪いとかはないんですか?」

「ないない。あのクォレンは一応冒険者ギルドのギルド長だからな。自分の体調管理ぐらいできるさ。ああなっているのは、アスタリの町に行くために、仕事を一括で終わらせたからだな」

「あー……」


そういえば、クォレンさんっていつも書類仕事をしているイメージがあるな。


「ま、起きるまでそっとしておいてやれ。アスタリの町では活躍してもらう予定だからな」

「そんなに、アスタリの町って荒れているんですか?」

「荒れているというか、ほれ、俺たちの情報で魔族の拠点を潰したからな。そこら辺で領主とか冒険者ギルドもかなり忙しかったみたいだな」


そうだった。

ただ見物に行くんじゃなかった。

僕たちが向かう先は……。


「魔族と戦うための最前線基地なんですね」

「そこまで物々しい場所でもないがな。とはいえ、そのための準備はしているからな。ま、面倒は覚悟しておけ」

「はい。俺たちも大変なんだなー」

「そうだな。俺たちも俺たちで大変なんだ」


そう言って、田中さんと笑い合えるぐらいには最近余裕がでてきたのはいいことかな?





色々夜はあったけど、旅はそのままのんびり進んでいく。

アキラもこうして大人になっていく。

タナカは相変わらず。


ルルアは無事に逃げ切れたのか!?

ま、それはそれとして、クォレンは仕事疲れでずっと寝ている状態です。

さて、アスタリの町にはこのまま無事につけるのだろうか?


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