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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま
134/516

第134射:野宿での仕事

野宿での仕事



Side:タダノリ・タナカ



「「うーん」」


そんな感じでぐったりしているのは、ルクセン君と大和君だ。

馬車の移動中にドローンでも監視を任せていて、車酔いしてしまったというやつだ。

正直、俺の配慮が足りなかった。


車でも荒れ地じゃひどく揺れるので、気分が悪くなることは軍人でもよくある。

それが馬車になればもっと揺れるに決まっている。

つまり、酔って当然ということだ。

幸い、2人はやせ我慢するタイプではなかったので、すぐに停車できた。

車酔いっていうのは最悪、気絶中に嘔吐して、窒息死という危険性もあるものだからな。

2人が落ち着くまで待機だが……。


「もう、日が落ちてきましたね」

「今日はこのまま野宿がいいと思いますが?」

「だな。これ以上無理する必要はない」


結城君の言うように休んでいるうちに、既に暗くなってきている。

このまま移動できないことはないが、無理をして移動する理由もないので、リカルドの提案を受け入れて野宿の準備をする。

ああ、お姫さんたちは、ルクセン君と大和君の看病だ。

とはいえ、俺たちの場合は焚火を作る必要もないからな。

明りはランプ、火は携帯コンロと便利なので時間はさほどかからない。

ささっと、準備を整えたあとは、ゆっくりするだけだ。


「……ごめんねー」

「……申し訳ございません」


そういって、立ち上がっているルクセン君と大和君。

どうやら、そこまで重症でもなさそうだな。

それだけは幸いだ。


「いや、気にしないでくれ。こっちの配慮が足りなかった」


俺はモニターの監視をしながらそう言う。

モニター向こうの魔族の町は今日も一日平穏に終わりを迎えようとしている。


「魔族の町の方もこうして、のんびり一日が終わりそうだしな」

「ほっ。よかった」

「しかし、私たちのあとは、田中さんが監視をしていてくれたのですか?」

「ん? ああ、移動しながらの監視は慣れているからな。だからこそ、車酔いのことを失念していた。すまなかった」


今回のことは完全にこっちのミスだ。

普通は車酔いする。

俺だって最初は薬でごまかしていたりしたからな。


「いえ、こちらも不調をもっと早く伝えるべきでした」

「だね。てっきり少し気分が悪くなっただけで、直ぐよくなると思ってたのに。こんなに、車酔いがひどくなるなんて思わなかったよ」

「日本はかなり道が良いからな。車酔いしても重症化することはないだろうからな。ま、これからはこれを使うといい。酔い止めの薬だ。明日の移動一時間前には服用しておくといい」

「ありがとうございます」

「ありがとー」


話している内にも徐々に体調が回復しているようで、いつもの元気な口調に戻って来ている。

これなら、明日は無事に出発できるだろう。


「じゃ、今日はゆっくり休むといい。夜の監視からは外しておく」

「え? やったー!」

「いいのですか?」

「体調が悪かったんだ。明日まで引きずってもらってもこまるからな。今日はゆっくり休むといい。ほれ、しっかり食って休めよ」


そう言って、俺は地面に本日の夕食を並べる。

主にカップ麺と缶詰だ。


「いやいや、これが良いんだよねー」

「ですわね。この世界の携行食料は味気ないか、味が濃すぎますし」



2人はそんな感じで、しっかりと食事を済ませたあとは、やはり体調を崩したことで、疲れてもいたのだろう。

横になったと思ったらすぐに寝てしまう。


「くかー」

「すぅ……」


女性だからか、それともまだ学生だからか、俺には寝ている2人からは愛嬌を感じる。

そんなことを思っていると、結城君がやってくる。


「おーい、光、撫子、この肉の缶詰意外と美味いぞって、寝てる?」

「ああ、意外と疲れてたみたいでな」

「ま、あれだけゲーゲー吐いてたら疲れますよね。ご飯食べずに寝ちゃったか」

「いや、しっかり食べたぞ。カップ麺と缶詰」

「え? あ、本当だ。なんだ、食べれるぐらいには回復したのか。よかった」

「そうだな。で、ヨフィアたちはどうしているんだ?」

「あ、カップ麺と缶詰を食べてもう休んでいますよ。意外と女性って寝るの早いですよね。いや、タフなんですかね? 未だに俺は馬車の睡眠って慣れないんですよねー」

「女は強いって言うからな。どんな環境にも適応するんだろうよ。と、すまない結城君。まだ起きているなら手伝ってほしいことがある」


俺は話を切って、手に持っているモニターを見ながら結城君にそう言う。


「いいですよ。モニターに何か動きでもありましたか?」

「そうだ」

「え!? なら皆を……」

「起こす必要はない。魔族の方じゃなくて、リテアの方だからな」

「リテア? そっちにもドローン飛ばしていたんですか?」

「ああ、グランドマスターの爺さんにできる限り、聖女様を助けてやってくれって言われててな。あ、今は元聖女様か。で、そっちに動きがあった。ということでほれ」


俺はそう言うなり、モニターを1つ結城君に渡す。


「ちょっ!? 危ないですよ」

「ナイスキャッチ。操作方法はわかるな。今から元聖女様の援護だ。ドローンは使い捨てで行く」

「え? え? ちょっと話が分からないんですけど」

「まずは状況を説明するから、モニターを見て操作用意してくれ」

「あ、はい」


俺は結城君がしっかり操作パッドを持ったのを確認して状況を説明する。


「どういった理由か分からないが、元聖女様は本日昼に聖都を出た。1人でだ」

「1人で?」

「ああ、何か用事でもあったのか、1人で馬に乗って駆けて行ってる。それがこのモニターだ」

「確かに、馬を休ませて、休憩中ですかね?」


モニターの中には、馬を繋いで、たき火をしている1人ぼっちの元聖女様が映っている。


「恐らくな。問題はその後ろの森の中」

「森の中?」


そう言って俺がドローンを操作して森の中を映すとそこには……。


「……なんかこっそり聖女様を見ている連中がいますね。灯りもつけていないし、怪しいですね。盗賊ですか?」

「さあな。でも、このまま放っておくと、聖女様は襲われてしまう可能性が高い。爺さんとの約束もあるから、助けられる限りは助ける」


俺としてもまだ使い道があるからな。

これで恩を売って今後会うときに何らかの譲歩が求められる可能性がある。

リテアの元とはいえ聖女を務めていたんだ。助けるメリットはありすぎる。


「わかりました。でもどうやって、あの盗賊もどきをやっつけるんですか? ドローンって何も武器持ってないですよね?」

「いや、このドローンは、ジョシーの時と同じように銃器を載せているから、戦えないことはない」

「銃があるなら安心ですね」

「とはいえ、問題がないわけもでない。基本的に今操作している武装ドローンは銃の反動に耐えるための姿勢制御がないから1発或いは2発が限度だな。それ以上はひっくり返って墜落だな」


別に俺はドローン開発者でもないからな。

銃を撃っても安定しているドローンを作ることはできない。

出来るのは即席で石をくくり付けて、カウンターウェイトを置いて反動をなるべく抑えることぐらいだ。


「……それって難しくないですか? というか、今気が付きましたけど、銃声とかしたら、却って気を引いて危険じゃないですか?」

「そこは、馬を逃がして追いかけさせるとかだな」

「馬が逃げて徒歩になって死ぬとかないですよね?」

「そこまで面倒はみきれん。どうせ俺たちが追いかけるすべはないからな。ま、このまま盗賊の連中に襲われるよりは生きる可能性は高いだろうさ」

「確かに」

「じゃ、木に結び付けている手綱を銃撃で外すぞ」

「えっ!? それ森の方に隠れている盗賊たちが気が付きませんか?」

「静かに誘導する方法がないからな。ま、元聖女様が遠ざかってくれるなら、どうとでもなるだろうさ」

「なるほど」


いささか乱暴な方法ではあるが、これぐらいしか方法を思いつかない。


「じゃ、俺が手綱を撃って馬を逃がす。下手をすると、これで俺のドローンは横転するから、盗賊への攻撃を頼むぞ」

「はいって。あんな人数を全部倒せないですよ」

「大丈夫だ。まあ、全員は倒せないだろうが、結城君のドローンはグレネードを持ってるからな」

「グレネード!?」

「別に驚く話じゃない。リテアは変な魔物被害が多かったからな。それを踏まえて広範囲を吹き飛ばす武器を持たせてただけだ。適当に狙えば当たるしな。そういう意味でも心配いらないぞ」

「なるほど。そういえばそうですね」

「運よく、射撃後に操作できるなら、そのまま連続で撃ってくれ」

「はい」

「それじゃ、2200に作戦開始だ。皮肉にも魔族の城の時と同じ時間だな」

「はは……」


そんなことをいって、お互い苦笑いしたあと……。


「やるぞ」

「はい!」


一瞬で気持ちを切り替えて配置につく。

画面の向こうでは、元聖女様は疲れているのか、たき火をみてうつらうつらしている。

女の1人旅なんて危険極まりないと思うんだが、1人で出てきたそれ相応の理由があるんだろうな。

元とはいえ聖女様。しかもあの驚異の回復力を誇るエクストラヒールの使い手だ。

それを1人で行動させるようなことはないだろうから、おそらく何かがあって1人で出てきたんだろうな。

映画モノの観点から見ると、追っ手はリテアの暗殺部隊ってか?

ま、そんなことはどうでもいい。

とりあえず、やれることをやるだけだ。


「よし、こっちの銃声が聞こえたら、結城君も盗賊たちを撃て。ああ、先に動きそうなら撃っていいぞ」

「わかりました。でも、そういうのはよくわかりませんから、なるべく早く頼みますね」

「わかった」


幸いなことにうつらうつらしている元聖女様は注意力が散漫していて、近づくのは容易だった。

馬はこちらを見て警戒していて、俺から距離を取っている。

うん。これは幸いだ。

馬を撃つ心配はない。

俺はゆっくり落ち着いて照準を合わせて……。


「撃つぞ」

「はい」


『パンッ』


乾いた音があたりに響く。


『ヒヒーン!!』

『ふえっ!?』


銃撃音に馬と元聖女様も驚く。

そして、馬はすかさず駆け出し……。


『あ、ちょっと、まってください!?』


そう言って、元聖女様がなぜか、俺のドローンの方に駆け寄ってきて……。


「ちょっ!?」


『ドンッ』


という衝撃と共に、画面がひっくりかえる。

うそだろ。


『とと、寝ぼけている暇はありませんね。追いかけないと!!』


そんな声が聞こえて、足音が遠ざかっていく。

まさか、寝ぼけてぶつかられるとは……。


『ドーン!』


そんなことを考えているうちに、結城君も盗賊というか野党たちを攻撃したようだ。

ちっ、もう復帰は不可能だな。このドローンは消して、結城君の様子を見に行くと……。


「すいません。墜落しました」

「そうか。気にするな。うまくいけばって話だったしな。俺も油断して墜落させた。まあ、映像見ればわかるさ」

「聖女様、無事ですかね?」

「さあな。まあ、逃げて行ったし、あとは彼女の幸運を祈ろう」


追跡させていたドローンは二台ともお陀仏だし、今から新しく別のドローンで追いかけても、見つけられる可能性は低い。

流石にそこまでやるつもりはないからな。

約束は果たしたぞ、爺さん。映像は記録しているから、報酬もらいに行くからな。




そしてようやく、必勝ダンジョンとの接点が見えてきました。

ルルアはリテアをなぜか一人で脱出。

その意図とは?


そして、それを助ける田中と晃。

こうして物語は続いていく。


ある意味、ルルアはかなり大物かね?

田中にユキと豪華メンバーに助けてもらっている。


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