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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


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第129射:変態にやっぱり世界は厳しい

変態にやっぱり世界は厳しい



Side:アキラ・ユウキ



「……きて、……さい。起きてください」

「ん?」


そんな声と共に体を揺さぶられて、俺は目を開けると、そこには撫子がいた。


「おはようございます」

「……あー、おはよう」


そうか、俺は寝てたんだったか。

光たちが持ってきてくれたご飯を食べたあと、さっさとベッドに横になってすぐに寝ちゃったんだっけ。


「なんか、あった?」

「いいえ。特には」


映像解析の方は特に何もなかったようだ。

まあ、そう簡単に何かわかるわけもないよな。


「あ、でも、変態はいたようですよ」


と、思っているとなぜか撫子から冷たい底冷えするような言葉が出てきた。


「変態?」


なんでいきなり変態なんて言葉が出てくるんだろうという思いの前に、あまりにも冷たい言葉で一気に目が覚める。

すごくゾッとした。


「晃さんは、ああいう趣味はないですよね?」

「あ、はい」


とりあえず、返事をしておく。

下手な返答は命を落とすと思ったからだ。


「そうですよね。晃さんはあんな変態的趣味はないですよね。変なことを聞いてごめんなさい。さ、隣のヨフィアさんも起こさないと」

「そ、そうだな」


撫子の様子がおかしいのは後で調べるとして、横で寝ているはずのヨフィアさんを起こさないとな。

そう思って、ベッドの方に視線を向けると気持ちよさそうに寝ているヨフィアさんがいる。


「すかー」


なんというか、気持ちのよさそうな寝息を立てている。

起こすのがなんか申し訳なくなってくるよな。


「と、ヨフィアさんが寝ているので思い出したけど、撫子は何で起きてるんだ? 光たちと交代だったよな?」

「ええ。交代して寝ましたよ。ただ単に晃さんたちよりも早めに目が覚めただけですよ。というか、ほら、すっかり朝ですし」


そう言われて、窓の外を見てみるとすっかり日は上っていて、部屋の中も明るいことに気が付く。


「もしかして、かなり寝坊したか?」

「いえ。日が昇ってから少ししか経っていませんから、普通です」

「そっか、よかった。で、起こしたってことは、朝ご飯か?」

「はい。あまりのんびりしていると、光さんが怒りますわよ?」


撫子はそう言って、スッと横によけると、奥にいる光がモニターを見つめているのが見える。


「意外と頑張ってるんだな」

「ええ。だからこそ……」

「晃。起きたならさっさとご飯食べてきて取ってきてよ」


と、光がモニターを見たままそう言ってくる。


「わかったよ。すぐ食べてくるから頑張れよ」

「うん。戻ってきたら、面白い物を見せてあげるから」


……何か不穏なことを言っている。

おそらく、さっき撫子が静かに怒っていた理由だろう。

面白い物ねー。

嫌な予感しかしないが、まずは言われた通り、ご飯を取ってこよう。

そのために、まずはヨフィアさんを起こすとしよう。


「ヨフィアさん。起きてください」

「んー? んん? あ、アキラさん。夜這いですか?」

「寝ぼけてないでさっさと起きな」

「……うわー。ババア。まだ居やがったんですね。もうちょっと遠慮というのもを覚えてはどうですか?」

「朝から一発やろうとしている、お前がいうな」

「……へ? 朝? あ、本当だ」

「ということで、食事に行きましょう。光たちもまってますから」

「そういうことなら仕方ないですね」

「なんで、お前は勇者殿たちのことなら素直に言うことを聞くんだい……」


とまあ、そんなことがありつつも、俺たちは下に降りて普通に食事をとって、光たちの分を貰ってきている時に気が付いたんだけど……。


「そういえば、田中さんいなかったよな?」

「あ、ですね。タナカさんがいませんでしたね」


いまさらすぎるが、田中さんがいないことに気が付いた。

ヨフィアさんも同じようで、自分たちの周りをきょろきょろと見回している。


「大丈夫ですよ。田中さんは、先にご飯を食べてクォレンさんの所です」

「ギルド長の所って、何かリテアで問題でも起きたのか?」

「いえ。それを確かめるために顔を出してくるといっていました」

「なるほど。なにか続報とかあるかもしれないですからね」


そっか、細かい情報収集ってことか。

ここが、地球ならな~。電話やメールで一瞬なんだけど、ないものは仕方ないし、足で稼ぐしかないのか。

田中さんは気が付かないところでしっかり頑張っているよな。

そんなことを話しつつ、部屋に戻ると……。


「おらー、アキラ。肉よこせー!」

「アキラ様。早くお肉を。なんか、よほどお腹が減っているらしくて……」

「ただの冗談ですので、お気になさらずに」


なんか、光とお姫様が仲良く演技をしていた。


「どうした? 徹夜ってわけでもないだろう?」

「うわー。空気読めないよ。というか、徹夜ってわけでもないけど、夜に起きてたんだから、そこら辺はいたわれよ~」

「あー、はいはい」


五月蠅いので、とりあえず持ってきたご飯を渡す。


「ありがとーって、野菜炒めじゃん!?」

「肉は入ってるだろう?」

「ちょこっとじゃん!? 肉って言ったからには……」

「いや、俺が出た時リクエスト聞いていないし、ナデシコは聞いてたか?」

「はい。お肉お肉というので、体の栄養バランスを考えてこの料理を持ってきましたわ」

「うわ!? 撫子が敵だった!?」


どうやら、撫子がこの小さい肉食獣のことを考えて野菜炒めにしたようだ。


「で、そういう冗談は良いといたしまして、光さん、お姫様、あのことを話しても?」

「「……」」


撫子がそう言うと、2人は一転無表情になる。

無論、撫子も底冷えのする無表情になっている。


「……さっきから、撫子がこの話になると怖いんだが。一体何があったんだ?」


どうせこのままじゃ仕方ないので、思い切って光に聞いてみると……。


「あー、昨日の夜ね。フクロウさんが、魔族のお城を監視している時にあることに気が付いたんだ」

「あること? っていうか、昨日の夜、やっぱり何か見つけたんだな。なんで起こさなかったんだ?」

「それは、正直、あまり見ていて気持ちの良いモノではなかったですからね。私も、あの映像を見て身の毛がよだつ思いでしたから」

「だよねー」


この二人がそこまでのことを言うなんて、というか、お姫様やカチュアさん、キシュアさんも女性陣は怖い目になっている。


「……リカルドさん。これって聞くべきですか?」

「……正直、聞きたくない内容ではあるが、聞かなくては前に進まない内容ですな」

「逃げ道なしか……」


仕方がないので、覚悟を決めて俺も聞くことにする。


「よし。俺も覚悟を決めた。何があったか聞かせてくれ」

「「「……」」」


俺の覚悟の言葉に女性陣は何も言わずに、ただモニターの画面を操作して、ある映像を付ける。


「なんだこれ?」


画面は暗くてよく見えない……。

ん? よく見るとこれって、魔族のお城のだよな?

と思っていると、映像が暗視モードになってはっきり見えるように……っておい。


『ははは、いいぞ。これぞ、魔王の下着だな! 褒めて遣わす』

『『はっ。ありがたき幸せ!』』



これ以上のことは言う必要はないだろう。

……ただはっきりしたことは、変態が魔族にいるとわかっただけだった。

というか、これ以上何か言っても地雷にしかならない気がする。


「とりあえず、話はわかった。俺はこんな変な趣味はないから」

「え? 私の下着いりませんか?」

「……いらないよ」

「「「……」」」


ヨフィアさんの言葉に少し詰まってしまった!?

なんで、そんな質問をするんだよ!?

お陰で女性陣の視線がとても冷たいんだけど!?

と、思っていると、部屋のドアが開いて……。


「毎度毎度、結城君で遊ぶんじゃねーよ。それより、寝ないなら、もっと仕事頑張ってくれていいんだぞ」

「「「……」」」


田中さん入ってきてそう言うと、そそくさと顔を背けて散ってしまうみんな。


「はぁ。まあ、映像を見たならわかるだろう。ああいうことがあったんだ。だから女性陣は苛ついている」

「みたいですね。でも、ああいうことは日本でもよくある話でしょう?」

「ニュースでは、まあ、毎日とまでは言わないが見るな。とはいえ、当事者というか、目の前にその変質者がいるとなると感覚が違うんだろうな」

「まあ、そりゃそうですよね」


近場に凶悪犯罪者が住んでいるとか言われると心配になるよな。


「で、若さを持て余している、結城君があんな変態的行動を起こさないか、心配していたってわけさ」

「流石に、ああいうのは……」


女性の下着を取ってきて、喜ぶのはな……。

嗅いだりもしないよなー。

そんなことを考えていると、ヨフィアさんが手を上げて……。


「はいはい! アキラさんの性処理はお任せを。下着なんかより、中身があった方がいいですからね」

「ぶっ」


余りにストレートな物言いに吹き出してしまう。


「そこまでにしておけ、ヨフィア。あまり露骨だと嫌われるからな」

「ちぇ、仕方がないですね。じゃ、後でゆっくりしましょう」

「はぁ、結城君。嫌なら嫌ってはっきり言っておかないと、近いうちに食われるからな」

「ぶーぶー。愛し合っているから当然の帰結なんですよー」

「……」


とりあえず、何より状況が悪い。

この場で何を言ってもダメな気がするので、沈黙を守るしか、俺の防衛手段はない。


「ま、ヨフィアと寝るかはともかく、結城君にはちょっと話したいことがある。リカルドもだ」

「……男だけでなにするの?」

「……まさか、変態的なことでも?」


田中さんの言葉に、光や撫子が過敏に反応する。


「そうだな。あの変態に対する作戦会議だ。女性陣はちょっと話にならん。自分たちでもわかっているだろう?」

「「「……」」」


自覚はあったようで、光たちは沈黙する。

まあ、映像の魔族は確かに変態だったけど、俺たちまであの視線を向けるのはやりすぎだよな。


「さっさと、寝ろ。あとヨフィアは結城君をちょっと借りるからな。一人で映像解析頼む」

「わかりました」

「できないなら、って、意外だな」

「流石に真面目な話ってわかりますよ」


意外なことにヨフィアさんはすぐに承諾してくれた。


「ああいう男なら、別の方法からの搦め手が存在しますからね。それはわかってますよ。ではでは、そっちは任せますよ。ヒカル様やナデシコ様はお任せくださいなー」


そう言って、ヨフィアさんはこちらに手をひらひらと振ってくれる。

それを見た田中さんは……。


「ヨフィアが寝落ちしないうちに話をまとめるか。じゃいったん食堂に降りるぞ」

「「はい」」


俺とリカルドさんはそう言って、下へと降りていくことになるけど、一体何を話すつもりなんだろうか?

ヨフィアさんが言った搦め手って何だろう?

というか、ここ数日ずっとモニター関係の仕事しかしてない気がする。

この仕事辛いよなー。と、思い始めたのであった。




マイノリティーな趣味は大体変態扱いされます。

まあ、異世界も変態には厳しかったわけだ。


みんなは、人の下着を取って嗅いじゃだめだぞ。


作者との約束だ。

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