第125射:美人の魔王と痴女
美人の魔王と痴女
Side:ヒカリ・アールス・ルクセン
「のおぉぉぉ……」
そんな声をあげなら床を転がるヨフィアさん。
美人のメイドさんなのに、フクロウさんが絡むと残念メイドになるよねー。
ま、そこが萌えポイントだね!
正直、晃にはもったいないね。
と、ヨフィアさんのことはいいとして、今はフクロウさんの方だ。
「もっとここを詳しく見られるかい!?」
「ああ、ズームできるぞ」
「おおっ。物凄いな。音は、音はどうなんだい?」
「近くに行かないと拾えないな。ほれ、これが空の音だ」
「これは、風を切る音だ。間違いない。凄いな、この道具は!」
こんな感じで、ドローンからの映像に感激しているんだよねー。
ま、私たちも同じように感激していたけどさ。
今では、地獄の映像解析で、睡眠導入装置と化しているからね。
近づくだけでなんか眠くなるし。
「じゃあ……」
「まてまて、これ以上のことはまたあとでだ。この映像が今のリアルタイムの状況を映しているのは分かったな?」
「ああ、物凄い道具があったモノだな。タナカ殿の故郷は」
「おかげで情報戦が物凄いことになっていたがな」
「……そうか。タナカ殿たちだけが使っているわけではないのだな」
「ま、地球のことはいい。今、この場に映っている魔族の拠点、城下街を見て、大軍が集まっているように見えるか?」
いい加減、田中さんもフクロウさんへの説明をやめて、確認をとる。
この説明をしているときりがないからねー。
「あ、すまないね。とりあえず、記録している映像をみせてもらった限りでは、タナカ殿の言うように、煙の立ち上り方を見ても、大軍が集まっているとは言えないね」
「そうか。で、ほかに集まる場所なんか思いつくか?」
「そうだねー。こういう大軍が集まる場合は、王都の中ではなく、大抵外の方で陣地を築くことが多いんだが、兵士と住人のトラブルを避けるためにだね」
「なるほどな。だが、それらしきものは見つかっていないな。そんなに遠くか?」
「いや、そういうことはないはずだ。物資の補給の関係もあるからね。城壁を挟んですぐ隣なんてのはよくあるよ。それか、別に軍が待機していられる施設を作っているかだね」
おー、流石はフクロウさん。
ちょっと見ただけで、色々な話が出てくる。
「そっちの可能性もあることはあるか。よし、そっちの方面で探ってみるとして、そろそろ夜だし、ある程度近づいて、魔族の城を調べるのが先だな」
「……さっきから驚いてばかりだが、本当にこの道具は物凄いね。敵の陣地の把握簡単じゃないか」
「相手が空中に警戒を向けていないからな。とはいえ、流石に室内への侵入はできないぞ」
そう言いながら、田中さんはドローンを操縦して、お城へと近づく。
「で、次はお姫さんに聞きたいんだが、どこを調べれば、偉い人の部屋を見つけられる?」
「え?」
「あー、城のどこらへんに偉い人の部屋があるか、予想はつかないか?って話な」
「うーん、そうですね。私も、城といっても、ルーメルの城しか詳しくはしりません。ロシュール、ガルツ、リテアの王城には出向いたことは有りましたが、流石に各国の王や重鎮の執務室に出入りしたことは残念ながらありませんが、ある程度は予想が付きます。私たちが近寄れなかった区域となると、城の奥ということになります」
あー、なるほど。
確かに、ルーメルの王様や宰相さんの執務室は確かに、お城の門からは遠い、奥の方にあるよね。
まあ、大事な書類とかあるから、奥で当然だよね。
お城の入り口近くなんて、人の出入りが多いから、防犯上よろしくないよね。
だから宝物庫とかも奥にあるし。
「まあ、当然だな。じゃあ、大門から逆の方から調べてみるか。あとは、フクロウの直感に期待しよう」
「行ったことのない場所で、目当ての部屋なんて見つけられるわけないよ。事前の調査が大事なんだ」
はー、結構堅実にやってるんだねー。
こう、大怪盗みたいにずばばーって、いや、アレも事前に調査はしているんだっけ?
そんなことを考えている内にドローンはお城の裏側に回り込む。
「今気が付いたけど、全然裏門とかないね」
びっしりと壁になっている。
てっきり通用門とかあるかと思ったけどそうでもないみたい。
「まあ、裏門を作る必要性がないからな。この城は、正面の門以外は、全て堀が掘られていて、裏門から壁の外にでても、街へはいけないからな」
「あ、そっか」
裏口っていうのは、そこから出ていけたら近いとか、こっそり出たいから使うのであって、意味のないところから出ていく理由はないよね。
「いざという時の隠し通路はあるだろうが、そこを頻繁に使う必要はないからな。と、大体ここが真裏だな」
そう言って、ドローンの映像に映るのは綺麗な庭園だ。
「裏側は壁の中に庭園を造っているんだね。まあ、よくあることだね」
「綺麗だねー。って、なんか女の人が出てきた」
綺麗な庭園の中へお城のほうから女の人が出てきた。
いや、ただの女の人じゃない。
ボンキュボンのスタイル抜群で、どこかのスパイ映画で出てくるよな、綺麗なドレスを着こなしている超絶美人さんだった。
リテアの聖女ルルア様といい、ガルツのローエル将軍といい、ヨフィアさん、カチュアさん、お姫様、もう美人しかこの世界には存在しないの?
ペッタンコには価値がないの?
そんな感じで僕が暗黒面に落ちていると、フクロウさんが衝撃の事実を口にする。
「……赤く綺麗な長い髪、誰が見ても素晴らしい美貌、これは、恐らく、現魔王」
「「「は?」」」
余りの衝撃の内容に僕たちの頭がついて行かない。
「魔王って、あれだろう? ほら、世界の半分をくれてやろうとか、変身を2、3回してようやく倒せる化け物だろう?」
「うんうん。もう、想像を絶する感じの化け物でさ、範囲攻撃はもちろん回復もしてきて物凄いって感じだよね」
「二人が何となく、ゲームの話を言っているのはわかります。ニュアンスも何となく。まさか、女性の魔王だったんですね」
撫子の言う通り、魔王が女性なんて超びっくり。
こういうのは男が相場じゃん!!
それは、田中さんも同じらしく、珍しく驚いた顔をしてフクロウさんを見て……。
「……国トップが女性というのは、よくいるのか?」
「いや。基本的に男性だな。しかしながら、珍しいというわけでもない。リテアはルルア殿だし、国のトップでなくとも、ガルツのローエル将軍、ロシュールのセラリア将軍と女性の有力者というのは多いぞ」
「あー、そう言われると、そうか。では別におかしいことでもないのか」
「まあ、女性だからという理由で、この魔王は別に責められているわけではないようだからな。今まで魔族を率いてきたんだから、ちゃんとしているのだろうさ。彼女は」
そう言って、フクロウさんがモニターを見る。
私たちも、釣られるようにモニターに目を戻すと、魔王の美人さんは庭園を歩いていて、動くたびにバインバインな胸が揺れる。
しかし、それでも聖女ルルア様には届かないから、あの人のおっぱいってやっぱりおかしいんだ。
絶対あれって将来垂れるよ。この魔王さんもだけど。
大きいのは後が大変ってよく聞くもんね。
と、そんなことを考えていると、お城の方から、また人がやって……。
「うわぁ。すげえな。ありゃ大きい」
思わず田中さんがそう言う。
そう、モニターの中には魔王さんに近づく、聖女ルルアさん以上のおっぱいだとわかる女の人がいた。
だって、完全に裸みたいな服装なんだもん。
痴女だよ、痴女!!
どっかのゲームで見たような踊り子の服っていうか、エッチなビデオに出てくるような超極薄!!
「ああいうのが、魔族の女の基本的な服装なわけないか……」
「流石に違うと思いたいね。魔王は普通のドレスだから」
フクロウさんも、そこは微妙な顔をして答える。
あんなのが標準服装とか変態の国だよ!!
というか、裸も同然で寒くないの? 椅子とか座るとき冷たくない?
そんな感じで、奇抜すぎる魔族の女性を見て固まっていると……。
「はっ!? 皆さん。あの人の服装はいいとして、まずはこのお城のことを調べるのが先では?」
「「「はっ!?」」」
撫子の言葉で全員、正気に戻る。
やばかった。
あの、デカチチ女め!!
あれか、魅了とかいうステータス異常ってやつだね。恐るべし!
「アキラさん。おっきいおっぱいがそんなにいいんですか? 私もそれなりに大きいですよ?」
「ちょ、ちがっ……」
明らかに晃はおっぱいを見ていましたって反応だし、ヨフィアさんがいてなんという駄目な男か!!
「田中さんも、何を見とれているんですか?」
「いや、見とれるっていうか、魔王に話しかけているあの女。メイドには見えないし、重臣の類だろう?」
「「「あっ」」」
そうだ。あんな痴女がただ魔王さんに話しかけるわけがない。
ちゃんとした立場があり、魔王さんに用事があってきているに決まっている。
「フクロウは何かしらないか?」
「いや、残念ながら……。しかし、城下町で見かけた人々は普通の服を着ていたから、きっと彼女が特殊なんだろう」
だよね。彼女が痴女なだけで、あれが魔族の常識ってわけじゃないよね。
もう、魔族との交流で、あんな格好しろとか言われたら、戦争だね。いや、まじで。
と、そんな僕の気持ちをよそに、田中さんは話を進めていく。
「そうか。まあ、あの女性もおそらく、魔王の部下か何かなんだろう。頭を下げているからな。となると、あれも敵になる可能性があるってことだ」
「敵? あの痴女が?」
「……まあ、痴女に見えるのは間違いないが、それは俺たちの感覚で、向こうでは違うかもしれないからな。今後話し合いになった時に、素直に思ったことを言うのはやめてくれよ。ルクセン君」
「あ、ごめんなさい。つい、憎くて……」
特にあの見せつけるような乳!!
僕に対しての当てつけにしか見えないんだよねー。
あは、あはははは……。
「大丈夫ですよ。光さんはかわいらしいですから」
「そうだよ! 僕は可愛いんだよね! 色っぽくなんてないんだよ! ちくしょー!」
そう言わずにはいられなかった。
でも、そういうノリも……。
ガチャ。
「ま、気持ちはわからんでもないが、そろそろおふざけは終えてもらっていいか?」
「あ、はい。ごめんなさい」
冗談なのに、銃を構えられたら撃たれるとかごめんだよ。
いや、憎いのは本当だけど。
「と、気が付けば、魔王と女は城の中に戻ったようだな。さっさと接近して上の部屋から覗いてみるか」
そう言って、田中さんはドローンをようやく、お城にちかづ……。
バギッ!?
「えっ!? なに!?」
モニターがいきなり激しく揺れる。
「ちっ。何かがぶつかって……」
『初めて見る魔物だな』
「「「!?」」」
モニターが安定したと思うと、そんな声と共に、痴女のアップが映っていた。
『まあいい。リリアーナ様の敵は容赦しない』
「ちっ」
田中さんはそう舌打ちすると、画面が真っ黒になる。
「ど、どうなったんですか、田中さん」
「ああ、ドローンは消した。で、あの女はドローンの存在に気が付いていたみたいだな。そして、あのぐらいの高さなら余裕で何かを当てられるようだ。何かをぶつけられて墜落、捕獲されたって感じだな」
「空への警戒はしているということでしょうか?」
「おそらくな。まあ、ドローンは二台向かわせているし、もう一台の方は距離を開けて先行しているドローンを追うようにしているから、先ほどもどんな感じで落ちたのか撮ってるだろう。そっちの確認が先だな。移動もしないと、こっちもバレているなら攻撃される。さてさて、魔族は空への警戒をするものもいると……。やっかいだな」
僕はそんな田中さんの様子をみて、改めて魔族の手ごわさを実感したのだった。
「特に、おっぱい!!」
「そこかよ!?」
「いい加減にしてください」
ま、大事なのは余裕だよね。
敵の?親玉を確認。
そして、痴女も確認。
田中たちはこの人たちと戦うことになるのか?
そして、痴女にばれるドローン。
というわけで、ここから色々動いていきます。
2019年にはおそらく、必勝ダンジョンの時間軸にも絡んできますので、お楽しみに。




