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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま
120/516

第120射:異常発見

異常発見



Side:ヒカリ・アールス・ルクセン



「さて、とりあえずここは通り過ぎるぞ。このまま敵の本拠地を見てみようじゃないか」

「「「……」」」


相変わらずの田中さんのセントウマスィーン発言で、みんな固まっちゃったよ。

だってさ、ほら、まずは目の前にそびえ立つ難攻不落の砦の攻略を考えようとするじゃん?

でもさ、田中さんはドローンでさっさと敵の本拠地を見に行くことを思いついた。

まあ、よくよく考えれば当然のことなんだけどさ。

元々僕たちは戦うことが目的じゃないし、魔王って人と話し合うには場所を知らないといけない。

というか、戦うことになったとしても、敵の援軍とかを考えると、こういうのは絶対大事だよね。

そんな感じで僕はあきれつつも、感心してもいた。

こうして、圧迫感のある砦を見ても本当の目的を見失わないようにやっているんだから。


「しかし、また森が続くな。まあ、砦を超えたからといって、すぐに魔族の町があるわけもないか」


田中さんが言うように、モニターに映るのは、長い整備された街道と森が続くだけ。

これからは草原と同じような時間が流れるのかな?

そんなことを考えていると……。


「よし、みんなこれからは、さっきの砦の映像の解析と、途中でやめている草原の確認の続きを頼む」

「へ? 砦はわかるけど、草原も?」


僕が驚きつつ尋ねる。

だって、そうじゃない? 既に大事な情報は出たんだし、ほかの映像を見る必要は……。


「何か見落としているかもしれないからな。森の中に入って、砦に着くまでの映像も見ていない。その中で敵が進軍しているって可能性もあるからな。そこはちゃんと、確認しないとな」

「「「……」」」


言っていることはごもっともだったので、誰も何もいいかえせず、そのまま睡眠導入映像を見ることになり、意識を綺麗に失った。

いやー、あの草原映像とか気持ちよく寝れるよね~。



「……さい。……きてください。起きてください。ヒカリ様」

「んあ?」


そんな感じで声をかけられつつ、目を覚ますとそこには僕をゆすっているお姫様の姿があった。


「んー? ああ、また寝ちゃった?」

「ええ。草原の映像を見て数分後には」

「あはは……。いやー、ごめんね。アレを耐えるのは無理」


正直に謝っておく。

アレを耐えられるのは人間じゃないね。


「いえ、私もあとを追うようにすぐに寝てしまいました。映像の解析を行っていたのは、カチュアです」


お姫様がそう言って、見つめる先には、モニターの前で突っ伏しているカチュアさんが存在していた。

流石のパーフェクトメイドも睡眠導入映像には叶わなかった……ん?


「気が付きましたしか? ちょうどカチュアが停止している地点に人影のようなものが見える気がするのです」

「うん。確かに人影にみえる」


モニターにはちょこっとだけど、森の中に人影に見える気がする。


「この映像を戻せますか? どうも私はまだ慣れなくて……」

「ああ、気にしないで、そう簡単にパソコンが扱えるようになったら天才だよ」


そんなことを言いながら、カチュアさんを起こさないようにそっと映像の記録を戻して、再び再生をする。

映像はまだ古びた街道までたどり着いていないので、純粋に森の中を飛んでいる映像で、さっきのシーンは……。


「ここです」


お姫様に言われて映像を停止すると、確かに人が映っている。

でも遠すぎて顔までは見えないし、基本的に月夜の影で、基本的に森の中は木々の葉に隠されて真っ暗だ。

この映像では偶然、木が生えていない地点を誰かが歩いているから見つけられたんだ。


「ここって一体森のどこの地点なのだろう? 見た感じ武装はしているようだけど」


顔は見えないけれど、剣を挿して、背中に大きな荷物と弓矢を背負っているのはわかる。


「そうですわね。武装しています。ですが、ここが森のどこかはわかりません。とはいえ、大樹海の中を1人で歩くのは危険です」

「んー。1人とは限らないんだよね。これって偶然映っただけで、ほかに仲間の人もいるかもしれないし」

「では、魔族がルーメルに向かっていると?」

「いやー。冒険者とかが迷ったかもしれないよ。遺品の回収は高くやってるみたいだし」

「……確かにその可能性はあります」

「うーん。ここで話しても仕方ないね。まずはこのドローンを動かしている田中さんに報告しよう」

「そうですね。人がいたことは間違いないですし、報告いたしましょう」

「でも、カチュアさんどうする?」

「このまま、寝かせてあげましょう。私が寝た時もずっとやっていましたので」

「そうだね」


僕たちに代わってずっと頑張ってくれたんだから、寝かせてあげよう。

で、席を立って気が付いたんだけど……。


「あれ? まだ夜?」


部屋の中は静かで、晃とヨフィアさんは仲良く寝てるし、撫子とキシュアは無理をせずベッドできちんと寝息を立てている。


「はい。まだ日は上っていません」

「そっかー。珍しいね。僕がこんな時間にお姫様に起こされたとはいえ、起きるなんて」

「起きないのですか?」

「僕はちょっとやそっとじゃ起きないらしいよ? いつも撫子に怒られるから」


とはいえ、田中さんの脅しでは普通に起きるけどね。

本気でやるから、あ。いや実際やったことはないんだけど、絶対やると思うから。


「って、田中さんいないじゃん」

「あら、先ほどまではいたと思ったのですが……」

「またどっかに出かけてるのかな?」


困ったな。この人影のことを詳しく調べてもらうかと思ってたんだけどな。

もう、仕方ないから、こっちで勝手に調べてみるかな?

と思っていると、部屋のドアが開いて外から田中さんが戻ってきた。


「ん? ルクセン君にお姫さん、起きたのか?」

「あ、うん。田中さんは寝てないの?」

「あー、少しだけ寝たな。それで目を覚まして顔を洗ってきたわけだ」

「だから、タオル持ってるんだね」


田中さんが首にタオルをかけているのは顔を洗ったからか。


「ま、これだけ頑張っても、今のところ、森が続くだけだな。目当ての魔族の町は程遠いらしい」


田中さんはそう言って、ドローンの画面に視線をやると、そこには森がずっと続いているだけだ。


「まあ、山の盆地って話があるからな。まだまだ遠いんだろうが……」

「山って、あそこに映っている山?」

「多分な」


ドローンの画面に映る山脈。


「でも、山々ってかなり遠いよね。青みがかっているもん」

「だな。最低10キロは離れているな」

「遠いなー」

「ま、とはいえ。目標が分かっているのは良いことさ。ドローンの速度から考えると後は精々30分ってところだ」

「へー、遠いって言ってもそこまで時間はかからないんだね」

「まあ、空を飛んでいるからな」

「あ、そうだった。空飛んでるから、こんなに早いんだね」

「でも、一応街道を歩くのなら、そこまで負担にはならんだろうけどな」

「いや、魔族さんたちが使っている街道を使うとか面倒にしかならないよ」


そんな感じで、田中さんの状況を聞いていると、お姫様が恐る恐る口を開く。


「あのー、進行状況の確認はいいのですが、ヒカリ様。私たちも見つけたモノの報告を……」

「見つけたモノ?」

「おー、そうそう。田中さんこっちに来て」


お姫様に言われて思い出した。すっかり忘れたよ。いけない、いけない。

で、田中さんを連れて私たちが監視していたモニターを見せると……。


「人だな」

「人でしょう」

「タナカ殿もそう見えますか」


どうやら、僕たちの勘違いというわけでもなさそうだ。


「でさ、武器を持っているように見えるし、魔族の偵察かなーって、ほら、冒険者が踏み込むには結構森の深くでしょう?」

「なるほどな」

「とはいえ、ここがどの地点なのか、私たちは知らないので、タナカ殿に教えていただきたいと思いまして」

「ちょっと待ってくれ。えーと、この地点は、映像記録でこの時間で……」


やっぱり、便利な方法はなくて、人が確認できた映像時間を記録して、タイムラインを弄って、どのぐらいの距離か確認し始めた。

といっても、十分便利だよね。この映像記録からの参照って。

そんなことを考えていると、田中さんが操作する画面は森を抜けて草原に変わっていた。


「大体、時間からすると、草原から10キロ地点ってところだな」

「近いのか、遠いのかわかんないや」

「……申し訳ございません。私もその距離を言われてもピンときません」

「心配するな。俺も分からん。森の危険度も分かっていないからな。富士の樹海レベルの所なら、1キロも離れたら超危険区域だよな」

「ふじのじゅかい? そこは危険なのですか?」

「いやいや、普通とは言わないけど、そこまで物騒じゃないでしょう」


確かにあそこは、方位磁石が利かないとか、自殺者が沢山いると、お化けが出るとか良く聞くけどさ。


「まあ、地球の日本の登山用の装備品なら問題ないだろうが、この世界の冒険者レベルの装備品だからな」

「あ、そういうことか。確かに厳しいと思う」


確かに全然装備品が違うよね。

冒険者だからちゃんと旅に適した装備品ではあるんだけど、登山用かって言うと違うからね。


「えーと、よくわかりませんが、大樹海には強力な魔物が多くいると聞きますので、ちょっと潜るだけでも危険かと」

「そっちの危険もあったな。ガルツの討伐でやっただろう?」

「ああー。クモ退治の時かー。あれは気持ち悪かったし、気が付くのが遅れたし、大樹海ってなると少し進むだけで危険ね。となると、やっぱりあの人は魔族?」

「その可能性は高いな。方角的にも、俺たちとは逆方向に進んでいたから、草原の方へ向かっていたことは間違いない」

「では、大至急アスタリの町へ連絡をいれないと」


田中さんの言葉にお姫様は当然のことを口にするのだけれど……。


「……なんて連絡を入れるんだよ」

「え? それは魔族がアスタリの町へ侵入しようとしていると……」

「どうやってそれを知ったと聞かれたらどうするんだ?」

「あ……。で、ですが、事は急を要します。タナカ殿の能力を公表してもらい……」

「まてまて、それだと確実に戦争方向に動くことになる。偵察できる便利道具があるんだからな。それは、お姫さんも嫌だろう?」

「……それは、そう、ですが」

「ま、偶然奥まで行った冒険者って可能性もある。それよりも今は、情報をまとめるのが先だ。一々戻っていたらきりがない。この連絡をしている間に、魔族が侵攻しているのを見落としたらそれこそ問題だ。目的を間違うな」


田中さんがお姫様を見つめてそう言う。

あれだよね。ちゃんと考えろって言ってるんだよね。


「……そう、ですね。わかりました。このまま進んでください。ですが、あの人のことを誰かに伝えることはできないでしょうか?」

「そうだな。クォレンとフクロウに伝えれば何かと動いてくれるだろう。あれが情報を持って国に帰るってこともあるかもしれないからな」

「ああ、そういうことなのですね。周りをうまく使えと」


田中さんはそれをそれとなく伝えてくれたわけか。と感心していたんだけど……。


「いや、今更かよ。ドトゥスを利用した時みたいにあくどくやればいいんだよ。あ、でも、結局は宰相に利用されたから、ある意味この程度でいいのか?」

「……」


容赦ないダメ出しに暗くなるお姫様。


「いやいや、田中さん。もうちょっと、言葉選ぼうよ?」

「この程度で凹むなよ。ま、森と草原の境にドローンは監視のためにおいているから、人が抜けてくればわかるだろう」

「それを早く言おうよ」

「言う意味がないからな。映像は確かに簡単に届くが、すぐに駆け付けられるわけじゃないからな。だから、まずは、軍が動かないかを確認する必要があるんだよ。あの森にいた人を追っている間に、アスタリの町に敵が来れば準備もなにもないからな」


確かに、そう言われるとそうだよね。

このルーメル王都で知っても、アスタリの町の助けには行けないし、何か有ったときも人を集められない。


「……話は分かりました。私が浅はかだったことも。だから、手遅れにならないためにも、奥へ、魔族の拠点を探しに行きましょう」


ということで、僕たちは人の映像はあとで報告するとして、今は森の奥へとドローンを進めるのであった。



あれ? これって僕はまた睡魔と戦うことになるのかな?





さて、あなた達ならどうするでしょうか?

人を追ってみるか、それとも奥をしっかり調べてみるか?


田中たちは奥を調べることを優先しました。

その結果がどうでるのかは、あとのお楽しみ。


しかし、何もない映像をみるのって、気持ちよく寝れるよね。

ヒーリング動画とかいいよ。特に雨音とか。


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