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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


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114/522

第114射:まずは飲みましょう

まずは飲みましょう



Side:ヒカリ・アールス・ルクセン



「がふっ!?」


晃が余計なことを言うからひじを食らった。

バカだよねー。別に安物でもプレゼントしたってのが大事なのに。


「勇者殿はどうした?」

「いや。ただ、そこのテーブルで小指をぶつけたみたいだ」

「あー、痛いよな」


うん。本当にあれは痛い。

予期せぬ痛みって辛いよねー。


「で、どうする? 飲みながら聞くか、話を先にするか?」

「ん? 飲みながら聞くような話か?」

「まあ、そうだが、別にそこまでというか、想定されていた話だからな。俺としては微妙だ」


田中さんは平然とそう言うけど、戦争になるかもしれない話って微妙なのかなー?

クォレンさんも、田中さんのニュアンスには疑問を持っているようで……。


「タナカ殿の微妙は何か嫌な予感がするな」

「そうか。なら嫌な話を飲まずに聞いて、酒を飲む気をなくすか?」

「……そういうレベルの話か」


うん。確実にお酒が不味くなること間違いなしのお話だね。

それは自信を持って言える。

まあ、お酒が美味しいとかはさっぱりわからないんだけど。


「別に飲んだところで内容は変わらんからな。ああ、記憶が飛ぶなら話は別だが」

「いや、そういうことはない。だが、勇者殿やユーリア姫様の前で飲んでいいのかね?」


そうそう。僕たちを放っておいてお酒とかありえないよね。

田中さんは何を考えているんだろうと、思っていると……。


「いやいや、そこは心配しなくていい。全員分用意するからな」


田中さんはそう言って、テーブルの上に色々な飲み物を出し始めた。

どれもこれも、地球というか、日本でよく飲んでた……。


「これ、全部お酒じゃん」

「ああ、ついでに、お前たちの酒癖を見ておくべきだと思ってな」

「いえ、田中さん。俺たちお酒のめないんですけど」

「飲めなくても勧められることが出てくるかもしれんし、一度は経験しておいた方がいいからな。ま、わざと飲ませて失言や失態をと、狙う連中もいるからな」

「……なるほど。そのための対策というわけですか」


酒って言うのは色々厄介だよね。

お父さんとか、お酒飲むとべろんべろんになるから、お母さんが苦労してたっけ。

飲まないのが一番だけど、世の中生きていくうえで、アルコールの付き合い無しというのは、お父さんとか見るとダメなんだろうねー。

何より、娯楽の少ない異世界だ。酒が唯一とは言わないが、娯楽と聞かれたら、まず酒と出てくるぐらいメジャーだ。

前もオーヴィク、ラーリィとご飯を一緒にした時も飲もうってなったけど、学生だから断ったら、不思議そうな顔をしていたんだよね。

お酒はコミュニケーションには必須って奴なんだろうな。

まあ、その時は、田中さんが明日訓練があるからって言って上手くごまかしてくれたんだよね。

だけど、今後はそうもいかないって話かー。


「最初はどうしようかと思ったが、冒険者ギルドなら安心して酔っぱらえるだろうしな。下手に王城へ先に戻して、誰かから無茶ぶりがあると問題だ。なら、冒険者ギルドでそのまま宴会してそのまま泊まった方が安全だろうって思ってな」

「ああー、納得。こっちの方が安全だよねー」

「だな。しかもここギルド長の部屋だし」

「迂闊に入ってくる不届き者もいないでしょう」


晃、撫子は声を出して納得。

リカルドさんたちも頷いて納得。

満場一致ってやつだね。


「なるほどなって、宴会場にするつもりか!?」

「まあまあ、仕事は終わったんだし、別に執務机を使わせろって話じゃない。ほれ、それに酒の色々な追加はするから。な?」

「……ちっ、仕方がない。話は分かるし、これを断ったら、ギルドは危険だといいまわりそうだからな」

「いやいや、世話になってるからな。そんなことは言わんさ。精々、ギルド長がケチだったとかだな」

「十分たちが悪い。ったく、ほれ、コップだ。こうなったら飲むぞ。ガキ共を潰して厄介ごとを聞こうじゃないか」


ほほう。僕たちがガキだと?

ここは、僕たちがお酒を立派にたしなめる大人だってことを見せつけないといけないねぇ。


「2人とも、僕たちはこっちの世界じゃ立派な大人だってことを見せてやるよ!!」

「一体いきなりどうしたんだ?」

「……恐らくガキと言われたことが気に障ったのではないかと」

「撫子当たり!! ほら、クォレンさん飲むよ!!」

「……ああ、嬢ちゃんはそこら辺気にしているタイプか。こういうことで怒っていると色々心配になるんだが、そこはいいのか? タナカ殿」

「ま、こういうのを見るために飲むんだから、目的は達成しているとみていいだろう。分かっていると思うが、ルクセン君。一応、バカにされると状況把握できなくなるっていう欠点だからな。酒に飲まれる以前の話な」


分かっている。分かっているとも、それでも人には引けないことがあるんだよ!!


「最終的に勝てばいいのだ!!」

「うわ。開き直った」

「駄目ですわね。光さんが自分の体形を気にしているのは知っていましたが、ここまでとは……」

「最終的に勝てばいいってのは、同意だけどな」


田中さんは分かっている、どんなに厳しい状況でも最後に勝てばいい。

僕を子供だと、ガキだというやつは、全員○して、僕を大人だといわせれば勝ちなのさ!!


「といったものの、田中さん。具体的にクォレンさんに僕が大人の女性と認めさせるにはどうしたらいいと思う?」

「そうだなー、今の流れじゃ、酒を飲んでクォレンを潰せばいい。つまり飲み勝てばいいんだが、それは今日聞きたいことがあるから、避けてくれ。後日勝負でも何でもするといい」


流石に今日はむりだよねー。

なんか冷静になって来た。

普通に飲もう。


「はぁ、ノリが悪くて冷めちゃった。田中さん、何かおつまみはないの?」

「そういえば、お酒だけはアレだよな」

「ですわね。肴とかはありますか?」

「ん、ああ。そう言えば忘れてたな」


田中さんはそう言って、今度はおつまみを沢山出してくれる。

ジャーキーとか缶詰とか、見たことあるモノばかりだ。

こっちもちゃんと日本の製品で合わせてくれたみたいだ。

そして、なぜか……。


「うわー、おつまみだけなのに、美味しそー!!」


そう、カップラーメンの時みたいに、凄くおいしそうだ。


「シーチキンとか。つまみというか食材の気がするけどな」

「ですわね。普通にご飯のようなものもありますわね」

「そこは俺が判断基準だからな。ほら、飲み屋にも普通にご飯はあるからな」


ああ、なるほど。

別に居酒屋って完全におつまみとお酒ってわけでもないからね。


「ま、吐くまで飲むとは言わないが、メインはお酒だからな」

「でもさ、お酒ってどれから飲んでいいのかわかんないや」

「そうだよな。これだけ色々あると、何を飲んでいいのかわからないよな」

「難しいですわね。日本でいうならビールで乾杯というのは、わかりますが、異世界では何かお酒を飲むときの常識などはあるのでしょうか?」

「さあ、俺は知らないな。そっちのリカルドとかカチュアなら知っているんじゃないか?」


おお、なるほど。

リカルドさんは近衛隊長だったし、カチュアさんはお姫様の付き人メイドだから、お酒のたしなみっていうのは知っているかもしれない。

そんな感じで、みんな視線の視線が集まると、2人は口を開く。


「お酒といっても、普通に飲むエール、ワインか、上品なところは蒸留酒ぐらいですな」

「そうですね。お酒の種類というのはエール、果実酒、あとはワイン、そして高級な蒸留酒ぐらいのモノです」


でも、2人の口から出てきたのは意外と少ないお酒の種類だった。

僕が知っているお酒の種類だけでも5つ以上はあるのに。


「意外と少ないんだね。焼酎とか、日本酒とか、リキュールとか、カクテルとか色々あるのかと思ってたよ」

「食材と一緒で長期保存に長けた場所が無いのも原因だが、そもそも、お酒を大分類するなら、発酵酒、そしてそれを蒸留したものしかないからな」

「え? そんなに少ないんですか?」

「各国で呼び方が違うだけだ。ウィスキーは麦酒、ビールの元を蒸留したものだからな。ブランデーはワイン。あと、別で付け加えるなら、ルクセン君が言ったリキュールはアルコールに薬草や果実などを漬けたもので、日本で言うなら梅酒。カクテルは各種でできたお酒と果実汁を混ぜたモノだな。まあ、お酒の分類ではなく、名前や味の違いなどで言えば、数は物凄い物があるけどな。分かり易く言うなら、このビールだな」


そう言って、田中さんはテーブルの上にある缶ビールを二本持ち上げる。


「分かり易いですわね。同じビールでも、アサ○かキ○ンってことですわね」

「他にもサント○ーとか、サッポ○とかもあるよな」

「更に詳しく言うなら、原材料割合や違いで、ビール、発泡酒、第三の生って分け方があるな」

「意味わかんないよ」


田中さんの言っていることはさっぱりわからない。

全部ビールはビールでしょう?


「ま、とりあえず、細かい種類があると思えばいい。そして、その違いが分かるかは、今から飲んでみればわかることだ」


そう言って田中さんは、皆にビールを3つほど配る。


「結局、飲むときのルールみたいなものはなさそうだから、地球式というか、日本式のやり方で行かせてもらうけどいいか?」

「私はいいですよー。というか、こんなにお酒と、美味しそうなものがあるとか、役得ですよー!! ついてきてよかったー!!」

「ヨフィア、あなたは……。まあ、お酒の席ですから、大目に見ましょう。姫様無理はなさらないように」

「いえ。勇者様たちのお酒の付き合い方をというのを教えるのに、確かにいい機会です。私たちが率先して見本を見せましょう」

「はっ、かしこまりました!!」

「といっても、そこまでお酒を飲むのに無理はしないと思いますが……。まあ、お酒は楽しむのが大事ですね」


そんな感じで、お姫様たちは乗り気のようで缶ビールをもち、首を傾げる。


「で、これってどうするんですか? これがお酒なんですか?」


ヨフィアさんが皆の疑問を代弁するように質問する。

ああ、そう言えば、缶の開け方なんて分からないよね。

で、その質問に答えるように、田中さんが実演を始める。


「これは缶と言ってな。この上の取っ手、プルタブって言うんだが、ここに指をかけて……」


プシュッ!!


そんな聞きなれた音が聞こえて、缶ビールの蓋が開く。

というか、今更だけど、このビールキンキンに冷えているよ!?


「こうして、開けてそのまま飲むものだな。グラスとかなくてもそのまま飲める便利なものだ」

「ほー。凄いですね。えっと、こうですか?」

「私もやってみましょう」


ヨフィアさんとお姫様が見よう見まねでプルタブに指をかけて……。


プシュッ!!


と無事に開けた。


「おー。凄いですね。というか、今更ですけど、冷えてますね」

「本当ですわ。こんな密閉された鉄の筒にどうやって飲み物を入れたのでしょうか?」

「ま、そう言う疑問は、また後日だ。今日は飲むのが目的だ。クォレンにルクセン君たち、リカルドたちもさっさと開けろ」


そう言われて、全員がプシュッと開ける。

これで準備は万端。


「さて、酒宴の席で長い話は無用だ。ここならなにも心配はいらないからな。飲んで食べて、日頃の疲れを癒してくれ。乾杯!!」

「「「かんぱーい!!」」」


こうして、僕たちの初めての飲み会が始まるのだった。





嫌な話をする前に飲む。

最後の晩餐とか思わないように。

まあ、話を聞いたが最後、問題を解決するまでは胃の痛い状態になるのは間違いなしだけどね。



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