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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま
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第111射:情報から見えてくるもの

情報から見えてくるもの



Side:タダノリ・タナカ



「さて、ラーメンを食いたければ、まずはこの資料のことに関して話を終えてからだ」


俺はそう言って、貸してもらった会議室に集まる面々の顔を見る。

結城君、リカルドは特に問題無し。昨日のトラブルからの疲れは多少あるが、この程度でへばる鍛え方はしていない。

問題なのは、昨日宝石の魔力か薬かよくわからんが、それに当てられて正気を失った女性陣だが、こちらも見る限り、後遺症などは見られない。

キシュアが最後に合流して、多少記憶の混乱が見られたが、ルクセン君たちの説明で状況を思い出して、落ち着いている。


「らーめん?とは何でしょうか?」


そこで、そんな言葉を発するのは、お姫さんだ。

お姫さんは朝食時に合流はしていなかったが、この会議には普通にやってきた。

カチュア曰く、普通に目を覚ましていて、事情も一通り説明し、納得しているとのこと。


「故郷の料理の名前だ」

「ああ、タナカ殿の能力からですか」

「そうだ。で、改めて聞くが、お姫さんの方は問題ないんだな?」


他の皆にも1人1人ちゃんと確認をとっているので、お姫さんだけ無しというのはない。

こちらの安全の為でもある。


「はい。昨日の出来事は伺いました。ご迷惑をかけて申し訳ございません。まさか、遺品の中にあれほど危険なものがあるとは……」

「まあ、本来あそこは近寄らない場所みたいだしな。縁起の関係で近寄るのもあまりいないんだろう?」


マノジルからそう聞いた。

まあ、やけに扱いが雑なのに、警備がいるのかと不思議だったんだよな。

王家の物で埃被っている物が結構あり、なんか違和感があったんだ。


「そうです。無論、歴代の王の中には立派な結果を残したモノもいますが、そうでない王もいます。とはいえ、歴史は重んじるモノであり、失敗があれば戒めとして、残していたものがこちらに集まっています」

「ちゃんと結果を残したものは、宝物庫へってところか」

「はい」

「歩哨を立てているのは……」

「縁起の良くない王たちの物が多々ありますので、持ちだされることを避けるためですね」


こういうところは、なんというか正体不明の昔からあるゲン担ぎに近いな。

そんなもの、さっさと処分してしまえと言うわけにはいかないんだろう。

こういうくだらない物が、歴史的には価値のあるモノなんだろうな。俺にはさっぱりわからんが。

戦場ではただの弾除け、燃えるモノ、通路封鎖の為の消耗品でしかないんだけどな。

というか、その情報を先に言えよ。

俺は違うが、兵士だってそこら辺を気にする奴はいるからな。


「ま、今後はあそこを調べるときは要注意だな。さて、反省はここまでにして、昨日、見つけた資料に関しての話し合いだ」


俺はそう言って、見つけた資料のコピーを渡していく。


「……これは資料をそのまま写したような……。こちらもタナカ殿の能力で?」

「そうだ。コピー機械があってな。まあ、その説明はまた後日だ。俺を資料整理の道具に扱われても困るからな」


俺は書類をコピーするお茶くみじゃないから。

というか、そう言うのは自分でやれってタイプだな。

まあ、偉くなるとそうもいかないから、部下に頼むんだろうがな……。

と、そこはいいとして、本題を話そう。


「大和君やルクセン君は既に聞いていることだが、改めて、あの倉庫で見つけた拠点の書類について話そうと思う。いいな?」


俺がそう言うと全員が頷く。


「まず、その資料の……」


とりあえず、俺は見つけた経緯と、内容を説明する。

話す内容は昨日と変わらない。

大森林の奥に、荒れた街道があったこと、その道なりの奥に砦があったこと、ここを進んでいったら魔族の拠点や魔王がいるのではということを話す。

そして、ここに前王は向かって行って帰らなくなったであろうということも。



「「「……」」」


俺の説明が終わると、全員が沈黙している。

色々情報を整理しているんだろうな。


「まあ、色々思うところがあるだろうから、午前中はこれで終わりだ。今から一旦……」


俺はそう言って、カップラーメンを適当にゴロゴロと取り出す。

無論、カップラーメンも俺が触ったことのあるものに限る。

ここで、あることに気が付いたが、本当に触っただけのモノも呼び出せる、作り出せることに気が付いた。

個人的に、自分は焼きそば系U〇Oしか食べないのだが、食べたことのないペヤ〇グなど店頭で触っただけのモノもいけたのだ。

つまりこれは、俺のおぼろげな記憶さえあればいいということになる。

中身に味さえ知らないものを作り出せるのは不思議だから、これは転送していると思った方がいいだろう。

そんな俺の考えはよそに、結城君たちはカップラーメンをみて喜んでいる。


「うわ。どれたべよっかなー」

「光さん。一つですよ。一つ」

「えーと、二つ行けるのは家で食べたからわかるけど、この中から二つか~……」


結城君たちはどれを食べようか悩んでいて、他の現地メンバーは……。


「おー、すごいですよ!! この絵、まるでそのまま写し取ったみたいです!!」

「これは以前タナカ殿がみせてくれた、シャシンなるものを使っているのでは?」

「しかし、これはどのように食べる物なのでしょうか?」

「文字が読めませんわ。ヒカルさまこちらは……」


と、初めて見るラーメンに興味深々。

そして、それを補佐して、ラーメンの食べ方を教える面々。


「えーとね。これは……」

「必要なのは熱湯でして……」

「半分蓋を開けて、そこに具をいれて、3分で……」


こんな感じで、賑やかに昼食が始まるのだが、正直な話、気分転換の為に用意したラーメンが効きすぎた気がしないこともない。

悩んでいた深刻な雰囲気は吹っ飛んだように見えるのだ。


というか、結果的には全員最低2つ、多くて3つという素晴らしい食欲を見せてくれた。

3つ食べたのは、結城君、ルクセン君、リカルド、ヨフィア、意外でカチュア。色々な味を試して、今後の料理に幅を持たせたいとのこと。

いや、すごいよなメイドってのは、仕事意識がまるで違う。

これがプロって奴か。


まあ、だからと言って、話し合いは中止にはしないけどな。


「さて、ラーメンを食ったんだから、続きを話すぞ。というか説明は終わったから、これからどう動いて行くかだな」


と、俺が声をかけるのだが……。


「……うっぷ。吐きそう」

「もう。光さんは食べ過ぎですわ」

「でも、おいしかったですよねー。焼きそばが一番でした」

「カチュアは3つも食べていましたが、大丈夫ですか?」

「いえ、動くのに支障はございません」

「いやぁ。美味い物だな。キシュア殿」

「ええ、異世界にはあんな便利で美味しい食べ物があるのですね」


全員無視してやがるな。

仕方がないので、ハンドガンを取り出して、装弾する。


ガチャン。


「今から答えるか。体に穴を開けられるか選べ」


俺がそう脅すと。


「そうだね。僕はまず情報収集が一番だと思うな」

「同意見です。道が存在したという記述が正しいのかを調べるのが先でしょう」

「だよな。嘘ってこともあり得るし、それに合わせて、近くの町とか村を調べるのもいいんじゃないですかね、ヨフィアさん」

「ええ。流石アキラさん。道の近くにある町や村は恐らく襲われる、というより攻め獲られるでしょうからね」

「確かに、近場の村や町などは襲われるでしょうな。それが分かれば、守りも固めやすいというモノ」

「攻めるにしても、守るにしても、必要な場所、拠点となりますね」

「なるほど。魔族に対しての防衛体制が整えられるというわけですわね」


よくまあ、でてくることで。

しかし、意見がないよりマシか。出すべき意見は出た。

はぁ、ここで咎めるのは時間の無駄か。


「ふざけていた割には、まともな意見だったから、穴を開けるのは勘弁してやろう」


そう言って、俺がハンドガンを消すと全員ホッとする。


「俺もこういう脅しでハンドガンを使いたくないんだがな」

「いや、マジで撃つつもりだったよね?」

「なんだリクエストに応えるか?」


それが、ルクセン君の希望なら仕方ないだろう。

そういえば、ルクセン君は3人の中で唯一撃たれた経験がなかったな。

今後の為にも撃たれることは経験しておいた方がいいかもな。

と思っていたのだが……。


「いやいやいやいや。僕は撃たれたことないから、ショック死するって!! というか、ほら意見が出たんだから、今後の方針決めないとね!!」


本人は撃たれるのは嫌だったようで、話を露骨に変えてきた。

無理に撃つつもりもないから、今回はいいだろう。

次機会があればためらいなくやっておいた方がいいかな?

ま、そこはいいとして、確かに方針を決めないとどうしようもない。


「情報を集めるっていうのは、俺も賛成だ。しかし、どんな情報を集めるかって話になるな」


情報を集めるのはいい。

だが、どんな情報を集めるかを決めないと、どうしようもない。

精査のしようがないからな。


「どんな情報ですか……。それはやはり、まずはこの資料に載っている道があるかの確認が一番だと思いますわ」

「そうだね。この情報が本物かどうかまずは調べないと」

「でもさ、この資料からだと、この街道って……。うん、聞いたことないな。ヨフィアさんわかりますか?」

「この町は……。ああ、わかりますよ。前王が魔王討伐のために駐留した……ってああ、そうかこのアスタリの町の近くに街道があるんですね!!」

「なるほど。魔王、あるいは魔族に対する最前線の街といわれるアスタリ。確かにヨフィアの言う通り、魔族討伐のための橋頭堡とは言われていましたね」


情報があっさり入ってきたが……。


「……そんな大層な名前がついていて、忘れていたのか?」


お前らは馬鹿かと言いたくなる状況だ。

俺たちが、というか女性陣が正気をなくしてまで探した情報よりも大事な街が存在していたことを忘れていやがった。


「あー、いえ。私たち、冒険者としては、この前王がいなくなった場所は縁起が悪いですので、近寄りませんし、その先に街道があるとか想像が付きませんよ」

「そして、前王が引き連れた討伐軍が全滅したのです。それもあって、皆、忘れたい記憶としていたのだと思います」


まあ、嫌な記憶は忘れるに限るっていうのはあるな。

それに、救援軍も送れんか下手すると、魔族とぶつかることになる。

前王が集めた軍が全滅したんだ。そんな相手とはぶつかりたくないよな。


「しかし、そうなると、宰相どころか、王が知らないわけないよな」

「そうなりますわね。わざと黙っていたとしか考えられませんわね」

「おそらくは、姫様の様子を見て黙っていたのではないかと……」


ああ、わかる。このお姫さんなら、勝手に突っ込んでいきそうだしな。

俺たちも真っ先に戦線投入する可能性もありそうだ。

ま、あるいは……。


「俺たちが聞かなかったからだろうな」

「え?」

「どういうことでしょうか?」

「そりゃ、もちろん俺たちが使いモノになるかどうかわからんからな。そこら辺の保険はかけていたようだな。当然といや当然だが。ああ、いい意味で言うと、俺たちを巻き込むべきか返すべきか悩んでいたんだろうな」


そういえば、この資料をルーメル王に渡したときもそんなに驚いてなかったしな。


「……そうですか。お父様はすべてわかっていて、私たちの捜査に協力したと」

「まあ、俺たちがどれだけやる気があるかを見るためでもあるだろうな」

「今から、お父様に話を聞きに行きましょう!! ちょっと言って面会を取り付けてきます!!」


やっぱりというか、お姫さんは飛び出していく。

この行動を見ると、ルーメル王の判断は正しかったと思うんだよな。

とは言え、これで面会の約束はできたから俺としては問題ないか……。






そしてついに出てきたアスタリという町の名前。

必勝ダンジョンからの皆さんは覚えているかな?


私は見直して書きました。

世の中そんなもん。


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