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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま
110/516

第110射:全員無事

全員無事



Side:アキラ・ユウキ



「んんー!!」


俺は体を伸ばして、寝て固まっていた体をほぐす。

ベッドのせいなのか、日々の訓練のせいなのか知らないけど、こっちに来てから、朝起きるといつもこんな感じだ。

いや、最近、訓練はしていないし、やっぱりベッドのせいかな?

そんなことを考えつつ、軽い運動を終える。


「ふう、昨日は大変だったし、それもあるかもな」


昨日は本当にひどかったからなー。

資料を探しにいって、光と撫子が、いや、女性陣全員が妙な宝石に正気を奪われちゃったからなー……。

それをどうにかするために、大騒ぎだったし。

結局資料の話はあとになって、詳しい話は今日にとなったけど……。


「ヨフィアさんたちは無事に起きてるかな」


最悪、女性陣を起こす方法から探さないといけないという話が出ている。

まあ、時間が経てばおそらく元に戻るだろうってことはわかっているんだけど、やっぱり起きている姿を見ないと心配だよな。


「ともかく、田中さんと合流するか」


俺は部屋を出て、田中さんの部屋へと移動する。

光たちに会う時は、一緒にって決めたのだ。

未だに正気を失っている可能性もあるからな。

1人で会っても対処できない可能性が大きい。

だから、一緒に行って何かあったとき対処できるようにということだ。


「おはようございます」

「はい。おはようございます」


そんな挨拶をして、メイドさんは足早に廊下を移動していく。

このメイドさんの他にも、廊下にはメイドさんたちが忙しく歩き回っている。

メイドの朝は早く、俺たちが起きるよりも早く起きて色々準備をしているのだ。

ほぼ夜明け前に起きているから、大変な仕事だと思う。

そんな感想を抱きつつ、廊下を曲がると……。


「ほら、しゃきっとしなさい」

「ちょ、ちょっと、病み上がりなんだから優しくしてくださいよー」

「それは私もです。それよりも、主である、3人のお世話を放っておいて寝ているとは何事ですか」

「それは、先輩も同じじゃ……」

「姫様はまだお休みのようでした。既に他のメイドを姫様につけて、貴女の様子を見に来ればこのありさまです」


そんなことを話しながら歩いているカチュアさんとヨフィアさんを見つけた。

ほっ、どうやら、2人とも正気に戻っているようだ。


「仕方ないじゃないですか。先輩だって正気をなくしてたのに、私にピシッとしろとか……」

「貴女は私よりも戦闘にたけているではないですか、その分早く復帰しているかと思ったのです」

「そんなの差別ですよ。私だってか弱い……」


ヨフィアさんが言いかけて、俺と視線が合う。


「おはようございます。2人とも無事そうでよかったです」

「ああー!! アキラさん!! あなたのヨフィアは無事ですよー……ぐえっ!?」


飛びつこうとしたヨフィアさんは、即座に首根っこをカチュアさんに掴まれて引き戻される。


「アキラ様、昨日はご迷惑をおかけいたしました」


そう言ってカチュアさんは頭を下げる。


「いえ、本当に無事でよかったです。でも、何で正気を失ってたと知っているんですか?」

「あー、それはですね、同僚から教えてもらったんですよ。まあ、最初は警戒されましたけどね」


ああ、なるほど。

同僚からか。


「実験させられたって、泣いてましたよ」

「とは言え、彼女たちのおかげで私たちもそこまで危険が無いと分かったのですから、ありがたい話です」


……確かに実験台にされたんだから、泣くぐらいしてもいいとは思う。

まあ、カチュアさんの言う通り、おかげで色々見通しが立ったのも事実だけど。


「まさか、俺たちも宝石であんなふうになるとは思っていませんでしたよ」

「私もびっくりです。ああいう精神操作系とかはちゃんと対策していたんですけどねー」

「本来、精神を操る魔術は重罪です。国家の運営として、そういう魔術は害悪でしかないですから」

「マノジルさんの授業で聞きました。そういうのは厳しいみたいですね」


よくある催眠術とかは駄目なんだよな、この世界。

だからこそ、俺たちはなにも洗脳されずに済んだと思うと、この世界はこの世界でちゃんとやっているところはあるんだなと思う。


「そうでないと、精神操作ができる人が一番偉いってことになっちゃいますからねー。というか、こうして対策もありますから、そういう人は上にはたてないんですけどね」

「そういう検査も存在しております。特に国の重鎮などは殊更念入りに調べられます。他国の間諜からのそういうものが無いとは限らないので」

「まあ、難しい話はいいとして、後は光と撫子、そしてお姫様やキシュアさんが目を覚ますといいですね」

「大丈夫ですよ。私たちが目を覚ましたんですし」

「はい。そうなると信じましょう。ですが、その目覚めを待つ前にそろそろ朝ごはんのお時間ですので、食堂の方へ。ご用意いたします」

「あ、いえ。まずは田中さんと合流を……」


と言いかけた時、田中さんとリカルドさんが廊下の角からひょっこり現れた。


「お、起きたか2人とも。おはよう。結城君もおはよう」

「おはようございます。お2人とも目が覚めたようでなによりですな」


2人ともカチュアさんとヨフィアさんの様子をみて安堵している。

ちゃんともとに戻ってるか心配だよなぁ~。


「おはようございます。ご迷惑をおかけしました。この通り、無事です」

「そうですよー。普通に元気です」

「みたいだな。元気になって何よりだ。さて、このまま朝飯に行こう。話したいこともある。みんないいか?」

「「「はい」」」


ということで、朝ごはんを食べるために食堂に入ると……。


「いやー、朝も朝でお腹すくよねー」

「昨日あれだけ食べて良く入りますわね。私はパン一個が精一杯ですわ」

「えー、なにそれー。前から不思議だったんだけどさー。そんなに小食でなんでそんなに育ってるんだよー。僕に対して喧嘩売ってるよね? ね?」

「そういうひねくれた受け取り方をしないでください。って、田中さん」

「え? あ、本当だ。カチュアさんやヨフィアさんもいるじゃん。やっほー。こっちだよー!!」


光と撫子が既に起きていて、朝食を食べていた。


「2人とも大丈夫か?」


俺は慌てて2人に駆け寄って体調を確認する。

だって、この二人は正気を失って、ふらふらになっていたんだから。


「あ、あー。ごめんねー。晃、心配しちゃったか」

「申し訳ありません。まさか、正気を失うとは思わなくて」


2人は正気を失っていた時の記憶があるのか、そう謝ってくる。


「いや、いいよ。2人が無事でよかった」


俺がそう言って安心していると、後ろから田中さんが光と撫子に声をかける。


「お、起きてたか。というか、あれから寝たのか?」


ん? あれから寝た?

どういうことだろう、何か2人が起きていたように聞こえるけど……。


「うん、寝たよ」

「ええ。しっかり食べたおかげで、ぐっすり寝られました」

「そうか。そりゃよかった。カップラーメンを渡したかいがあったもんだ」


あれー? なんかカップラーメン食べたって……。


「ちょっと待ってください。田中さん。2人って昨日起きたんですか?」

「ん? ああ、そうだ。なんか夜におなかが空いたって部屋にやってきてな」

「ちょーっと違うって、誤解があるよ!?」

「そうですわ。私たちはあの時、気が付けば夜だったのに驚いて、誰か事情の分かる人を探して田中さんのところにいったのです。カップラーメンは田中さんのご厚意でいただいただけです」


なるほど、夜中におなかが空いて目が覚めた2人は、田中さんに夜食をねだったわけか。

そういえば、2人とも、お昼前に寝ちゃったからな。


「あー、絶対勘違いしてる!!」

「晃さん、誤解しないでください。私たちは……」


なんか必死に説明する2人のせいで余計嘘くさく見えて、俺は普通に朝食を食べることにした。

俺だけ心配してて、なんか拍子抜けた。


「……ってわけなんだよ」

「はい。間違いないです」

「……なんというか、目を覚ました理由が光らしいな」


で、ご飯を食べながら光たちの話を聞くと、簡単にいえば、おなか減ったから目が覚めたみたいだ。

いや、本人は自然と目が覚めたって言ってるけど、時折、おなか時計での話があるから、きっと体がおなかが空いたってことで起きたんだろう。

それで、田中さんとあって、事情を聞いて安心して、カップラーメンをもらって、寝たらしい。

カップラーメンは重要だ。

俺ももらいたかった。


「というか、二つもカップラーメン食べておいて、朝もがっつりとか、太らないのか?」


俺は何も考えずにそう言うと、空気がビシッと音を立てて固まる。


「「……」」


2人も時を止めたように固まっている。

あ、やばい。

地雷を踏んだと自分でもわかった。


「僕が太ってるって?」

「私が太っているように見えますか?」


別に太ったとは言ってない。

太らないか? と聞いただけなんだが、2人には太ったとしか聞こえていないようだ。

殺気がダダ漏れだ。俺でもわかる。

2人は怒っている。


「あ、いえ。問題ないです。ただ、カップラーメンを食べたとか羨ましくてつい言ってしまいました」


抵抗はやめて素直な気持ちを口にする。

もうこうなるとだめだ。

さっさと全面降伏したほうが、被害が少ない。


「もっと、粘れよ」

「いや、無理ですって」


田中さんはなんというか呆れた感じでそう言ってくるが、抵抗は無意味だとわかっているので、こうするほかない。


「ま、仕方ないか。2人ともそこまでにしておけ。結城君だって同じように2人の心配をしていたんだ。それが、朝起きてみれば普通に元気で、夜には2人だけでラーメンをすすっていたと分かれば、多少は不機嫌にもなるだろうさ」

「あー、そう言われるとそうか」

「……こちらも大人げなかったですわね。ですが、女性に対して、迂闊な発言ですから、そこは注意してください」

「はい。すいませんでした!!」


よかった、田中さんがとりなしてくれたおかげで被害は軽くで済んだ。


「あとで、結城君にもラーメンやるから、それでいいか?」

「はい。ありがとうございます」


ついでにラーメンも手に入れられてよかった。

と思ったら、ヨフィアさんが手を挙げてきて……。


「はい、はい!! 私も、その食べ物食べてみたいですー!!」

「場所を選んで言いなさい」

「でもでも、食べてみたくはありませんか? きっとおいしいですよ?」

「……それはそうですが……」


珍しくカチュアさんが言い淀む。

美味しい物には抗えないのか。

その姿をみた田中さんはヤレヤレという感じで……。


「こうなると、皆で食べた方がいいか。じゃあ、お昼はラーメンだな」

「「やったー!!」」


田中さんの決断に露骨に喜ぶ光とヨフィアさん。

そして、その横で、こっそり話し合う撫子とカチュアさん。


「カチュアさん。確かにラーメンは美味しいのですが、ニキビができやすくなり、太りやすく……」

「……恐怖の食べ物でございますね。注意して食べなくては」


という女子トークを繰り広げる。

さっきまで、怒っていたことを考えると、切り替え早いよなー。

その気持ちは田中さんも一緒なのか、俺の方を向いて。


「ま、喧嘩になるよりはマシと思え。女ってのはこういう生き物だ。あと、昼の前に、資料の話をするぞ。そっちは結構考えることがあるから、そこは意識を切り替えていけ」

「はい」


そうだ。ラーメンの話で忘れていたが、俺たちはこれから魔族の拠点のことについて話し合うんだった。



そうして、俺たちが食堂を出ると……。


「なぜ何も思い出せないのでしょうか……。おや? みなさんいいところに、私は昨日、なにをしていたか、覚えていますでしょうか?」


やべっ、キシュアさんを忘れてたよ。

いや、影が薄いとか言わないよ。

ただ忙しくてちょっと失念してただけだ。






女性に体重の話は禁句。

これは、世の摂理。


そして、夜のラーメンは本当に美味しいよねー。

皆さんはどんなカップ麺を食べますか?



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