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ぼくのクラスにいるまこちゃんは。

作者: 那海晴

R15という訳ではないですが差別的表現があるかもしれません。ご了承下さい。

ぼくのクラスにいるまこちゃんは、いつもニコニコしている。めったにしゃべらない。口をひらいてなにかしゃべろうとするときもあるんだけど、なにもしゃべらないでこまったふうにまた、口をとじてしまう。なんでかな。ゆうとくんは、まこちゃんがはなしたのおきいたことがあるって。まこちゃんはしょーがいしゃなんだよって、ゆうとくんは言ってた。



まこちゃんがしゃべった。せんせいがさんすうのこたえをまこちゃんにきいた。そしたら、まこちゃんはエサをまってるコイみたいに口をぱくぱくさせてから、いー、い、いちですって言った。へんなしゃべりかたで、みんなわらった。ぼくもわらった。ゆうとくんがまこちゃんのまねをしてみんなもっとわらった。


まこちゃんはちょっとだけわらった。




二年生になった。ぼくはゆうとくんとまこちゃんとまた同じクラスになった。ゆうとくんは一年生のときにほかのクラスだったこに、まこちゃんはしょーがいしゃなんだぜって言った。


まこちゃんはいつもどうりニコニコしてた。




ぼくのクラスでは、じぶんのにっきをみんなの前でよむ、にっきのよみあげ当番っていうのがある。今日のにっきのよみあげ当番はまこちゃんだった。まこちゃんはなんども口をぱくぱくさせて、いきをすったりはいたりして、かおをまっかにさせてた。でも、「……………のうは、お、お、お、ぉ………、おばあちゃんちに、ぃ、きました。」

しか言わなかった。へんなしゃべりかたで、ぼくたちはわらった。先生はいいのよって言って、まこちゃんがにっきをよむのをとめた。がっきゅうがかりのみゆちゃんが、まこちゃんずるい、フコウヘイだって言った。ぼくたちもそう思ったから、そーだそーだって、みんなで言った。先生はこまった顔をした。


まこちゃんはニコニコしてるのになきそう。




三年生になった。みゆちゃんとはべつだけど、ゆうとくんとまこちゃんはまたぼくと同じクラスになった。ゆうとくんはまこちゃんを見つけるとまこちゃんのしゃべり方のまねをする。だけどまこちゃんはニコニコしてる。変なの。だから友達が出来ないんだよ。



国語のじゅぎょうで、まこちゃんがあてられた。まこちゃんはまたかんだ。まこちゃんのしゃべり方はかんだり声が出てなかったりしてやっぱり変だ。みんなでわらったら先生におこられた。いつもはおもしろい事があったらわらいなさい、福が来るよって、先生、言うのに。ぼくたちはおもしろいからわらっただけだよ。なんで先生はおこるんだろ。


まこちゃんはわらってるのにないてる。




四年生になった。悠人とはクラスが離れたけど、まことはやっぱり同じクラス。やだな。悠人がいなくても、みんなまこの変なしゃべり方の事を知っていた。だから、みんなまこに近よらないようにした。気持ちわるいから。悠人や美由に今年もまこと同じクラスなんてついてないねって言われた。ぼくもそう思う。



今日は日直だった。だから、教室に最後まで残って日誌を書いてた。そしたら、まこが来た。ぼくを見るとちょっとわらった。そして、わすれ物とりに来たって言った。ふつうのしゃべり方だった。



ぼくたちはいっぱい話した。まこの名前は、優しい心って書いてまこって読むんだって。優心(まこ)はぼくの事、頭いいって言ってくれた。うれしかった。なんで優心はいつもふつうにしゃべれないのって聞いたら、あれがわたしのふつうのしゃべり方なんだって、ちょっと悲しそうに言った。生まれつき、みんなの言うふつうのしゃべり方が出来ないんだって。優心がほんとに悲しそうだから、ぼくは、でもぼくたちみたいにしゃべれなくても優心は水泳だって鉄棒だってうまいよって言ったら、ありがとうってわらってくれた。



なんだ、しゃべり方がぼくたちのふつうじゃないだけで、気持ちわるくもなんともないじゃん。ふつうの同級生じゃん。



五年生になった。優心とは別のクラスになった。なのに、ぼくのクラスまで、優心のしゃべり方が変だってウワサが来ていた。皆が優心の事を気持ち悪いって言っている。皆にきらわれたくないから、ぼくも優心の事を気持ち悪いって言った。



優心と同じ委員会になった。しいく委員だ。毎週仕事があるから、がんばろーなって声をかけた。優心は笑ってうなずいてくれた。同じしいく委員のそーすけに、あんなヤツとはなしてあげるなんてお前優しいんだなって言われた。ぼくは話したいから話しているだけなんだけど。



優心とかなり話すようになった。優心は時どきその、生まれつきのなんかで話せなくなるだけで、普通にいいヤツ。悠人や美由となんの変わりもない。



六年生になった。悠人とも美由とも優心とも同じクラス。嬉しくて、優心に今年は同じクラスだな、よろしくって声かけたら、優心もよろしくって笑ってくれた。そしたら悠人がお前よくあんな気持ち悪いのと話せるなって言ってきた。あいつ障害者なんだぞ、俺等と違うんだぞって。



優心は障害者じゃない。例え障害者だったとしても、気持ち悪くなんかない。自分と違うものは気持ち悪い、なんて間違ってる。



僕はあいまいに笑った。悠人を敵にまわしたくないし、それに、悠人もそんな悪いヤツじゃないから。



六年生になっても、優心のしゃべり方はやっぱり僕等の言う、普通、ではなかった。やっぱり皆が優心の事を気持ち悪いって言って、普通じゃないって言って、笑った。



今日の授業でも優心は、僕等の言う普通のしゃべり方、が出来なかった。皆が気持ち悪いって言って笑った。僕は笑えなかった。

悠人が優心のしゃべり方の真似をして、優心にむかって障害者はこの学校にいるな、と言った。皆笑ってた。





何故だろう。

僕は何故か、悠人が可哀想だ、と思ったんだ。






優心は泣かなかった。にこりともしなかった。ただ真っ直ぐに、笑っている悠人を見ていた。




本当にいるんです。本当にあるんです。こういう事。いきなり声、というか音が自分の喉からでなくなって、本当に頭が真っ白になるんです。すごく笑われるんです。気持ち悪いって散々言われるんです。でも、皆が知らないだけで結構いるんですよ、優心みたいな人。知って下さい、お願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公が成長するにつれて、 文章がかわっていくのが、とても良いと思いました。 その分、切なさが増したような感じがします。 まこちゃんはとても強い子だなぁと思ったのが、印象的ですね。 あとは…
2014/06/17 13:25 退会済み
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