友人の家の扉
短大を卒業し、会社員として働き始めていた私は6月頃になってようやく自分の生活ペースが掴むことができ、余裕が出来始めたいた。
そんな時、4月になってからは全然会っていなかった友人からの誘いに2つ返事で了承し、日曜日に会う約束をしたのが3日前。
金持ちで一人暮らしの友人宅にお邪魔して2階に上がったのが40分前、友人がちょっとお茶を持ってくるねといってから早30分、人のうちで勝手なことは出来ないのはわかっているのだが、ちょっと遅すぎるんじゃないでしょうか。
20分前くらいからトイレ行きたいのにどうしてくれようか。
勝手に借りるのも失礼だし、しかし何でこんなに遅いのだろう。
そうだ、凄くいいコーヒーでも入れてくれているのかもしれない、流石金持ち本当にありがとうございます。
友人宅のトイレは2階と1階に一個ずつ(大学が家から遠いため一軒屋をわざわざ親が購入してくれたらしい。この時点でありえないと思った)
流石にこれ以上我慢するのは健康上よくないと思い、下にいる筈の友人のもとへ行こうと扉を開けた瞬間その出来事は起こった。
ガチャ
「―--間違えました」
「間違ってないから!!お願いだから閉めないでー!!!」
豪華な装飾があしらわれた王宮っぽい部屋、視界に入る縄で身動きが取れない友人、そんな友人をぐるりと囲む兵士っぽい格好をした西洋風な男性が数十人。全てぽいが付くのは私が西洋の服装をそんなに知らないからだ。
皆顔立ちは整っているが、その内民族衣装を着ている人は特に規格外の美しさをしている。
その中でも一際目立つ、青い瞳をした美丈夫は一番中央の高い位置からポカーンとした目でこちらを見つめてくる、なんなんだ?あんまり見るとそのお綺麗な瞳に目潰しするぞ。
おかしいな、扉を開けた先には廊下が広がっているはずなのだけど。
もう一回閉めて開けたら元の廊下に戻るかもしれない。
「とりあえず、トイレ借りてから考えることにする。」
「えぇ!?現実逃避がしたいのか、私よりトイレの方が大事なのかが分からないよ!」
「30分前なら確実にあんただったよ」
「それって今トイレってことじゃんかぁ!!どんだけぎりぎりなのよー!」
バカーといいながらその場に泣き崩れるフリをしようとするも、縄で手を後ろに縛られているためそのまま勢いよく頭を床にぶつけた友人はその場をのた打ち回っている。隣で縄を握っている、がたいのいいお兄さんがおろおろしていてちょっと可愛い。
ちなみにこの友人に対する周りの評価は、凄くかわいいし、いい子なのだけれど途方も無く馬鹿、である。
危険な状態な筈なのにあんまり緊迫感がないのはこの友人のせいだろう。
30分前の私だったら、まずしない判断だけれど膀胱的に余裕がなかった私は、この子なら大丈夫、最悪帰ってこられなくても生きていけるだろうと開けた扉を閉めようとした。
ガッ
と音がしたと思ったら扉は閉まらず驚いて振り向いてみるとさっきまでずっとこっちを見つめていたイケメンが近くにいた。
足元を見ると扉に足を挟んでいて閉められない状態になっている。
セールマンしかしないような高等技術を駆使した人物はとろりと甘い表情でこちらを見ている。
割と距離があったのにも関わらず一瞬でこちらに間合いを詰めてきたってなんなの?
尿意やら混乱で泣いてしまいそうになる。
「なんなの・・・」
「ðòČĕĕĜööÏ。 ŖŹůÇĤĜþğěĕďŌňč!!」
泣きそうな私を抱きしめたかと思えば頬にキスをし、よく分からない言葉でまくしたててきた彼、よく分からなかったがよくない雰囲気がしたので首を横に振っておく。私はNoと言える日本人なのだ。私が首を横にふった瞬間ぴりっとなにかが肌を刺激した。
空気が変わったように静寂が走った。今までがやがやしていた声もなく今は波の音しかしない。
いつから私は時空魔法を使えるようになったのだろう。
驚きが一週まわって逆に冷静になった私は周りを見渡してみることにした。びっくりした顔でこっちを見ている者や真っ青になっているもの、果ては嬉しそうな目で私をみているものさまざまな表情のまま固まっている。
そして私をいまだ抱きしめている人は絶望した表情で固まっていた。
なんかごめんと心の中で謝罪した後に私はそーと腕から抜け出した、たやすく逃げ出すことが出来る、友人の周りにいた人たちも固まっているため目で友人にこっちにこいと合図をする。
反応はない。
ブルータスお前もか。
しょうがないので友人に近寄り腕の縄をなんとかほどき扉まで引きずっていく。
いくら友人が軽くてもいかんせん私は運動不足の社会人。
膀胱もやばく力も入らず、どうしても運ぶペースは遅くなってしまう。
それでもなんとか扉の目の前まできた。よしよしここまではいい調子だ。
問題なのは扉の前で突っ立ているこの美丈夫、凄く邪魔である。
友人をそのまま床においてしゃがむと目の前の美丈夫の足をゆっくりと扉から離すために動かす。
最後くらいイケメン眺めてくかと上を見上げて固まった。
青い瞳がだんだん縦長のものに、かつ表情は無表情に変わっていくではないか。なんでこの人だけ微妙に動いているのだろうか。
というかその目、昨日見た雑誌にでてきたやもりにそっくりだ。
可愛いやもり可愛いよ。こんなおかしな状況であるにも関わらず爬虫類好きな私は雑誌を思い出しふっと笑った瞬間
今まで停止した人たちが嘘のように動き出した。
「うわ、縄ほどけてるなんで!?」
「!?いいから早く帰ろう!」
「ēìĉıĪĎĝĻŚŕIJij!」
周りの硬直が止まった瞬間に友人も起きたため
背後から聞こえる怒声やこっちに迫る美丈夫の腕を無理やり振りほどいた勢いで友人の腕を掴み扉の中に滑り込んでその扉を閉める刹那、青い瞳がこちらを見つめていた。
バタン!
「あ、ありがとう助かったよ~」
「・・・うん」
「ど、どうしたの、顔真っ青だよ!?」
「大丈夫、とにかくトイレ借りる。後あんたの家お払いしたほうがいいと思うよ」
「そうだね。あ~でもあの人かっこよかったな。」
とりあえず飲み物もって来るねーと彼女は先ほどまでの体験なんてなかったのかのように元気に扉を開けた。
今度はちゃんと廊下だった。
それを確認した友人の後を追いかけるようにしてトイレに向かった。
トイレから出た瞬間今までの緊張がとけたのか扉を背に座り込んでしまった。
見てしまった
見てしまったのだ
なんで最後に振り返ってしまったのだろう。
あんな美しくて恐ろしいものを私は今まで見たことがない。
最後に見たあの青い瞳の男は綺麗に笑った。
恐ろしく整った顔は何故か獲物を見つけた動物に見えだ。
逃がさないと瞳で語っているかのようだった。
ここでぐずぐず考えていてもらちがあかないと
ふーと、一度息を吐き心を落ち着かせる。
あの瞳を見た瞬間に時間が止まってしまうかのように思えたが、勢いがあった扉はそのまま閉まってくれた。
いずれにせよ、もうこんな摩訶不思議大変はごめんだと思い。もう金輪際、友人の家には行かないようにしようと誓った。
×月○日未明
一人の女性が行方不明になる。
食べかけの食事があったこと、車と靴は全て自宅にあったことから外出先での事件ではないだろうと警察は判断。
一人暮らしだった彼女のアパートに争った形跡などはなく財布もそのままであるため金銭目的ではないようだ。
親しい友人に聞くが心当たりはないという。
その内の一人だけはとても怯えた表情であの人が違う世界に連れていったと訴えていたが
友人を失った心的ストレスだろうと精神科の判断が下された。
その後ずっと同じ事を訴え続けた女性も同じように忽然と姿を消した。
事件は未解決のままである
もしかしたら美丈夫視点か友人視点を書くかもしれません。
すみません、確認はしましたが誤字脱字がたくさんあるかと思います。
ご閲覧ありがとうございました。