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first  作者: 真織
8/9

8

外を歩いたのは、ほんのしばらくの間だったけど、エアコンの効いたカフェに入った時は天国だった。

来住は、メニューを私に差し出しながら、

「こんな暑い日に誘って、ごめん」

と、別に暑いのは彼のせいじゃないのに謝ってくれた。

「けど、今じゃないと、どんどん先輩に会う機会も減ると思ったから」

来住は2年。私は3年。受験だし、もう部活に出ることもなくなっていく。

オーダーを済ませ、注文したアイスティーがやってくるまでの間、私たちは無言だった。

それは、気まずい沈黙ではなくて、ただ降りてきた静けさと言えばいいのか。

私は、向かい合って座った来住を見ていた。

来住は軽く目を伏せて、ゆっくりと水を飲んでいる。

そして、アイスティーがやってきた。

「りか」

いきなり名前で。

「何、みてたの?」

その問いは、すんなり私の中に入ってきて、

「ああ、来住」

と何気に答えてしまった。...まずかったかもしれない。

赤面しそうな場面になると、かえってポーカーフェイスしてしまう私で。

反対に、来住の方が、一瞬絶句した。

それから来住は、意を決したように、

「先輩。返事、聞かせて」

と言った。

私は、ストローでグラスの中の氷をつつく。

「先輩」

来住が、呼んでる。

「....一番好きなひとと、付き合うべきだと思う」

逃げるように私が言うと、

「だから、俺はっ」

来住は、身を乗り出した。それから、はっと腰を落とし、

「...先輩は、違うんだっけ」

呟いた。

「まだ、先輩のこと...」

来住は最後まで言わなかったけど、言いたいことはわかる。

まだ、先輩を好きなのか。

私は、首を振った。

「そうじゃないと思う。けど、わからない」

「俺じゃ、だめ?」

まっすぐに。私を見てる。

私は、たまらずに視線を逸らした。










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