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夏休み中だけあって、いろんな世代の人で席が埋まっていた。来住は、場内をさっと見渡して、すぐに動き、真ん中より少し後ろで左よりの二席をキープした。
「りか、ここでいい?」
はしゃいでいる。引き込まれて笑いながら、私は来住の確保してくれた席まで行った。
「颯爽たるエスコートぶりだね」
座りながら私が言うと、来住は、
「この日を、ずっと夢見てましたから」
ジョークともつかず言い放ち、私が席に落ち着いたのを見届けてから、隣に腰を下ろした。
「ずっと?」
「うん」
上映までにまだ時間があるのか、照明が落ちない。幕の降りたままのスクリーンは、なんだか手持ち無沙汰に見えた。
「ずっとって?」
更に聞いてしまうあたり、私も狡い。
「入学して、すぐ。部の勧誘されたときから」
来住は、さらさら答える。
「はっきり言って、俺、りか目当てでECS入ったようなもんだから」
ECS。イングリッシュ-カンバセーション-ソサエティ、いわゆる英会話クラブ。文化部にしてはかなり活発な方で、放課後は毎日活動してる。
「理想が、目の前にいたんだ」
なんとも優しい瞳で私を見る。
「よっく言うよ」
いたたまれずに、顔を背ける。
「そんな理由で、部活決めるなんて」
私が非難口調になると、
「大抵、そんなもんだよ」
来住は断言する。それから、
「そう言う、りかだって...」
言いかけて、止めた。
「いいよ、来住。...私も、同類」
なるべく、普通に言ったつもりだった。