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来住の選択は、流行りのSFアクション。ハラハラドキドキ、誰でも楽しめるような、肩の凝らない映画。ラブストーリーじゃなくて、私は正直ほっとしていた。
「恋愛ものは、きついでしょ?」
来住が、私をからかうように言う。実際、自分がキツイと思ってるくせに。
私が肩を竦めてる間に、来住は、さっさと窓口でチケットを買ってきてしまった。お財布を出そうとすると、
「いいよ」
「よくない」
で、押し問答。
私って強情かも。
でも、来住は、綺麗に笑って、
「今日は、俺が無理に誘ったから。また今度、奢って?」
と言った。
「今度?」
「そ。貸し作っとくと、も一回会えるでしょ?」
さも嬉しそうに言う。私の性格を把握した上で、結構コイツもしたたかかもしれない。
仕方なく、一旦出した財布を鞄に戻す。ちょっと情けない感じがした。
半券を切ってもらって、ロビーに入る。
「りか、なんか、いる?」
どうやら、ポップコーンとかジュースとか、その類いのことを指しているらしい。
「あ、パス」
私が言うと、彼も頷いた。
「俺、上映中にモノ食べたりって、ちょっとどうかと思うから」
だって。それには、私も同意見。せっかく見に来てる人の邪魔になるべきじゃない。
そうして、来住は、先にドアを開けて、待っていてくれる。
「ありがとう」
微笑むと、
「いえいえ」
微笑みが返って来た。