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階段を下りて、地下のショッピング街を抜けて行く。どんどん、歩く。
「くずみー、逃げないから、放してよ」
照れもあって、冗談めかして言った。
「さっき、俺に任すって言ったばっかだろ」
来住は知らん顔。それでも、さっきよりは歩くスピードを押さえてくれている。
ひとの流れを泳ぐように、来住は綺麗に歩く。それに引かれて歩いている自分が、妙に不思議だった。
「私、まだOKしたわけじゃないよ」
来住と付き合うなんて。...言いながら、少し喘いでいる心に気づく。
「知ってるよ」
怒ったように吐き出す彼は、ずっと前を向いて、私に見せるのは横顔だけ。
「...先輩のことだったら」
「え?」
問い返すと、来住はくるりと表情を変え、茶目っ気たっぷりの笑顔になって、
「断られる前の、役得!!」
と弾んだ声で答えた。
「嫌なら、来なきゃよかったんだよ。俺、来ないって半分覚悟してたし。でも、りかは出てきた。だから、今日は、俺のものっ!」
...もの、だなんて。いつもなら、怒り脳天、来そうな台詞。でも、来住が、あんまり無邪気に言うから、言い返せなくて。
そして来住は、握った手に力を込めた。