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誰だって、一番好きなひとの隣で笑っていたい。
見渡せば、街は、恋人たちで溢れてる...
...あなたの隣にいるのは、一番好きなひとですか?
☆ ☆ ☆
「りかセンパイ」
呼ばれて、首を傾ける。
斜め上、仰角30度。彼は、私より頭ひとつ背が高い。
「あ、宮崎先輩」
私が怪訝そうに見上げたからだろうか、彼が慌てて言い直した。
「いいよ、さっきので。それに、先輩も、なしね。学校にいるわけじゃないんだから」
私は言った。あんまり外で、先輩センパイ言われたくない。
すると、彼は嬉しそうに、
「じゃ、どっか行きたいとこ、ありますか?」
と、勢い込む。
駅の改札を出て、地下街に下りる階段の横手に私達は立っていた。待ち合わせたはいいものの、なんだか、ぎこちない。
二人とも時間より少し早めに着いてしまい、私は、約束した相手を前にしながら、ぼんやり街往く人の群れを眺めていた。
そんな自分を振り払って、
「敬語もやめてよー。いつも、そんなんじゃないくせに」
私は、すこおしテンポを軽くして笑った。つられて彼もちょっと笑う。
緊張、解けたかな。
「んじゃ、りか。俺、見たい映画あるんだけど、いい?」
急にいつもの来住に戻る。いいんだけど。いきなり、呼び捨て、ね。
年下のくせに、偉そうなのよ。
「いーよ、もう。今日は、来住に任せる」
私が苦笑しながら言うと、
「よーし」
と、気合いを入れて、彼は私の手を引いて歩き出す。
心臓が、ことんと音をたてた。