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姦短掌篇蒐

【姦】小玉鼠【SS】

作者: 乙丑


 夕暮れ近くの悟帖ヶ山を葉月と浜路、美耶の三人に加えて、道案内の遊火の四人は下っていた。


「今度のテスト、いっぱい練習したから大丈夫だね」

 と、話をしていると、道端にポツリと小さな鼠がいるのを美耶が見つける。


「見て、まんまるのネズミがいる」

「ハッカネズミかな?」

 と、葉月と美耶が話している中、浜路は血の気が引いたように蒼白としていた。


「――どうしたの?」

「二人とも早く帰ろうっ! こんなところに鼠なんていないし、そもそも鼠の臭いなんてしてなかったし」


 その慌てぶりからして、「もしかして浜路ちゃんってネズミ駄目?」

 と、美耶が尋ねた。


「いや、うちの犬がたまに厨房から外に出たネズミを捉えて、口に咥えてくるの何回も見てるから、全然大丈夫なんだけど」


 浜路はケロッとした表情で云う。


「そっちのほうが怖いよ!」

 と、葉月はツッコむ。


「まぁまぁ、こんなに可愛いんだから……」


 そう云うや、美耶は鼠に触れようとすると、鼠は逃げる気配もなく、触れた。


「うわぁ、モフモフしててきもちいい」

「なにやってるの?」

「浜路ちゃん、こんなに可愛いのに怖がっちゃ駄目だよ」


 美耶がそう云うと、ふと違和感を感じ、振り返ると、鼠は先ほどよりも一回り大きくなっている。


「あれ?」と首を傾げる。


「それは『小玉鼠』って云って、山で人を見ると立ち止まって膨らむんだよ」

「――膨らむ? なにそれ、ハムスターみたい」

「ハムスターは頬を膨らませるだけでしょ? 小玉鼠は体を膨らませて、中のものを――」



 ――パンッ!



 浜路の言葉を待たずに小玉鼠は破裂し、内臓がそこらへんに散らばった。

 その残骸を三人はモロに受ける。


『いのなっちえっつおれあくかやはらか』


 という叫びが山中に響き渡った。



「仕方ないわなぁ、知らんかったわけじゃし。ただ無闇に触った美耶が悪いわな」

 と、鳴狗寺住職である実義が三人に言い聞かせる。


「あうぅ、もう外で鼠を見たら逃げる」

 美耶がそう云うと「わたしも」

 と、葉月は臭い消しの香水をつけながら言った。


「小玉鼠は、山の神がマタギたちに猟をさせないために見せる妖怪でな、それを目撃すると、マタギたちはその日の猟をやめるんじゃよ。無理にやっても成果はないし、雪崩なんかに遭う恐れもあるしな」


 実義はカカカッと笑う。


「しかし、美耶ちゃんがなれとらんのはわかるが、葉月ちゃんも精神崩壊寸前じゃったな?」

「阿弥陀警部に見せてもらってる写真って、最初から死んでるから慣れてるけど、目の前で死ぬのは……」


 葉月はワナワナと言葉を震わせる。


『こりゃ、結構なトラウマじゃな……』

 と、実義は苦笑いを浮かべた。


 葉月と美耶は家に帰った後、すぐに教えてもらった呪縛を解く、「ナムアブラウンケンソワカ」という言葉を唱えた。

 これは小玉鼠に祟りとお払い出来るものであった。


今回の話は奪衣婆で、三人が子安神社で練習をした帰りの出来事です。

因みに浜路は一週間くらい血の臭いが鼻から離れませんでした(原因は血が鼻の穴に付着していた)が、鼻洗浄したら治りました。

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