4-1 新たな被害者
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私は追う、あの人の後ろを追い続ける。
あの人が向かう先が枝垂桜で、私が向かう先があの人の下。
二人は同じ目的で、同じ方向に進んでいる、
そう考えると足が軽くなり、あの人との距離が縮まる。
ほら、舞う桜の花びらが見えてきた、
ほら、あの人に、もう私の手が届きそう。
ほら、追いついた。
私は堪らずあの人を抱きしめた。
そして、あの人が振り返って私を見つめ返そうとする。
でも違った、振り返って見えた顔はあの人じゃなかった。
抱きしめた人はあの人じゃなかった。
また、間違えてしまった。
そうだ、コレは夢だ、また起きた後は、牢獄、桜の下の牢獄。
___どたっ、どたっ___
目を覚ますと、またかび臭い牢獄。
___どたっ、どたっ___
アイツが階段から降りる音が聞こえる。
汚らしいアイツは腫瘍のように突き出たお腹を揺らし階段から降りていた。
後ろには手を縛られた少女がまるで、犬の散歩のように引っ張って連れられていた。
少女は不思議な服装をしていた。
まるで、神社で巫女さんが着るような服を着ている。
今度の犠牲者はあの娘なんだ。
アイツに酷い目にあわされる、私のように。
涙が目から溢れてきた。
アイツは最近、男女構わず牢に攫って来る。
でもその少女は私の前であり得ない行動をとっている。
少女はアイツを無視して、こっちに向かってきた。
アイツは手綱を手を引っ張り、少女を無理矢理自分の下に戻そうとしたのだが、
少女はいとも簡単に手を縛った縄を引き千切った。
どこに、あんな細腕にあんな力があるんだろう。
少女はアイツをまるで気にせず、こっちに向かってくる。
「見つけた」
そう少女は呟いた。
アイツがバットを持って後ろから、少女に殴りかかろうとしていた。
「危ない!!逃げて!!」と叫んでも、私の喉から何も出なかった。
バットが振りかぶられ、少女の頭に落ちてきた。
これから起こる悲惨な光景を見てられず、とっさに目を閉じてしまった。
少女の無事を期待する気持が、徐々に瞼をこじ開ける。
きっと、少女は倒れてるんだ、私の前で、でも…
薄目を開いた先は、信じられない光景が広がっていた。
少女は片手でバットを受け止め、再度振りかぶろうとするアイツが何度も
少女の手から引っ張ってバットを奪おうとするも、
握り締められたバットはビクともしない。
「見つけたよ、やっぱり君だ」
少女の目が紅く光り「鬼魔駆逐 急々如律令」と呟くと
アイツは落下したガラス細工の様に粉々に砕け散った。
信じられない光景に目を丸くしていると、少女は檻の前まで近づいてきた。
そして、檻を手でつかみ開けようとするのだった。
鉄の檻は何をやってもビクともしないはずなのに、鍵がないと此処は開かないのに。
「止めて!無理よ!」と叫んでも、お構いなく少女は檻を開けようとしている。
少女が何かを呟いている、まるで異国の念仏のような言葉を、
少女が呟きが続くと共に、牢獄が揺れ始めた。
地震…?いや、これは地震なんかじゃない。
周りをみると、牢獄に亀裂が走っていた。
ミシミシと音建てて、牢獄が崩されようとしている。
檻は既にヒビだらけで、今にも壊れそうだ、
牢獄は、天井にまでヒビ割れが走り、揺れと共に、破片が上から降ってきている。
この牢が壊れる?自由になれる?私が?
でもあの人はどうなるの?この屋敷から私を助けようとしているあの人は?
違う、こんなの私が想像していた結末じゃない。
駄目、駄目、駄目駄目!私を助けていいのは
「私を助けていいのはあの人だけよ!!もう止めて!!!」
少女の後ろに砕け散ったはずのアイツが元通りに再生し、立ち上がった。
また少女目掛けてバットを振り下ろす。
背中に目があるようにバットをサッと避け、少女はアイツの横に回りこみ、
何か御札のようなものを貼り付けると、アイツはまた金縛りに遭ったように痺れ
動きを止めた。
「そうだ、やっぱり君だ」
牢獄に入った亀裂は、時間をまき戻したかのように元に戻っていた。
少女は紅く光る目をこっちに向けて、私にはっきりと言った
「君がこの桜の牢獄の主だったんだね」
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