3-1 少女の待ち人
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ああ、あの人の声が聞こえる、かすかだけど、あの優しい声が聞こえる。
声が小さくて何を言っているのか解らない。
けど、あの人がここに私を助けにやって来たのだ。
顔を上げると、目の前の牢が消えていて、あの人が外へ向かって走り出した。
私は助けてくれたあの人を全力で追っかけた、きっと私を外に導いてくれてるんだ。
あの人は走りながら私を見て、悲痛な顔で何か言っている。
何故か声はかすれて聞こえない。でも聞こえなくてもいい、
きっと優しいあの人は「もうすぐ外だ頑張れ」、「俺が必ず守ってやる」
そう言っているに決まっているのだから。
私は全力で追い続ける。
でも、心臓が割れんばかりに走っているのに、
何故かあの人はどんどん遠ざかっていく、いくら「待って、待って!」と叫んでも、
声は闇に飲み込まれ、そのまま闇は私の体ごと飲み込んでいった。
私は知っていた、これが夢であることを。
目を覚ますといつもの牢獄、アイツが他の牢の人をいたぶっている音が聞こえる。
何度この夢を見ただろう、アイツが牢獄の住人を増やしだすより、
ずっと前からこの夢を何度も見て、
ずっと前からこの夢が現実になるのを待ちわびている。
私は窓の外の枝垂桜に祈る。
"夢が叶いますよう"にと。
だから、だからだから、だからだからだから、
ハヤク、ハヤク、ハヤク来て、早く助けに来て
アナタをずっと待っている、それが私の唯一の希望、救いの蜘蛛の糸。
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