1-1 囚われの少女
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窓の外、枝垂桜が世界を桜色で覆い尽くす勢いで咲いている。
桜を通して窓から入る光が、かび臭い牢屋の中にまで陽の空気を運んでくれる。
もう、何年ここに閉じ込められているのかさえ、
解らなくなってきてどれぐらい経つのだろうか。
きっと、私は自由だけでなく、時間の概念さえ奪われたに違いない。
私はもう枝垂桜がいつ咲いたかさえ思い出せないのだ。
いつだったろうか、母親と喧嘩した後、気分転換に夜桜を見ようと、
親への反抗も兼ねて散歩に出かけた先で、急に後頭部が重くなったかと思うと、
そのままガタリと倒れ、
ゼンマイがきれたくるみ割り人形のように私は動けなくなってしまった。
そして起きた後、私は此処にいて、目の前にアイツがいた。
その後の事は思い出したくもない。
こんな状況で正気を保っている自分を誰か褒めて欲しい。
でも、私がまだ私でいれるのは私の力ではなく、この桜とあの人のおかげなんだ。
いつか、私を助けてくれるあの人と、
いつか、あの桜の下で一緒にお弁当を食べるんだ。
精一杯オシャレして、カワイイお弁当もっていって、この桜の下であの人と。
きっとこの牢の窓から刺す光が私とあの人と世界を繋いでいる。
いつかきっと、優しいあの人が光と共に現れて、助け出してくれるんだ。
私は祈り続ける。
早く、速く、ハヤく、あの人がどうか この牢獄から、私を連れ出してくれるように
そして、あの枝垂桜の下に。
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囚われの少女と探偵の視点を切り替えて物語を展開していきたいと思ってます。