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異世界での職業適性  作者: 子儀
1章 異世界への移住者募集中
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01話 異世界への移住者募集中

 俺はわりと人生に飽きていた。

 退屈していた、というのとは少し違う。

 別段不幸なわけじゃないし、死にたいとかそんなネガティブな意識があったわけでもない。

 齢27。社会人になって3年。世の中ブラック企業がどうのという話題をちらほら聞く中で、うちの会社は給料こそそんなに高くはないものの、上司はムチャぶりしないし残業代はちゃんと出るし、特に不満もない。

 ただ、この時点で自分の人生の上限がなんとなく見えてしまって、早くも余生を楽しむモードになってしまったのだ。

 学生の頃はまだまだ選択肢がいっぱいあって、何かを手に入れるために必死になれたもんだなぁ、とすっかり年寄り気分。人生の先輩方に聞かれたら鼻で笑われるだろうけど。

 

 そんなのんびりした日々に我慢が出来なくなって、仕事を辞めてしまった。が、無職生活でだらだらするつもりはない。それでは結局今までと同じだ。辞めた意味がない。

 仕事を辞めたことで親ともほとんど縁が切れた。友人関係は顔を合わせる環境では頻繁に遊んでも、会わないときは全然会わなくても気にならない。彼女はいない。

 ほとんどすべての人間関係が無くなったことで、すごく身軽になった気がする。誰かに心配かけることを気にしなくていいっていうのは、すごく爽快だ。そのうち人恋しくなるだろうけど、その時はまた新たな人間関係を構築すればいいや。


 とにかく、仕事を辞めたらやってみようと思っていたこと。それは放浪生活。最悪そのまま行き倒れることも想定したレベルで、思うがまま行き当たりばったり、貯金が尽きるまでふらふらとあちこちの国をさ迷ってみたいと思っていた。

 誰でもある、「自由になりたい」とか「一からやり直したい」っていう気持ちを行動に移したかった。

 さすがに俺も、「新しい自分」とかそんなものが見つかると思うほど夢見がちじゃない。

 この先60年近くきっちりと生きるよりも、せいぜい1年程度を全力で好き勝手生きてそのまま死ぬほうにうっかり魅力を感じてしまったのだ。さすがに死にかけたら死ぬほど反省するだろうけど、後悔はしない覚悟を決めた。


 仕事を辞めて、アパートの契約解除と荷物の処分の準備が整い、さぁ最初にどこに行こうかと残った時間で集めた旅行会社やらのパンフレットをめくる。ツアープランに乗るつもりはないけど、放浪のスタート地点にする面白そうな場所を探すのに便利かと思って適当に貰いまくっていたのだ。

 ハワイ、とかグアム、とかそういうベタなのはつまらない。何かイロモノはないか、と探しているうちに、そのチラシが目に入った。

 

 

 ――異世界への移住者募集中

 

 

 これはひどい。

 某悪の組織の戦闘員募集みたいなジョーク求人の類だろうか。いつの間に紛れ込んだんだろう。

 最近は異世界トリップも一つのジャンルとして定着しているようだし、それに乗っかったのかもしれない。そう思って、次のチラシをめくろうと思ったが、ふと手を止めた。

 これをスルーしていいのか。こういうネタを探していたのではなかったか。

 乗るしかない、このビック○ェーブに!

 折角だし電話してみよう。どんなリアクションが返ってくるか楽しんでから、他の場所を探してもいいはず。

 そう思い直し、解約間際の携帯電話を取り出した。

 チラシの下にデカデカと書かれた電話番号を入力する。

 

 RRRRRRRRR……

 

 この発信音というのはいつの時代になっても変わらないものなのかなぁ、などとどうでもいい事を思いながら、相手が出るのを待つ。

 RRRR……ガチャ

 

「はい、こちら入界管理局です」

 出たー。

 意外なことにセクシーボイスなお姉さん。

 “入国”じゃなくて“入界”なのね。どうでもいいけど“入国管理局”はこんな電話は受け付けてないはず。

「あのー、移住者希望のチラシを見たんですけど」

「申し込みの方ですか。ありがとうございます。お名前をお願いします」

「あ、堺 慎太郎(サカイ シンタロウ)です」

「シンタロウ様ですね。承知しました」

 しまった。耳元で囁かれる声に釣られてうっかり本名を言ってしまった。まぁいいか。この声で名前を呼ばれただけでも電話をした甲斐があったというものだ。

「申し訳ありません。こちら異世界への移住ですが、再びそちらの世界に戻ってくる事はできませんがよろしいでしょうか」

 そういう設定か。

「大丈夫です。心配する相手もいませんし」

「異世界――<クレアティオ>への移住日程ですが、ご希望はございますか」

「それじゃ、今からで」

 <クレアティオ>っていうのがその世界の名称か。それにしてもこのお姉さんも結構ノリノリだな。

 そう思った次の瞬間、電話越しじゃない肉声が耳元で聞こえた。

「承知しました。――ようこそ、<クレアティオ>へ」

 その声と同時、意識がぷつっと途切れた。

 

急にゲームっぽい世界観が書きたくなりました。

スキル&称号システムの世界をお楽しみください。

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