初恋
ずっと好きだった。
でも、今日でお別れ――卒業式。
ここで、想いを伝えないと私は一生後悔する。
でも……なんて言えばいいの――
私は先輩と付き合いたいのだろうか?
多分、違う。
でも、だったら何故、校門から出てくる先輩を待っているんだろう。
桜の花びらが、ひらりと舞う。
ああ。先輩が友達と一緒に出てくるのが見える。
頭の中がもう真っ白。
ああああっ。
「先輩! そ、卒業……」
俯いて必死になって、言葉を絞り出した。
「おっ、お祝いか、サンキュ」
「あ、あの、第二ボタンを……」
立ち止まって振り向いてくれる先輩。
――その制服にはもうボタンは一つも残っていなかった。
「ごっ、ごめんなさい」
恥ずかしくて、恥ずかしくて、本当に恥ずかしくて、その場から逃げだした。
「待てよ!」
私の腕が先輩の大きな腕に捕まれる。
「ちょっと一緒に来いよ」
「は、あぃ!」
声まで裏返ってしまった。
恥ずかしい。
恥ずかしい。
恥ずかしい。
もう何が何だかわからない。
先輩は近くの公園のベンチまで私の手を引いて歩いてくれた。
…………
「ちょっとは落ち着いたか?」
そういって心配そうに覗きこんでくれる先輩。
その前髪が、優しく揺れる。
「はっ、はい」
…………
「今まで、ありがとな。――俺、自分の可能性を確かめたいんだ。だから……」
先輩が隣に居る。
いつもなら、もうそれだけで、幸せでいっぱい。
その筈なのに……
……なのに、心が急に冷めていく。
「俺は次の扉を開ける」
それは、どうにもならない別れの言葉だった。
「ありがとう。今まで本当にありがとう」
こらえきれずに、涙があふれた。
「――いろいろあったけどな。これ食って忘れてくれ」
そう言って先輩は可愛い包みを私の両手の中に落として去って行った。
それは私が好きって言ってた、いちご大福。
覚えていてくれたんだ。
今日の日の事を忘れないように食べる。
大好きなあの人を想って食べる。
私も次の扉を開けないと。
いろんな思い出と共に甘酸っぱさを噛み締める。
ちょっとしょっぱい味もした。
でも、これが、これが――いつまでも色褪せない私の初恋。
最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました。
どうでしたか?
青春の甘酸っぱさ、初々しさは伝わりましたでしょうか?
どこかの誰かに、こんな初恋の頃のことを思い出して貰えれば素敵だな、と思って書きました。
ご意見、ご感想等が御座いましたら是非、コメントを下さい。
よろしくお願いします