第14話 再婚約の舞踏会
お互いの両親に報告してからしばらくの時が経ち
王都の午後は柔らかな光に包まれ、カーヴァル公爵邸の大広間はその光を受けて輝いていた。
シャンデリアの下、金色の装飾と大理石の床が、豪華さを一層引き立てる。
今日は、セリオン・カーヴァルとエリーナ・ヴァレンタインの再婚約を社交界に公表する舞踏会が開かれる日だ。
大広間の扉が開くと、エリーナが姿を現した。
エメラルドグリーンのドレスが光を受けて鮮やかに輝き、刺繍やレースが優雅な曲線を描いている。
その美しさに、招待客たちが息を呑む。
「……美しい」
セリオンは静かに呟き、そっとエリーナの手を取った。
「今日も、君が一番輝いている」
エリーナは微笑み、少しだけ頬を染める。
両家の親族がそろい、セリオンは改めて声を張った。
「本日ここに、皆様にご報告申し上げます。エリーナ・ヴァレンタイン嬢と、再び婚約を結ぶ運びとなりました」
場内が一瞬静まり返る。
だがすぐに、歓声と祝福の拍手が広がった。
マリアンヌ公爵夫人は微笑みながらうなずき、カーヴァル公爵も少し照れたように目を細めた。
エリーナの母は涙を浮かべ、父も穏やかな笑みで見守っている。
「セリオン、よくやったわね」
エリーナはささやくように言った。
「君がいてくれたからだ。もう二度と手放さない」
指先を絡め合い、二人の間に静かな確信が流れる。
舞踏会は華やかに進み、貴族たちはお祝いの言葉を次々と述べた。
しかしセリオンは、エリーナの気持ちを第一に考え、常に彼女を気遣いながら歩む。
エリーナもまた、堂々と笑みを浮かべ、周囲の視線を恐れず、彼と肩を並べている。
夕刻、シャンデリアの光が柔らかく揺れる中、二人は大広間の片隅で立ち止まった。
「今日は、本当に……ありがとう」
セリオンの声には、先ほどまでの社交の喧騒を越えた、深い誠意が宿っている。
「ふふ、私の方こそ、信じてくれてありがとう」
エリーナは小さく笑みを返し、手を握り直す。
周囲の祝福の声が遠くに聞こえる中、二人だけの時間がゆっくり流れていく。
舞踏会はまだ続くが、二人の心はもう誰にも揺るがされない確かなものになった。
エメラルドグリーンのドレスは光を受けて美しく輝き、セリオンはそっとエリーナを守るように腕を回す。
その瞬間、再婚約の意味は、ただ形式だけでなく、互いの揺るがぬ想いの証となった。




