第11話:窓際で寄り添う二人
午後の柔らかな日差しが大きな窓から差し込む書斎前。
エリーナ・ヴァレンタインは、深紅に金糸の刺繍が施された華やかなドレスを揺らしながら窓際に立っていた。光が刺繍に反射してキラキラと輝き、銀色の髪も柔らかく光を受けて揺れる。彼女の姿はまるで昼の光に舞う一輪の華のようだった。
「セリオン……」
「ん?」
声に少し震えが混じる。エリーナはそっと肩をセリオンに寄せた。日差しが二人の肩に差し込み、微かな温もりが互いの心に伝わる。
「こうしてそばにいると……安心するわ」
「俺もだ。お前がそばにいてくれるだけで、心が落ち着く」
セリオンの言葉には余計な装飾はなく、真摯で自然な温かさがあった。エリーナは少し頬を赤くし、わずかに息をつく。
「……ねぇ、セリオン」
「ん?」
「あなたは、私のこと……どう思っているの?」
「……好きだ。焦らずでいい、ゆっくりでも、一緒にいたい」
青い瞳が優しく光る。エリーナは微笑み、手をセリオンの手に重ねる。指先が触れ合うだけで、胸の奥に小さな熱が広がる。
「……ふふ、少し恥ずかしいけれど……」
「恥ずかしい必要なんてない。お前の気持ちを知ることができるだけで、俺は嬉しい」
二人は窓際で向かい合い、肩を寄せ、手を握ったまましばらく沈黙する。光と影が揺れる中、外の庭に咲く花々の色が差し込む光とともに二人を包む。
「セリオン……」
「ん?」
「もっと……あなたのそばにいたい」
「……いいよ」
言葉とともに、セリオンはそっとエリーナを軽く抱き寄せた。肩が触れ合い、胸の鼓動が伝わる。初めての接触ではないが、抱き寄せられる距離は二人の心に小さな波紋を広げた。
「……ふふ、こんなに近くても、なんだか安心するわ」
「俺もだ。お前の温もりを感じられるだけで、幸せだ」
窓から差し込む光に包まれ、エリーナは微かに目を閉じて、肩に寄せた頭を少し押し当てる。
「セリオン……」
「ん?」
「ねぇ、あなたは……私のこと、これからも守ってくれる?」
セリオンは静かに息をつき、彼女を抱きしめる力を少しだけ強めた。
「もちろんだ。お前のことは、ずっと大事にする」
しばらく二人は窓際で静かに立つ。手は握ったまま、肩はぴったりと寄せ、互いの呼吸が自然に重なる。会話は途切れがちだが、その沈黙さえ二人にとって心地よい時間となる。
「……セリオン、こうしてそばにいると、時間が止まればいいのにって思っちゃう」
「俺も同じだ。お前といると、外の世界のことなんて忘れられる」
微かな笑みが二人の間に交わされ、日差しの中で静かに流れる時間が、二人だけのものとなる。
「ふふ……でも、私、ちょっとわがままかもしれないわね」
「なんで?」
「こうして抱き寄せられると、離れたくなくなっちゃうから」
「……いいじゃないか、それで。お前がそう思うなら、俺も同じ気持ちだ」
昼の光が差し込む書斎前で、二人はゆっくりと歩きながら、手を握り、肩を寄せ、心の距離を確かめ合う。派手な赤と金のドレスは光に照らされ、揺れるたびに二人の関係の微妙な変化を映し出していた。
「今日は、こうしてそばにいられてよかったわ」
「俺もだ。お前と過ごす時間は、どんな言葉より大切だ」
言葉と軽い抱擁だけで、互いの存在は確実に近づいていた。まだ完全に距離を縮めたわけではないが、二人の未来はゆっくりと形を取り始めている。




