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私の嫌いなこの世界、私の望んだあの世界

「ってことがあったんだ。」

自宅の二階の私の部屋、ゆみちんに昨日の出来事を説明する。…正座で。

「にわかには信じがたい話だね。」

ベッドに座り私を見下ろしながら笑顔ゆみちんが答える。…笑顔なのに怒ってるのがよくわかる。

なぜ、こんな状況になってるかというと、今日の朝、ゆみちんからの電話で起きたのだが、電話に出るのは少し遅れて間に合わなかった。そしてその時に見たメール、電話の着信履歴が

着信11件メール6件

そう、昨日、冒険に行ってる間に、ゆみちんが明日の事でメールを送っていたが、一向に返事が来なかったので、電話も掛けてみても出ないので、心配になって家までわざわざ来てくれてもいないものだから、かなりの心配を掛けてしまっていたのだ。

ちなみにケータイは部屋に忘れていた。

そして、掛けなおしたときの怒ってる時のトーンでしゃべるゆみちん。

しばらくして、ゆみちんが来てから急に抱きついてきて驚いたが、耳元で「お説教」の一言に戦慄し、昨日のことを言い訳を交えつつ説明していて、今に至る。

「しかし、信じられないって言っても、現にこの左手の中指にはリングがあるんだよね。」

左手を差し出しながら答える。すると、

「まさかとは思うが、男と会ってたとかじゃないでしょうね?そんで、そのリングはプレゼントとか。」

と、疑り深い目で言い出すゆみちん。

「私が他人と好んで関わると思う?」

「全く思わない。言ってみただけ。」

割と簡単にいつもの感じに戻ってくれた。これも長い付き合いがあってこそだと思う。しかし、事実だし仕方が無いが、こうもさらりと思わないと言われるのもなんだかな~。

「でも、本当に危ない事はしないでね、心配で押し潰されちゃうよ。」

ゆみちんが苦笑気味にそう言いながら抱きついてくる。来たときみたいな怖い感じではなく、包み込むようなやさしいかんじで。

「ゴメン」

私は、ぎゅっと抱きしめながら、そうとしか答えられなかった。

ゆみちんが何も言わず頭をなでてくる。それが、少し心地良い。

少しして、ゆみちんが再び口を開いた。

「ねぇ、小枝、一昨日に言ってたお詫びの事なんだけどさ。」

「そうだったな、どうしようか?吐くまで和菓子食べ歩きでもするか?」

「嫌だよそんなの。そうじゃなくてさ、小枝の髪、少し切らない?」

「意味が解らない。発想も、言ってることも、意味が解らない。」

突然の意味不明な発言に思わず否定をする。

「だからー、私が小枝の髪を私好みに切りたいの。」

相変わらずのいい笑顔でさらっと言ってくる。

「100歩ゆずって切るのをOKしたとしても、せめて美容院にしようよ。」

「だが断る。」

清清しいまでの即答。だれか助けて。

「だって私が小枝の髪を切ってあげたいんだもん。」

「さっき、私好みのって言ったよね?」

「些細な事を気にしていては大きくなれないよ?」

「否定ぐらいしようよ…。」

「まぁ、私にするお詫びなんだから、おとなしく切られなさい。」

痛いとこを突くもんだ、それを言われると反論ができない。

「……少しだけだよ?」

観念して、切られる事にした。そして、切るために風呂場に向かう。




風呂場で椅子に座り、髪がかからないように、エプロンをつける。

「で、どんな髪型にする気だ?」

「それは切ってからのお楽しみ♪」

そう言いながら、ゆみちんが目隠しをする。視界が無くなる事により、不安が倍増する。

「それじゃ、霧吹きするよー。」

そう言うと、持ってきていた霧吹きで霧状にした水を掛ける。

彼女は準備の良いことに、散髪道具を持ってきていた。初めから切る気だったのだ。

「それでは、切らしていただきまーす。」

「ミスは財布の中身を全て失うと思って切ってくれ。」

「プレッシャーを掛けると凡ミスを起こすと思ってくれたまえ。」

「それは困るな、慎重に頼むよ。」

そんな他愛の無い話をしながら散髪を始める。



大まかな部分は切り終えたのだろう。細かなところの調整にとりかかっていた時だった。

「ねぇ、小枝?」

「どうした、ゆみちん?」

「さっきの、昨日、小枝に起こった事件の事なんだけどさ。」

「あれがどうした?」

「実を言うとね、私、昔に似たような事が起こったことがあるんだよね。」

「えっ?」

突然の彼女の告白、正直耳を疑った。

「小学2年の時に起きた、裏山丸ハゲ事件覚えてる?」

「ああ、一晩の内に、裏山に巨大な十円ハゲが出来た、あの事件か。」

裏山丸ハゲ事件…。私たちが小学2年の時に起きた、小学校の裏山に、一晩で巨大な十円ハゲが出来る不審な事件だ。

十円ハゲが出来た原因は、その場所の木が全て、鋭利な刃物で一刀両断されいてたらしく、不審者の仕業かも知れないという事で、しばらく集団下校になったという事件だ。

しかも、犯人が捕まっておらず、その犯行目的も手口も未だに解っていない奇妙な事件だ。

「実は、あれ、私がやったんだ。」

「は?」

またまた、唐突なカミングアウトに間抜けな声が出る。当の本人は丁寧に毛先の長さを整えている。

「あの日の夜ね、色々あって、お母さんと喧嘩しちゃって家出してさ、なんか、裏山が光ってたから行ってみたら、変な玉が落ちててね、それを手に取ったらなんか声が聞こえてきてさ。よく覚えてないんだけど、力を上げるって言われて…」

「ストップ!え?さすがに冗談でしょ?そんなことがあったなんて聞いたこと無いよ?」

あまりの驚きに思わず言葉を遮る。

「うん、今初めて話すもん。でさ、なんか知らないけどそれがさ、アーティファクトって言うらしいんだ。」

調整が終わったのだろう、櫛でときながら、軽やかに話す。

「言うらしいって誰かに聞いたのか?」

「ううん、その玉自体がそう呼ばれてるって、教えてくれたの。…はい、散髪しゅーりょー♪」

そういって目隠しをとる。

「なんか思ったよりも切らなかったね。いわゆる、姫カットってやつか?」

鏡に映る自分を見て軽く安心する。しかし、視界が開けて少し落ち着かない。

「小枝は、長すぎるくらいのロングが似合うからね♪前をそろえて、後ろが少し、痛んでいたから切ったよ。」

「なんだか、若干軽くなった気はするな。そんなことより、そのアーティファクトのことだけど。」

「そうそう、で、声が止んだと思ったらさ、玉が剃刀になっちゃってさ、その剃刀が切れ味が良すぎて、木がまるで、溶けたバターみたいに、何の抵抗も無く切れちゃってさ。」

片付けをしながらのん気に答える。

「そして、気付けば十円ハゲができていた、と。」

「うん、ちなみに小枝と一緒で、使い方は、頭の中に流れ込んでいたから解っていたよ。…まぁ、あの時はすごく、むしゃくしゃしててねー。」

ブラシで私を掃きながら、若気の至りで、みたいに言う彼女に、少々あきれる。

「うーん、切った髪が落ちきらないや。ねぇ、小枝?どうせならさ、風呂入っちゃわない?」

「かまわないが、湯を張るのに少し時間が掛かるよ?」

「15分ぐらいでしょ?なら全然いいよ。」

そう言って、掃除道具を探しだす。

「風呂掃除は私がやるよ。」

道具を探す彼女をよそに、いつもの場所から掃除道具を取り出し、掃除を始める。

「じゃあ、脱衣所片付けちゃうね。」

「頼んだ。」

そして、掃除をさっさと終らせ、風呂に湯を張った。




「タオル一枚ってなんかエロいよね。」

「いきなり、なにを言ってんだ、中学生。」

確かに、一部の娘はエロいかも知れないが、私たちには、そんな色気など無い。

「いやいや、むしろ小枝のように、キュッ、キュッ、キュッ、なスレンダーボディの方が、これからの成長を考えるとエロエロですよ。」

「そんな風に見られても、嬉しくは無いな。」

「小枝はむしろ、見るな、寄るな、関るな。だもんねー。」

いい笑顔で言ってくれるものだ。事実ではあるが。

「ほら、小枝、椅子に座って、後ろ向いて。髪洗ってあげる。」

言われて、椅子に座り、背中を向ける。

シャンプーを洗髪ブラシに付け、やさしく、丁寧に頭を洗ってくれる。心地よくて少し、ウトウトとしてくる。

「…ねぇ、小枝。」

「どうした、ゆみちん?」

「小枝はまだ、この世界が嫌い?」

「愚問だな。私がこの世界を好きになることがあると思うか?」

軽くあきれた感じに言う。それと言うのも、彼女には、この世界が嫌いだ、無くなれば良い。と常々言っているからだ。

「そっか…。」

残念そうな声が後ろから聞こえてくる。そして、少し間をおいて、言葉を続ける。

「…もし、さ、もしも、別の世界に行けるとしたら小枝は行っちゃうのかな?」

「そりゃ、行けるなら行くさ。動かなければ嫌いな世界に居続けなければいけない。でも、動きだせば、万に一つの可能性でも、自分の望む世界に近づけるかもしれないだから。」

「でも、十中八九は、今以上に、嫌な世界だよ?」

「かまわないさ。億に一つ、いや、兆に一つの可能性でも、可能性があるなら、私はいくよ。」

「…小枝はそう言うと思ったよ。」

そう言って、いきなりシャワーをかけてくる。油断はしてても反射的に目は閉じれた。

「あのね、私のアーティファクト、あ、名前は小雪こゆきって言うんだけどね。私が付けたんだー、かわいい名前でしょ。」

シャワーをかけながら、言われても返事が出来ない。と、思ってると、シャワーが後ろにまわって顔にお湯がこなくなり、しゃべれるようになる。

「確かに可愛いが人名みたいな名前だな。」

「だって自分から喋れるんなら人とおんなじだよ。」

「そんなもんかな?まぁいいや、で?その小雪がどうかしたの?」

「そうそう、実は小雪でね、異世界に行くことが出来るんだ。」

「はぁ?」

また、唐突に、意味の解らない事を言い出すものだから、変な声が出る。

「だから、小雪の能力でね、自分が想像した世界に行けるんだ。」

何その能力、かなりすごいじゃん。

「でさ、小枝が本当に、違う世界に行きたいなら、連れて行ってあげようと思ってさ。」

「それで、いきなり変な質問をしてきたのか。」

「うん、本当を言うと、危険な世界に行ったりするかもしれないから、小枝にはこの世界を好きになって欲しかったんだけど、それはどうも無理っぽいからね。」

話ながら髪も体も洗い、二人とも湯船に入る。

「で、その小雪の能力で行ける世界ってどんな世界なの?」

湯船の対面に、向き合うように入ってるゆみちんに問いかける。

「ドラえもんのどこでもドアみたいな感じで、次元を切る時に頭の中の想像した世界が行ける世界になるんだ。」

「つまり、どんな世界でも行くことができるって事?」

「大体そんな感じ。でも、完全に想像した世界に行ける訳じゃ無いの。」

「どういうこと?」

「例えば、けいおん!の世界に行きたい、と思って行っても、自分の想像どうりのけいおん!の世界に行くわけじゃなく、原作の世界に自分が行く感じなんだ。」

「つまり、別の世界は私たちの世界と平行して、小雪の能力は、その別の世界への道を作り出すってことでいいのかな?」

「その考えでOKだと思う。だから、完全に望みどうりの世界に行ける訳じゃないんだ。」

なんともすごい能力だ。ただ、逆に、使い方を一つ間違えば、かなり危険な能力でもある。

「あー。のぼせてきちゃった。そろそろ上がろっか。」

気付けば、ゆみちんの顔がかなり真っ赤になってる。倒れる前に上がろう。





しばらく涼み、話の続きをする。

「えっと…、それで、その能力、私の為に使ってくれるの?」

少し聞きづらいことだが、大事なことでもある。なにせ、ゆみちんは、その能力をあまり使いたくなかった、と言っているのだから。

「うん、小枝の気持ちは本物みたいだから。でも、いくつか条件があるの。」

「条件?」

やはり、すんなりと承諾は得られないようだ。

「私を一緒に連れて行くこと、極力私の傍にいること、そして、辛いことや、苦しいことを一人で抱え込まないこと。」

「…。」

やはり、ゆみちんは優しい。そのやさしさに思わず抱きつき、泣き出してしまう。

「ゴメン…。ありがとう。」

ゆみちんは、我が子をあやすように私の頭を撫でる。

「いいんだよ。私はいつだって小枝の味方だよ。」

その言葉にまた、涙があふれ出てきた。




ひとしきり泣いた。目は真っ赤になっていた。

「小枝は相変わらず泣き虫だね。」

やさしく笑いかけながら、ゆみちんが言う。

「うるさい。私は泣き虫じゃ無い。」

涙で濡れた目をこすりながら、返事をする。

「やれやれ、子供じゃないんだから…。それで?行くにしてもいつ行く?私はいつでも良いよ。」

「そもそも、どの世界に行くのかも話してないよ。」

「そういえばそうだ。でも、小枝のことだし、もう決まってるんでしょ?」

そう言ってウインクをしてくる。

「まぁ、ね。一応、どの世界に行きたいかは決まってはいる。」

「やっぱりね、ま、どんな世界かは、行ってみてのお楽しみにしとくよ。」

「それと、旅立ちの日取りなんだが、明日の夕方~夜の間にしようと思う。」

それを聞いて、ゆみちんが意外って感じの顔をする。

「小枝のことだから、今すぐ!とか言い出すと思ったけどな。でもなぜに明日?」

「私だって無警戒に未開の地に行くほど馬鹿じゃないさ。その準備を明日、全て済ませる。」

「なるほどね~。そういえばさ、ずっと気になってたんだけど、小枝のアーティファクトってどんななの?」

「また急だね、話したとおりの楽器だよ。」

何を突然言い出すのかと思えば、私のアーティファクトのこととは。

「ね、どうせならさ、お互いのアーティファクト見せあいっこしようよ。」

「…そうだね、互いのアーティファクトを知っておいた方が良いだろうし。」

「それじゃあ、私の小雪ちゃんのお披露目だよー。」

そう言うと、いつも首に掛けている白銀の、卵に羽が生えてきているデザインのネックレスをはずし、それを握り、目を閉じる。

その瞬間、まばゆいばかりの白光に部屋中が包まれる。

ゆっくりと目を開けてみる。すると、ネックレスがあった掌には白銀に輝く、一本の剃刀があった。

「これが私のアーティファクトの小雪だよ。」

「綺麗だが、少し触れただけで、切れてしまいそうな危なさも感じるな。」

「この小雪はね、私が切りたいって、思った物だけ切る事が出来るっていうのが、この子の能力なんだ。でも、だからといって、例えば、相手を切りたいって思っても、鎧の上から相手を直接切れる訳じゃなくて、私が切りたいって思った物以外に対して切れ味が全く無くなるって能力なんだ。」

「しかし、それでもかなり使える能力だね。」

「それで?小枝のはどんなのアーティファクトなの?」

「室内じゃちょっと展開することのできないサイズの物だから、裏山まで行こうか。」

そう言って、裏山まで出かける。




裏山の、人目に全くつかない場所まで来て、さらに、人が来ないか確認する。

「それじゃ、展開するよ。」

私はリングをかざして、目を閉じ、アーティファクトを展開する。

リングから、金色のまばゆい光を放ち、鍵盤が私を囲むように現れる。

「これが私のアーティファクトだ。能力は朝言ったとおり、私の思い浮かべたとおりの音が奏でられ、奏でたときの私の敵意や好意で、助けたいと思った物や人を直したり傷を癒したり、攻撃したいと思った目標を衝撃波による攻撃行為を行う。」

「名前は?」

「はい?」

「だーかーらー。その子の名前は?」

「そんなの付けてないよ。」

「つけてあげなきゃ、かわいそうだよ、つけてあげようよ。」

「別にいらない気はするけどなぁ。」

そう思いながらも、一応、考える。が、何も浮かんでこない。

「ちなみに、ゆみちんは、なんで小雪にしたの?」

あまりにも思い浮かばない物だから、参考に名前の由来を聞いてみる。

「小雪?小雪はね、見つけた時は、白く光る小さな玉でね。それで、特に、色から思いついた名前が雪だったんだけど、小さかったから小雪にしたんだ。」

なつかしそうに、遠くを見ながらゆみちんが答える。

色、か…。コイツの色…眩いばかりの金色。そう、思った時、一枚の絵が思い浮かぶ。そして、一つの名を思い浮かぶ。

「フレイヤ……。」

思いついた名を、思わずつぶやく。

「フレイヤ?」

「うん、フレイヤ。」

「おお~。良い名前だね!でも何で?」

「色で考えていたら、地平線の彼方まで続く麦畑が頭の中をよぎったんだ。そしたら、豊穣の女神である、フレイヤが思いついた。」

「なるほど~。良かったね!あなたの名前は今日からフレイヤだよ!!」

ゆみちんが展開している私のアーティファクト、フレイヤに向かって言う。どうやら、彼女にとってアーティファクトとは物ではなく、一つの生命としてみているようだ。

「それじゃ、一度私の家に帰ろうか。」

ここで、これ以上やることは特に無いのでそう提案する。すると、

「その前に一度、私の家に寄っていこ。」

そう言って、私の前にでる。

「どうせならそのまま、小枝の家に泊まっちゃおう。」

「私は構わないけど、いいのか?この世界で最後の夜になるかも知れないんだぞ?」

「戻ろうと思えばいつでも戻れるんだから平気だよ。それに、明日からの為の準備の方が大事だしね。」

そして、私たちは一度、ゆみちんの家に向かうことにした。




ゆみちんの家で荷物をまとめる(とは言ってももち運びが楽な程度でだが。)どうやら、親はまだ働いていて、いないらしい。最後に置手紙を書いてリビングのテーブルに置く。内容は、

『小枝の家に泊まりに行きます。大丈夫だから、心配しないでね。』

…まるで、今生の別れを連想してしまう言葉だ。だが、それを書かせたのは私なんだよな…。そう考えていると、突然、

「小枝は悪くないよ。私が考えて、私が決めた事なんだから。」

いつものような笑顔で私に語りかける。

「だからさ、私のことでそんな悲しそうな顔をしないで。」

どうやら、心境がそのまま顔に出ていたらしく、そう、諭される。

そして、準備と戸締りの確認をし、ゆみちんの家を後にする。家を出るとき、ゆみちんが「父さん、私、しばらく…ううん、もしかしたら、もう戻れないかもしれない。だから、天国から母さんを守ってね。」と、言っていた。




私の家ですることも、荷物をまとめてしまえばほとんど無い。

「で?今すぐじゃ無く、なんで明日なの?」

部屋でくつろいでいると、ゆみちんが聞いてきた。

「そういえば言ってなかったね。理由はコイツを明日調達するためさ。」

そういって、財布から、一枚の金貨、500円玉を取り出す。

「コイツを使って、向こうの世界での資金の足しにする。」

「でも、異世界のお金じゃ使えないんじゃない?」

まぁ、当然、通貨も何もかもが違う世界だ、そう思うのが普通だろう。

「まず使えないだろうな、…そのままじゃ。」

「?」

ゆみちんが不思議そうな顔をする。

「自分達の全く知らないコインだ。珍しい物欲しさに買うやつは少なくは無いだろう。」

「なるほど、確かに、それは言えてるね。だから、銀行が閉まってる今日はダメなんだね。」

「そういうこと。金をおろす銀行も、もう何度も利用して、事情を知っている人がいる銀行があるから、そこでなら、平日でも簡単におろすことが出来る。」

「なるほど、全て計画どうり。って事か。」

「そういうこと。それじゃ、そろそろ寝ようか。」

「うん」

二人で寝ると、いつもより、少し狭いベットだが、ゆみちんが泊まりに来た時は、いつも一緒に寝ている。

隣にゆみちんがいると、不思議と落ち着くからだ。ゆみちんも同じで、なんか落ち着くと言っていた。人とは不思議なものだ。




次の日…

「それでは、こちら、500円玉で、100枚。100円玉で、100枚。10円玉で、100枚になります。…無駄遣いしちゃダメよ。」

「うむ、ありがとう。」

そして、銀行を後にする。拍子抜けするほどうまくいって、少し、後が怖い。

最後の用事が終り、急いで家に帰る。


「ただいまー。」

家に待たせていたゆみちんに告げる。

「おかえりー。そろそろ帰ってくると思って、昼ごはん作っちゃったよ。」

テーブルの上にはチャーハンと、サラダがのっていた。まだできたてであることが、立ち上る湯気からわかる。

「それじゃ、この世界での、最後の晩餐ならぬ、最後の昼餐としますか。」

「昼餐って言うと、なんだか、チュンサンみたいだね。」

「ヨ~モニ~。とか言えば良いかな?そんなことより、冷めないうちに食べよう。いただきます。」

「どうぞ召し上がれ。それじゃ、私もいただきま~す。」

早々に食事を済ませ、そして、少しの休憩の後、旅立ちの時間になる。



「それじゃ、小枝、私の小雪を握っている方の手を握って。」

言われた通りゆみちんの拳を握る。

「そしたら、その行きたい世界を強くイメージして。」

目を閉じ、その世界を強くイメージする。

「いい?1、2、3で切り開くからね?切り開くまでイメージを崩しちゃダメだよ?」

「解った。」

そう言われ、より、イメージを強くする。

「それじゃ、いくよ!1!2!3!」

カウントを終えた瞬間、ゆみちんが小雪を振り切る。

「やった!成功だよ!」

ゆみちんが喜びの声を上げる。その声を聞き、恐る恐る、目を開ける。

すると、そこには、まるで、ファスナーを開けた状態のような感じで空間に穴が開いていた。穴の中がどうなっているのかは、よく分からない。

「小枝!これはそんなに長くは開いて無いんだから急ぐよ!」

思わずみとれていた私に、穴の向こうから、頭だけ出したゆみちんが急かす。

「あ、あぁ、すまない、今行く!」

そういって私は、穴に飛び込んだ。私の望んだ世界に繋がっている穴へ。

わたせか第3話お読み頂きありがとうございます。

今回は前に比べれば、まだ早いペースで投稿できました。ネタが思い浮かぶと、とても良い調子で書けるんだけどどうも…ねぇ?

さて次回なんですけど、多分かなり遅くなると思います。二次創作になるのですが、その作品は、私自身とても好きな作品なので、世界観を極力壊したく無いので今一度、台詞、設定、モーション、全てを再確認してから、執筆したいと思ってるからです。どうか、ご容赦下さい。

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