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未知との出会い、全ての始まり  

Am8:00目覚ましの音で目が覚める。体を起こし目覚ましを止め、ふと、窓の方に目をやる。

カーテンの合い間から光が射し込む、寝起きの目には少しまぶしい。

「朝か…。そういえば、見事なまでに晴れたみたいだな。」

ベットから降り、うーんと、軽く背伸びをし、カーテンを全開にする。強い日差しに再び目がくらむ。

「ふむ、絶好の冒険日和だな。」

窓から広がる壮大な日本晴れを見ながら思わずそう、言葉が漏れる。

もう一度、背伸びをし、着替えを済ませて階段を下りる。今日は白い長袖のYシャツに黒のベスト、白と黒のチェッカー模様のロングスカートにしてみる。暑そうだが日焼けや虫刺されの事を考えれば悪く無い選択だと思う。色は黒を好んで集めてしまうので仕方なし。

階段を下りたら何がともあれ顔を洗い、朝食を済ませる。

「必要なものは虫除けスプレー、日焼け止め、タオル、軍手、ペンライト、予備の電池、レジャーシート、水筒、弁当、袋、腕時計…。こんなもんか。」

持って行くものを指折り確認する。

それぞれを確認したらリュックに詰めていく。

流れ星がどんなにそっちに向かおうと、衝撃も何も無かったんだから落ちたりしていないことは自分だってよく分かってる。

それでも、やはり子供心に何かあるのでは?と、期待してしまうものだ。

「少しは大人にならないとな…。」

準備しながら思わず口に出てしまう。当然といえば当然だ。中学にもなって山に宝(?)探しなど誰もしないであろう。

それを今から意気揚々としようというのだ、精神が幼すぎる。

しかし、その反面、このワクワクは忘れてはいけないものな気もしている。

「人間って本当に面倒な生き物だな。」

自分の気持ちにそう答えながら、私は麦わら帽子をかぶりマウンテンバイクに跨る。そして、星の向かった山に向けペダルを漕ぐ。少々の不安とワクワクを胸に抱きながら。





家を出て約30分目的の山に着いた。目の前には壮大な緑と登山道と思われる道がある。

『小さな山でも麓に来れば大きく見えるもんだな。』

初て近くで見る、その、自分の家から見た時にはとても小さく感じた山を見上げ、そんな感想が出る。

自転車を道の端へ止め、登山道を登りだす。

昨日の雨のせいだろうか、少し蒸し暑い気がする。

しかし、道はそれほどぬかるんでおらず、歩きやすかった。

そろそろ中腹ほどまで来ただろうかという所で、いままで続いていた坂道が一度終り、開けた場所に出た。

私はここで一度、休憩をとる事にした。疲れていたのもあるが何よりも汗で落ちてきていた日焼け止めを塗り直したかった。

その辺に転がっていた大きな石にリュックを置き、休息をとる。

ふと、時計を見てみると時刻は十一時半をまわっていた。

ちょどいいと思い、昼食をとる事にする。

近くの木陰にレジャーシートを広げ、昼食をとりながら辺りを見渡す。

道が登山道とわき道が二つある。

わき道の一つは全体的に水色が目立つ看板が立っているが、ここからではなんと書いてあるか分からない。

もう一つのわき道は特に看板等があるわけでは無いが、長い間使われていなかったんだろう、半ば獣道の様になっている。

さ~て、どうしたものかね。看板はおそらく案内か注意の呼びかけだろうが、警告を示す感じの色合いではない。となれば十中八九案内の看板だろう。

獣道の方は、危険な感じこそはするが大きな危険があるなら通行止めにするなり注意や警告を促す看板の一つや二つあるはずだ。

ほおばっていたおにぎりを飲み込み、茶をすすり昼食を終える。

片づけを済まし、看板に書いてある文字を確認する。

『この先にある山水は綺麗に浄水されています。』

まぁ、そんなもんだとは思った。が、やはりどこか期待していたのだろう。ため息が漏れる。

さて、となると普通の道ではつまらない。獣道の方に行こう。

『スカート破けたりしなければいいけどな。』

そんなことを思いながら私は、獣道を進みだした。




ふと、時計を見る。

休息を終えてから30分も経っていた。

獣道は300M程度進んだら普通の道のようになりだし、今では普通の山道の様相だ。

しかし完全に普通とは言えない所がある、それは道に車輪の跡があるのだ。

入り口が軽い獣道になっているのに車が入れるとは思えないし、何よりもこんなところに車を持ってくる意味が分からない。

「なんだか、わくわくするじゃないか。」

気持ちが高ぶり、思わずつぶやく。

そして、車輪の跡に沿って進み続けとうとう、車輪の跡の終りにたどり着いた。

いや、この場合、終りと呼ぶのは適切では無いのだろう。

なぜなら、車輪の跡はまだ続いているからだ。暗闇の先に

「こんなところに、こんなのがあるとは。」

目の前には入れないようにガードフェンスとバリケードが並び、有刺鉄線で閉鎖された廃坑があった。

普段見たくても見れないものの発見に驚愕にも似た、声が漏れる。

危ない雰囲気、危険を示す看板、通れない様にするにしても厳重なガードと有刺鉄線。

どう見ても近寄りがたい、しかし反面、冒険心を大きく煽る。

『行こう。どうせ無くなっても困ることの無い命だ。ならば、せめて自分の思うままに動こう。』

そう思い、入り口に近づく。しかし、ガードフェンスは私でも動かす事ができるが、有刺鉄線がどうしようもない。

残念ながら今、鉄線を切れるような物は持っていない。

諦めて、後日また来ようか…。そう思った時だった、横から何かが切れる様な音がした。

音のした方に目をやると、鉄線が切れて子供ぐらいなら通れそうな隙間ができている。

なに事だろうか?と、思い近づく。切れ口を見たら錆びきっている。

そうか、錆びて限界がきていてそれがとうとう、千切れたのか。それならば、この幸運を利用しない手は無い。

千切れてできた隙間を通り、廃坑の中に入る。自分の身体が小さいから隙間を通れたが、自分の小ささを改めて思い知らされて、少々複雑な気持ちだ。

リュックの中から持ってきていた軍手を着け、ペンライトを点ける。

遭難したときの為に持ってきたのに、こんなところで使うとは。いつ、なにが役に立つか分からないものだ。

ペンライトの小さな光を頼りに、坑道を歩きだす。




坑道内は特に分かれ道等は無く、順調に歩を進める。

昨日の雨のせいもあるのだろう、坑道内はやや寒く、それでいてジメジメとしている。

進んでいるとおそらく回収しそこねたのだろう、つるはしを見つけて拾った。

ペンライトを前に向け、つるはしで足元を探りながら進み続ける。しかし、歩いているうちに違和感を感じる。

それからさらに進んだところで違和感の正体に気付く。

そう、道がひたすら真っ直ぐなのだ。曲がり道も分かれ道も無く、ただひたすらに真っ直ぐな道。

まるで何かに導かれ、掘り進めたような。そんな印象すら受ける程の直線。

不気味にも思いながら、暗闇をさらに進み続ける。

そして、その冒険もとうとう終りを迎えることになった。

「行き止まり、か?」

私の目の前には壁しかなかった。

結局、何も無し…か。解っていてもやはり、期待をしてしまっていただけにショックもあった。

しょうがない、もう帰ろう。そう、思いつるはしを壁に向かって放り投げ、踵を返したその時だった。

カァァァーーーーン!

音が坑道内に響き渡るが、その音に強い違和感を感じ、再び壁のほうに向き直る。

つるはしを拾い、また、壁を叩いてみる。

カァーーーン

やはりそうだ、音が今までと違う、この壁の先に空洞があるような音がする。

崩れて埋まってしまったのだろうか?それとも意図的に埋めたのだろうか?しかし、何のために?

色んな事を考えたが、先があるなら進みたい。その思いが強く、私は壁を掘ることにした。


壁を掘り続けると、ようやく向こうに貫通したようで、光が射し込んできた。

更に掘り続け、人一人通れるくらいの穴が開き、向こうに出ることができた。

壁の向こうは大体、二十m程度の高さの壁に包まれた二百m程の広さの小部屋になっていた。

そして、私はその光景に思わず絶句した。

目がくらむほどの金色の光が私を照らし出したのだ。

そして、その光の元には巨大なパイプオルガンの様なものがたたずんでいる。

奥のほうの真ん中にはパイプオルガンの様な巨大なパイプが空へ伸び、左右には、どう見ても浮いているようにしか見えない、弧を描いている三列の鍵盤が囲むように並んでいる。

そして、私から大体十m程の場所、この機械の中心にまるでコントローラーのような感じのやはり三列の鍵盤があるキーボードのようなものが浮いている。

全体を見通せばこれらが円を描いているのがわかる。

しかし、私の頭は混乱していた。当然である、廃坑を進んだ先にまるで財宝のようなものがあり、さらに物理的におかしい点として浮いているのだ。



私は少し落ち着き、辺りを見渡しさらに不審な点に気付く。

なんと、天井が開いており、空が見える。

なぜ、こんなにも強烈な光を放っているにもかかわらず外に光が漏れない?

なぜ、こんなにも巨大な穴が開いてるのに誰も気付かない?

なぜ、こんなところにある廃坑にこんなものがある?

私の頭はたくさんの疑問にまた混乱し始めた。



再び、落ち着きを取り戻す。

そして、そのよく見知った物に似た未知の物に近づく。

そして、その未知の物の描く円の中心に立つ。

360°どこを見渡しても金色の鍵盤に包まれた場所

なぜだろう、嫌な感じは全くしない。むしろ、どこか心地が良い気さえする。

そんなことを思いながら目を閉じ、深呼吸をする。

すると、どこからかは解らないが人の声が聞こえてきた。

『ワタシヲ…弾イテ…アナタナラ…キット……』

突然の声に驚き、辺りを見渡す。しかし、誰も見当たらない、誰もいない。

『なんだ、今の声は?幻聴?しかし幻聴にしてはやけにハッキリと聞き取れたが…。』

そして、その言葉をもう一度思い出す。

『私を弾いて?まさかこの物体が私に語りかけてきたと言うのか?そんな馬鹿な』

だが、その物体その物が非常識の塊である。ならば、そんなことさえもありえるのか?

そして私は、その物体のキーボードの様になっている場所に立つ。

すると、また声が聞こえてくる。

『サァ、ワタシヲ弾イテ…アナタノ…ココロノオクノ…オモイヲ…ヒキダスヨウニ…』

!? やはりこの物体が語りかけていたみたいだ。しかし、私の心の奥の思いを引き出すように?どうゆう事だ?

私の心の奥の思いを弾けという事なのだろうか?

ならば、私の心の奥の思いとはなんだろう?

考えては見たが本当は考えるまでも無く、答えは出ていた。

まるで諦めのような笑みがでる。

帽子を脱ぎ、目を閉じ、大きく息を吸い込み、ゆっくりと息を吐く。

目を見開き、私の思いをこの物体に叩きつけるように演奏を始める。

私の心の奥の思い、それは、疑うことも無く『全ての破壊、全ての消失』そして『自身の破壊、自身の消失』であった。

ピアノは多少弾ける程度の私がまともにピアノなんて弾けるはずが無い。

弾けるはずなど無いのに、まるで吸い込まれるように指が動き、鍵盤を弾く。

そして、頭の中に流れる旋律を寸分の違いも無く奏でる。そう、ピアノやオルガンやキーボードの音だけではなく、頭の中を駆け巡る様々な音を奏でているのだ。

『壊れろ、全て、消えろ、世界も、私も』

そう思いながら演奏を続けていると、近くに転がっていた石が突然弾け飛んだ。

それでも、そのことを気にも留めず演奏を続ける。

すると、だんだんと周りの様子がおかしくなってきた。

辺りにある石が悉く弾け飛び、壁が何かがぶつかった様に大きな音を立てて私と同じくらいの大きさのへこみを作り出した。

それでもなお、気が狂ったのかの様に演奏を続ける。

もしかしたら、本当に全てを壊してくれるとどこか期待してたのかもしれない。



それからどのくらいの間演奏していたのだろう。小部屋の穴から覗ける空はすでに暗くなり、星が出ていた。

そして、私と、この物体があるこの部屋は、壁にいくつものへこみや亀裂が入り今にも崩れそうになっていた。

だんだん、頭の中に浮かぶ旋律が終りに近づいてるのが分かる。

それからしばらくして、奏でていた旋律が終りを迎え、最後の音を出すために鍵盤を強く弾く。

すると、部屋が耐え切れなくなったようで、大きな音を立て亀裂が深くなっていく。

私は、崩れていく部屋も気にせずそこにただ、立ち尽くし目を閉じて空を仰いでいた。



崩壊の音が止み、目を開けてみる。

そこにはもう小部屋など無く、クレーターと化した場所になっていた。

不思議なことにこの物体の周りには瓦礫は雪崩れてきていない。むしろ、階段状になって出やすくなっている部分がある。

『ミツケタ、ワタシノ、ミトメルコ、オナジオモイノ、コドクノコ。』

頭の中に声が響き渡る。そのまま、声は続けて語る。

『アナタニ、ワタシノ、チカラヲ、カシマショウ、サァ、ヒダリテヲ、ソラニムケテ。』

声の指示に従い左手を空に向けてかざす。その瞬間、目も開けていられないほど強い光が起こり、思わず目を閉じる。

少しして目を開けた時には、あの巨大な物体が無くなり、私の左手の中指には金色のとても綺麗なリングがあった。

『チカラヲ、ツカイタイトキワ、イツデモ、ツカイナサイ、ツカイカタワ、アナタノ、アタマニ、ナガレタ、トオリ。』

このリングの使い方が頭の中を駆け巡る。

どうやらこのリングは、さっきの物体のようで私が願えばまたあの姿を現すようだ。

さらに、展開したあと奏でると、私の思い浮かべたとおりの音が奏でられるらしい。

そして、奏でたときの私の敵意や好意で、助けたいと思った物や人を直したり傷を癒したり、攻撃したいと思った目標を衝撃波による攻撃行為を行うみたいだ。

使い方も解り、早速展開してみる。

すると、強烈な光がリングから放たれ、次の瞬間、私の体格に合わせてかなり小さくなった物体が展開された。

なるほど、と思い展開を解除して元のリングに戻し、階段状になった瓦礫をのぼりながら帰り道を探す。

途中瓦礫の中に看板を見つける。しかし、

「warning!と、artifactぐらいしか読めない…。」

文字がかすれているのと、看板が半分以上埋まっているのと、私が英語を読めない、とゆう原因が重なって書いてあることは全く解らなかった。

しかし、アーティファクトとはまた普通に生活するうえでは全く聞かない単語だな。もしや、この物体の事なのだろうか?

この物体と呼ぶのも不便だし、アーティファクトと呼ぶことにしようと思う。それでもまだ不便な感じはするが。

階段状の瓦礫を上り終え、壁沿いに入り口の方にしばらく迂回していると、坑道の入り口にたどり着いた。

入り口から来た道をとぼとぼと歩き、自転車の場所までたどり着く。

受け入れたとはいえ、あまりにも非現実的な事が起こり、まるで狐に化かされた気分だ。

しかし、左手のリングが現実を突きつける。


家に帰り着いた頃には時間は十一時を過ぎており、風呂から上がったらすぐに布団に潜り込み、溶けるように眠ってしまった。


わたせかをお読みいただき誠にありがとうございます。

今でこんなペースで果たしてこの先大丈夫だろうかと心配な中第二話です。

本当はもう少し坑道までの道でイベントを起こしたかったが発想力の足りない自分では少し難易度が高く断念。非常に無念です。

次回で序章が終りを迎え、旅立ちが始まります。

前回の後書きでも書きましたが旅立ちが始まりますと二次創作になりますのでそういうのがダメな方はお気をつけください。

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