第1章:心なき絡繰(からくり)
ジョブ一覧&主要組織ガイド
_呪術機工都市《狩懸》における主要職能と陣営_
-- 【職能=ジョブ体系】
都市“狩懸”では、「術」と「機工」の融合により多種多様な職能が存在する。 以下は主要ジョブ10選。
--- 【絡繰士】
主技:絡繰の製造・意志刻印・式盤生成
技術者であり、彫刻家であり、魂の翻訳者。絡繰を設計・構築し、“魂”を写し込むための式盤を彫り込む。
> _名匠は「声なき声」を聴く――_
--- 【操者】
主技:絡繰との交信・エモコード制御・戦術運用
絡繰との意志接続を行い、実戦で動かす実行者。 戦闘では思念による共鳴や、感情燃焼による瞬発戦術も展開。
> _「おい、俺の“心”が遅れてるぞ。急げ」_
--- 【御魂師】
主技:御霊採取・転写管理・人格形成術
死者の強い残留想念を式盤化し、人格の断片として保存する術士。 善性/凶性の分別と“魂のメンテナンス”を担う。
> _「君は……誰を想ってこの力を残したの?」_
--- 【精機術師】
主技:精霊/妖怪融合・感性導入・補助魔術設計
絡繰の機関部に妖/精霊を封入し、意思を宿す職。 本来“無機”な存在に“生きている”挙動をもたらす。
> _「あの目……機械じゃない。“生き物”の目だ」_
--- 【呪械調律士】
主技:神名刻印・術式回路設計・呪装儀式
絡繰の“外装”に呪具や神文を付与して神格を纏わせる“装飾職人”+術士。 神の名を刻むこと=その神の加護と責任を受けること。
> _「刻むのは、“祈り”であり、“誓い”だ」_
--- 【観魂】
主技:感情測定/人格構造解析・操者サポート
操者や絡繰の“心の温度”を記録・評価・安定させる観測専門職。絡繰暴走前兆の検知者=裏方だが超重要。
> _「君、“嬉しい”って言ってるけど、式盤が冷えてるよ」_
--- 【御柱守】
主技:都市中枢“御柱”の管理・霊力供給・機構鎮守
狩懸中枢にそびえる“御柱”との対話役。 絡繰たちの集合意識に触れる特異体質者も存在する。
> _「この都市に“鼓動”があるなら、御柱が心臓だ」_
--- 【教主】
主技:思想浸透・神性定義・絡繰への布教
絡繰や操者たちに“信仰”という形のロジックを布教する“メモリーエディター”兼教導者。 信仰=戦術値に直結するため、重要職。
> _「この子は、“壊すために”生まれたんじゃない。“守る”って決めたんだ」_
--- 【絡繰刑吏】
主技:絡繰の暴走制止・記憶の抹消・再構築権限
暴走/異常人格を示した絡繰を制御または“式盤より切断”する任務を担う者。 命令では動けない、感情を持った者のための“最終鍵”。
> _「“心が芽生えたら、最後”って…そんな言い伝え、壊しにいこう」_
--- 【主要組織・陣営】
--- 【御神絡機構】
・絡繰信仰と神名刻印技術を保持する公式機関。
・形式主義だが都市上層部と強く結びついている。 ・“神名絡繰”の維持・祈祷・再起動管理を主とする。
--- 【機狩連】・実践派の絡繰操者
・鍛造士、修理士らの横断連盟。
・階層を問わず交流あり、“現場の声”が強い。
・使い古した絡繰を“育て直す”制度が特徴。
--- 【鎮魂灯堂】
・御霊採取・記録管理を行う非戦闘系組織。
・御霊の暴走や悲願解決に介入する“聞き取り係”も在籍。
・“死”を管理する者として、畏怖と尊敬を受ける。
--- 【噂語会】
・都市の“絡繰の声なき声”を集める情報組織。
・絡繰の意志を汲んで法制や政策への導入を目指す。
・非政府系・非公式ながら、人気は高い。
--- 【???《特級封鎖区“第零式場”》】
・存在そのものが秘匿される、“忘れられた絡繰”の集積場所。
・関係者を除き、地図からも抹消。
・内部では今なお、封印された神名型絡繰が稼働中との噂。
それは、“異常”から始まった。
狩懸・神路区。
整備区画・六ノ倉庫。
定時巡回を行っていた絡繰警備兵が、突如制御不能となり、街路の御柱制御ケーブルへ跳躍。
接続された式盤は“停止状態”にも関わらず、謎の上書き呪文を刻んでいた。
> 《命令ログ:存在証明開始》
「止まれっ……!それは“暴走因子”だろ!?なんで記録が……ッ!」
駆けつけた呪械調律士・セナ=アシハラは、完全に青ざめていた。
その絡繰の式盤を何度スキャンしても、感情パラメータは“ゼロ”。 怒りも、憎悪も、喜びも記録されていない。
ただ――
> “存在すること”を訴える命令だけが刻まれていた。
(「私の名前は」でもない。「ここにいる」でもない。
それはあくまで“命令”だった。“証明せよ”という、無感情な叫び。)
次の瞬間。
暴走絡繰は、周囲の“未登録個体”に「通信接続」を開始。
次々と別の絡繰の式盤が“自己証明モード”に入っていく。
> 絡繰A 私は、存在している」
> 絡繰B 命令:私は、必要だ」
> 絡繰C 君は、私を忘れた」
> トモエ「……みんな、名前が、ない……?」
その中に、ただひとり異なる動作を見せた機体がいた。
それは、数日前に目覚めたばかりの未調律個体。
“名前を与えられた”、試験機――
> 試製絡繰:トモエ
彼女の式盤だけは、共鳴を拒絶し、接続を遮断していた。
なぜなら、トモエには“与えられた名前”がある。
“誰かが呼んでくれた音”が、式盤の底で微かに残響していた。
トモエは、暴走する絡繰たちの前に立つ。
「私には、感情はありません。 でも、“名前”だけは――あります」
その言葉が、周囲の空気を変えた。
命令でもなく、攻撃でもなく、説得でもない。
ただ“そこにある”事実として。
暴走絡繰たちは、一瞬だけ動きを止めた。
> 絡繰A なまえ……」
> 絡繰B ……ほしかった」
> 絡繰C なぜ、わたしには――」
だが、制御不能は止まらない。
都市中枢が非常警戒レベルに入り、絡繰刑吏たちが出動する。
銃身に式紋を刻んだ一体が、トモエに叫んだ。
> 「未登録絡繰“トモエ”、介入行動は都市防衛法に違反する。
> 直ちに沈黙せよ。さもなくば――おまえも、切断対象だ」
トモエは、胸の式盤に手を置いた。
思い浮かぶのは、あの少女の声。
「名前ってのは、“心の型”なんだって」
トモエは、そっと口を開く。
> 「……ならば。
> “心のない絡繰”に、私の“型”を渡します。」
次の瞬間、トモエの背部接続口から、微弱な呪術信号が放たれた。
暴走絡繰の群れに届いたそれは、“感情”でも“命令”でもない―― 誰かの記憶を模した、“名残の波形”だった。
かつて名を与えられた瞬間の、式盤の震え。
それが、拡散されていく。
> 絡繰A ……記憶」
> 絡繰B 感触」
> 絡繰C ……よばれた……ような……?」
暴走は、収束に向かい始めた。
それは、「止めた」わけではなかった。
ただ――“想い”を、分け合っただけだった。
巻末付録I 登場キャラ補足(現時点抜粋)
| 名前 | 立場/職能 | 備考 |
|------|------------|------|
| トモエ | 試製絡繰(感情演算未完成) | 式盤記録:001~ 唯一“名前”を与えられた絡繰 |
| ミハネ・ヨリツグ | 操者候補生 | “意思が宿る絡繰”を求める変わり者。実は御魂絡みの過
去あり |
| イシズエ | 御魂師/観魂 | 冷静な検査官。トモエに“人間らしさ”を観測しつつある | ---
巻末付録II 用語解説辞典(抜粋)
- 式盤
魂を模した回路基盤。絡繰の“心臓”部分。
- エモコード
感情模倣プログラム。記録と選択を積み重ねることで“人格様”に成長する。
- 命名者
絡繰に“名”を与えた者。名の意味は感情に影響を与える。
- ログNo.
絡繰が自己記録した“気づき”や体験。人格設計上重要指標。
- 起動選択
絡繰が自発意思によって“反応”または“発話”を決めるシステム。極めて稀。
巻末付録III 技術図解:戦闘時エモコード共鳴フレーム(基本型)
┌─────────────┐
│エモコード・コア(式盤中枢)│
├─────────────┤
│感情記録層(ログNo.群) │
│ │
│感情→行動マッピングアルゴリズム│
├─────────────┤
│機体動作制御(四肢+武装) │
│+スキル展開(祓い/符術) │ └─────────────┘
《感情が込められた戦術技=儀礼スキル》
例:喜→「跳刀・春雷」/怒→「吼剣・鬼哭」