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バイタルサイン

作者: 秋暁秋季

注意事項1

起承転結はありません。

短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。


注意事項2

意地とプライドだけに齧り着いた朝。

朝目が覚めて、体の覚醒を実感した。奥底から泉のように湧き出る気力は昨日とは打って変わったものだった。作戦決行は今だと告げている。だから、深い事は置いといて、家を飛び出した。

バスに揺られている間、ずっと目を閉ざしていた。今、此処で下手に気力を使う訳には行かない。何時もスマホを弄り回す私にとって、かなり稀有な判断だった。

幾重にもアナウンスが流れ、何時も過ぎ去るバス停が耳を通じて視界を明確にしていく。そして終点に着いた時、バスから降りて段差に足を伸ばす。けれども……現実というのは残酷である。

視界が白く霞む。歩く毎に目眩を覚える。杖がないと真っ直ぐに歩けない。意識をどう制御して良いのか分からない。この時にふと頭をよぎったのだ。『もう無理かも知れない』と。

絶好調と、絶好調の波が幾度となく繰り返す。三角関数のグラフがこれまでにない速度で周期を変化させて行く。それに反比例して、バイタルサインの波が崩れた模様を描く。リタイアするのは、もう、時間の問題だった。


早朝、家を飛び出して、一時間後には戻ってきた。顔色は朝よりも僅かに悪いと言ったところ。寧ろ悪いのは足取りの方だった。ふらふらとずり足で近付くと、そのまま倒れ込む。

「倒れなかったんだ」

「外だと、それなりに気張れるからね……。でも……家だともう駄目なんだ」

そう言って、暫くそのまま。浅い呼吸音だけを響かせていた。


ご飯を食べると気持ち悪くなる。薬を飲むと立っていられなくなる。どれも、今までにない症状だった。それでも食べなければ飢える。飲まなければ治らない。その二択の中で、私はよりマシな選択を選ぶしかない。

「今のバイタルサインは正常かな? ……昨日の食事後と比べて……マシになっているかな」

「さぁね、医療従事者でもないし、機械もない。確かめるのは難しいだろうね」

現実的な意見を返された。ま、それもそうだろう。

「駅の中の私は、全てが狂っていたんだ。まるで昨日の食後と同じくらい」

体が熱くて、怠くて、立って居られなくて、今まで副作用なんかなかったのに、それが一度に来た。悔しくて仕方がない。正常値を出せない自分が腹立たしい。

「でも、こうして無事に帰ってきたんだから、もう良いじゃないか」

ノイズキャンセリングイヤホンなるものを購入したいと考えている今日この頃です。

初めてヘッドホンを付けた時のあの感動は忘れません。

『音が出てる!!』


人間ピンチになった時に流れるものは走馬灯ではなく、バイタルサインのグラフなのだと思い知りました。


明日も頑張って生きます。

もうすぐお盆ですね。墓参りに行かないと。

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