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超短編小説『千夜千字物語』

『千夜千字物語』その17~恋愛下手

作者: 天海樹

「はー」

ユウコがため息をつくのには訳があった。

職場の男性からの誘いを断り続けていたら、

いつの間にか

彼氏がいることになっていたからだった。

「断りやすくなったからいいじゃん」

そう言って親友のタカコは笑った。

ユウコもそうは思っていた。

でも見栄を張っているようで嫌だった。


昔からコミュ力もあってモテるのだが、

なにせ恋愛は奥手だった。

警戒しすぎて相手のプライベートには立ち入らないし

絶対に立ち入らもしせなかった。

だからタカコにも

「そんなんじゃ彼氏なんてできないよ」

とずっと言われ続けてきていた。


そんなユウコにもようやく気になる相手ができた。

ミカミ部長である。

信頼を寄せてはいたが、

最近よく面倒を見てもらうようになってから

気になり始めていたのだった。


ある日、部長と外回りをしたあと、

「飯でもどうだ?」

と初めて誘いを受けた。

男性とは3人以上でないと行かないユウコだったが、

信頼ある上司だし、

なんといっても既婚者だからと軽い気持ちでOKした。


会話は仕事のことばかりだったが、

それが一周したところで

「彼氏とは上手くいってるか?」

といきなりプライベートモードに発展した。

普段のユウコならそうならないよう

再三の注意を払っているのだが、

酔いもあって不意を突かれてしまった。

それでもいつもなら軽く受け流すところが、

ついつい正直に話してしまった。

部長は笑いながらも同情してくれた。


その日はそれで終わったのだが、

“二人だけの秘密を持った”ことが距離をぐっと縮めた、

少なくともユウコはそう思った。


それから外回りの後に何度となく食事をした。

部長のことを知りたい気持ちは高まるばかりだが、

それ以上前に進めないのがユウコだった。

「そりゃ恋だよ、恋。

 好きでもない人のこと知りたいなんて思わないもん」

タカコの言葉に驚きを隠せなかった。

なぜなら自分が既婚者を

好きになるはずはないと思っていたからだった。

「先のない恋は勧めないよ。でも私ならいくね。

 だって本気で好きになった人って人生で何人会える?」

タカコの言葉が胸に刺さった。


食事をする度にタカコの

「相手のことを知りたいなら、まずは自分から心を開かないと」

の言葉を思い出してはゆっくり前へと進んだ。

既婚者と恋愛下手。

なかなか進展しないのは覚悟の上だが、

もどかしさに心が萎えそうだった。

そんな状態に口火を切ったのが部長だった。

「好きだ!」

ユウコは好きな人と結ばれた幸せを、

いまじっくり噛みしめていた。

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