表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/27

3-2

「…いない…」

結局、浜辺まで来てしまったサナは、その場にエイヴァリはおろか、人が一人もいないのを見て、ほっとした。

けれども、ここまで一本道なのに、どこに行ってしまったのだろう…。

見渡していると、レウリオは一人で海辺まで行っていた。

「も……戻りましょうよ」

サナの呼びかけはレウリオには聞こえていないようだ。


いやだ…ここにいたくない…。

サナは、そう思って、大きな声でレウリオを呼んだ。

「お願い!! 戻りましょう!!」


あまりに必死なサナの声に、レウリオは何事かと振り返えると、サナは顔色を失くして細かく震えている。

そんなサナに驚くというよりは呆れが勝った。

「そんなに怖いですか、ここが」

そう言われサナはうつむいた。


どう言えば良いのだろうか…

妙な声が聞こえ、血が逆流するような感覚がある事を…

サナは、上手く伝えることができず、ただ、うつむいたまま首を振った。

そんな、ただ首を振るばかりのサナを見てレウリオは息をついた。

「わかった、戻ろう」

あまりにもあきれ過ぎたためなのか、口調がぞんざいになっている。

しかし、レウリオのその言葉に、サナは安堵したように息を吐き頷いた。


歩きながら、顔色が戻ってきたサナを見て、レウリオは聞いた。

「そんなにあの場所がイヤか?」

口調は砕けたままになっている。

サナは、それに気が付きうつむいたままわずかに笑った。

「ごめんなさい…やっぱり、あの場所は…島の人にとっては忌む場所ですから」

そして、立ち止まり

「図書館はあそこです」

と、一つの建物を示した。

「ああ、そうか…ありがとう」

レウリオの言葉に、いいえ、と首を振ったサナは、空が既に色を変えている事に気がついた。

一面のピンクがかった黄金色…

夕暮れ時だ!

街の人も帰路を急いでいる。


しまった!!!  戻らなくては!!!!


サナは、再び顔色を変えた。

「あ…あの、もうすぐ日没なので私、帰ります。図書館ももう閉まってしまう時間です。明日、来ることをお勧めします!」

と少々早口でレウリオへ告げる。

「あ…! 見張り役のことは」

とレウリオが言いかけるが、サナは既に足早に戻り始めていた。

「また、明日にでも」

という一言だけが返ってくるだっけだった。


サナは走り出していた。

…日没まで、戻らなくては…!

眼鏡の奥の黒い瞳がキラっと光る。

日が沈んでも、しばらくの間であれば、なんとかなるが、できれば外にはいたくなかった。

ドアをくぐり、しっかりと閉じる。

…間に合った…。

必死で走った所為で息が上がっている。

しかし、それだけではない鼓動の早さがあった。


一度目を閉じ、息を吸い込んでゆっくりと開ける。


眼鏡を外し傍らの鏡を見た。

そこにいるのは、金色の目と金色の髪の少女。

これはカイ…

夜の島の見張り役、財宝の守り人…



変わったのは目と髪の色だけ。

そして、眼鏡が無くても見えるようになるので外しただけ。化粧をしたわけでも何でない。

しかし、それだけで、まるで違う少女に見える。

サナの時は、常に猫背でうつむきがちなのに対し、カイの時では背すじを正し、相手の目を真っ直ぐに見ることができる。背も5センチほど高くなったように…自分では思える。

見た目が変わると、性格も変わるものなのだろうか?

いや、本当は中身もまるで変わっていない。

ただ…


見張り役、守り人になっただけ。


そうして、自身ありげな微笑みをしてみる。

サナの時ではできない微笑み。

だが、その目はどこか悲しげで物憂げだった……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ