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1-1

その島はほぼ一年中初夏のカラリとした暑さが続く島である。

昼は確かに暑いのだが、夜になると寂しさを含んだような涼しい風が吹いた。

過ごしやすさがあるはずなのだが、何故か夜になった途端に、ぱったりと人影がなくなっていた。

この島は、普段であれば本土とは一日4本、船が行き来している。だが、今の年はその行き来する船が止まっていた。

利用したいものは、役所に申し出て交通手形を発行してもらわねばならぬという。


レウリオは面倒なことだ、と思いつつも手形を発行してもらい、この島へやってきていた。

目的は、父の跡継ぎが長兄に決まったという祖母の縁者への連絡だ。

父は聖職者であり、大きな礼拝堂を有している。長兄も敬虔なる信者であり成績も優秀であったので、次兄もレウリオも長兄が継ぐことに対し、何ら思う事もなく、もめることもなく、すんなりと決まった。

次兄は教師が天職というように、教育関係に従事する方向にしたようだ。


レウリオは三男である。

レウリオ自身も聖職者ではあるが、どちらかと言うと剣を握り体を動かす方が性に合っていた。

父は、好きなように進めばよいと言ってくれているので、修道会の騎士にでもなろうか、と精進している最中である。

さて、そのような家系であるからか、縁者への連絡は欠かさずにいるのだが、この島に住んでいるはずの祖母の縁者への連絡がつかない。手紙を送っても宛先不明で送り返されてくるので、面倒ではあるが兄弟の中で時間に余裕が持てるレウリオがこうして赴いたのだった。


到着して調べてみると、その縁者は40年程前に亡くなっていた。その頃、島民が多く亡くなる事故があり、役場の職員の手も足りず仕事も滞るほどであったため、どの家の誰が無くなったのかという把握も難しくなっていたという。それで本土の方に連絡漏れが起こっていたようだ。

この島にいた血筋も20年近く前に全て絶えたらしい。

今いる職員が申し訳なさそうに説明してくれた。

ならば仕方がない。

「そうですか、調べていただきありがとうございます」

レウリオの用事は早々に終わってしまった。

が、今は船が止まっている時期であり、帰る船の手形はまだ取っていなかった。

島に泊まっていくしかあるまい。


そのような状況であるのだが、夜になった途端に人がいなくなる。

開いていてもおかしくないはずの酒場ですら、早々に閉められていた。

島中が早寝早起きの習慣でもあるのか、というと、夜には明かりの灯っている家がほとんどで、そうとも言い切れぬものがあるようだ。

何だというのだろう…。

レウリオはすることもないので、散歩のつもりで歩いていた。

夜の海は、すべてを飲み込みそうなほど真っ暗だった。

人がいない分、余計に寂しさが増す。


その時であった。


「あれは…」


夜目にもくっきりと鮮やかな金色の髪の少女。

浜辺に立ち、沖を見つめている少女が目に入ったのだ。

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