プロローグ
「こんばんは。旅人さん、かしら?
夜には出歩かない方が良い、って島の人に注意をされなかった?」
綺麗な細い声でそう言うと、にっこりと笑った。
微笑みすら、どこか現実的ではない。
とっさに声が出てこなかった。
確かに、この島に上陸した時に言われていた。
『夜には、出歩かない方がいいよ。…夜になっても何もないから』と。
そして、その言葉どおりものの見事に何もなく、それでも探索がてら歩き回っていたのだ。
「悪いことは言わないわ。もう、夜には……特にこの付近は歩かない方が良いわ。
ロクなことが起きないわよ」
金色の瞳をきらめかせながら、少女はそう言った。
「この島には、とてつもない財宝が眠っていてね」
くすくすと笑いながら少女は言う。
「その入り口は夜にだけ現れるの。
けれども財宝に近づく者には、たとえ島の人だろうと、容赦なく呪われるようになっているのよ」
そう言いながら、いたずらっぽく光る金の瞳。
どこまでが本当なのか…?
「それで、夜はその入り口の近くはおろか、街の中でさえ、めったなことでは島の人は出歩かないのよ」
「本当の話ですか?」
疑わしそうな彼の声に少女は肩をすくめた。
「さぁ? けれども昔からこの島では信じられてきていることよ」
少女は彼の目を真っ直ぐに見つめて答えた。
始まり始まり